企業の基礎体力としてのリスクマネジメント 第1回

第1回 危機管理ではない。だからこそ平時に効く
現場での話を聞いたり、報道に接したりしていると、
「もっと早く気づけたのではないか」という言葉に触れることがあります。
大きな問題が起きた後、振り返ると、その前には小さな兆しや違和感があった、というケースは少なくありません。
ただ、その時点では、それを「リスク」として扱うほどの明確さはなく、日常の中に埋もれてしまいます。
そして問題は、それらが見過ごされたまま積み重なり、あるタイミングで、はじめて「事象」として表に現れることです。
私たちはその時点で、初めてそれを「リスク」として認識し、対応を始めます。
しかし見方を変えると、リスクはその瞬間に突然生まれたのではなく、もっと前の段階から、すでに存在していたとも言えます。
違和感、兆し、小さなズレ。
それらはまだ“問題”ではないかもしれませんが、確かに何かが変わり始めているサインです。
では、リスクマネジメントとは、何を扱うものなのでしょうか。
一般的には、何かが起きたときに、いかに適切に対応するか、という文脈で語られることが少なくありません。
しかし、ここまで見てきたように、多くのリスクは、事象として表に現れる前の段階から、すでに兆しとして存在しています。
そうであるならば、リスクマネジメントは、「起きた後にどう対応するか」だけではなく、
その前段階で、
いかに小さな変化に気づき、
いかにそれを大きくする前に扱えるか、
という視点から捉え直す必要があります。
さらに言えば、それは特別な場面だけで発揮される能力ではなく、日常の中でどのような判断や対話が行われているか、どのような空気が組織の中にあるかといった、平時の状態に大きく依存します。
このように考えると、リスクマネジメントは、単なる対応技術ではなく、企業が日常的に備えている「状態」そのものとも言えます。
それを、ここでは「企業の基礎体力」と呼びたいと思います。
RMCAではこれまでも、リスクマネジメントを危機管理とは区別し、組織の持続的な運営に関わるものとして捉えてきました。
今回の連載では、その考え方を土台にしながら、中小・中堅企業の現場で、どのように実装していくかという視点から、あらためて整理していきます。
基礎体力と呼んだとき、そこにはいくつかの側面があります。
一度の出来事に耐える力。
長い時間を通じてぶれない力。
変化に適応するしなやかさ。
判断の軸を保つ安定性。
そして、小さな兆しに素早く反応する感度。
これらはそれぞれ独立しているようでいて、実際には日常の中で重なり合いながら、企業全体のリスク耐性を形づくっています。
本記事は、RMCAジャーナルの一環として掲載しています。
RMCAジャーナルでは、リスクマネジメントに関する連載、対談、実務知を継続的に発信していきます。
