【ポッドキャスト #93】会議室を頼まれて、なぜキッチンをつくったのか


株式会社枠の白井康太さんをゲストに迎えます。
会議室づくりの依頼から生まれたのは、本棚とキッチンでした。
社員全員の話を聞き、趣味や関心を起点に設計した場は、地域との交流にも広がります。
「つくる」より「使う」を重視する、対話の場づくりを伺います。

音声(番組)は以下より聴取できます。
・ポッドキャスト:#93
・Spotify:#93

以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。

荒木
まず、枠がどんな仕事をしている会社なのか、簡単に教えてください。

白井
人間関係にまつわる課題を扱う、コンサルティングとデザインの会社です。

僕自身はPRプランナーとして仕事をしてきました。現在は、組織の関係にまつわる課題を解決するコンサルティングと、対話の起点になるものをつくるクリエイティブの、二つのチームで運営しています。

◆会議室が欲しい理由を、社員の声から確かめる

荒木
ウェブサイトで紹介されていた、会議室づくりの事例が気になりました。

どんな相談から始まったのですか。

白井
小田原鉱石という、アスベストの分析をしている会社からの依頼でした。

社員の皆さんは研究者で、会社に来て顕微鏡をのぞき、昼食を取ったら、また分析をして帰る。仕事の性質上、休憩時間以外はあまり会話をする必要がなかったんです。

事業は続いているけれど、隣の席にいる人のこともよく分からない。

社長からは、もっと対話が生まれ、新しいことをみんなでやろうという空気のある会社にしたいと相談されました。

オフィスを広げて空いた一室があるので、そこに対話が生まれる会議室をつくってほしい、という依頼です。

ただ、いきなり会議室をつくるのも違う気がして、まず全社員と話す時間をいただきました。

当時の社員は14人ほど。一人一人と話したり、ワークショップで「この場所に何があったら楽しいか」「話したくなるか」を考えてもらったりしました。

すると、皆さんがとてもマニアックな趣味を持っていたんです。

サボテンを育てている人、手塚治虫を研究するほど好きな人、麻雀に詳しい人、元芸人の人。話を聞くと、一人一人に面白いプロフィールがありました。

そこで、本当に会議室をつくることが、会話のきっかけになるのだろうかと考えたんです。

◆本棚とキッチンが、会話のきっかけになる

白井
まず、部屋に本棚をつくりました。

本棚にそれぞれの社員の名前を書いて、自分の好きな趣味の本を置けるようにしたんです。その前には、昼食を取れるカフェテーブルを置きました。

本棚を見ながら、「サボテンが趣味だったんですね」と話せる。相手のことを知る手掛かりを、そこにつくったわけです。

さらに、社員の皆さんには料理が好きという共通点もありました。

そこで、会議テーブルを置くはずだった場所に、大きなキッチンと料理の作業台を設けました。

立ちながらパンでもこねて話した方が、雑談が生まれるのではないかと。

実際につくると、「明日、みんなにカレーを食べさせたい」といった話が出てきて、料理や趣味の会話が増えていきました。

荒木
濱口さん、この話を聞いてどうですか。

濱口
面白いですね。全員が料理を趣味にしていることにも驚きました。

白井
料理そのものだったり、食べることだったり、皆さん好きだったんですよね。

こうした対話が生まれる場を、僕らは「コミュニケーションプラットフォーム」、略して「コミプラ」と呼んでいます。枠の仕事を象徴する事例の一つになりました。

◆社内の「やりたい」が、地域との交流へ広がる

白井
さらに、そのキッチンやカフェスペースに地域の人を招いて、イベントを開くようになりました。

社内の会話をつくるところから始まったものが、地域の会社や住民との交流にもつながり始めています。

濱口
もともとは、社内で会話が生まれないという悩みでしたよね。何がきっかけで、外まで広がったのでしょうか。

白井
本棚の前で会話が生まれると、社員の皆さんから「この場所でヨガをやりたい」「料理を振る舞うイベントを開きたい」という声が出てきたんです。

そうすると、「地域の人を呼ぼうか」「取引先も呼ぼうか」となる。

広報やPRをしようと考えていたわけではなく、自分たちのやりたいことを進める中で、外との関係が生まれていった感じです。

濱口
皆さんマニアックな趣味を持っているなら、料理の話も相当面白そうですね。

白井
そうなんです。普通の料理イベントではなく、例えばメキシコ料理のイベントを開いたりするんですよ。

濱口
その土地の文化や風土も、きっと詳しく調べていそうですよね。

食べておいしいだけでなく、大人にも子どもにも面白そうです。そういうことを、素直に広げられる会社なのもすごいと思いました。

白井
話してみると、皆さんからいろいろな知識が出てきます。

その中で、自分たちの「やりたい」が、どんどん広がっているんです。

◆「つくる」より「使う」に、焦点を当てる

荒木
最初に全社員の話を聞いたのは、枠がもともと持っている進め方ですか。それとも、この会社には必要だと考えたのでしょうか。

一人一人とじっくり話すのは、時間もかかりますよね。

白井
僕らは、「つくる」より「使う」に焦点を当てているんです。

よいロゴや会議室をつくることと、それを社員が使ってくれることは、別の話です。

以前、経営層とだけ話してウェブサイトやパンフレットをつくったものの、使ってもらえないことがありました。

今回も、会議をする場所をつくるだけでは、「対話が生まれない」という課題は解決しません。

どうすれば対話が生まれるのかは、その当事者に話を聞かなければ分からない。だから、全員の話を聞くところから始めることが多いです。

もちろん、経営判断なら経営チームで話せばよいこともあります。ただ、社員が使ったり活動したりするものは、社員と一緒に土台をつくった方が、その後が早いと思っています。

荒木
最初から本棚やキッチンの構想があったわけではなく、話を聞いたからこそ出てきたんですね。

広報も、見る、聞くが先にあって、そこから考えます。

今回は、社員の交流が生まれ、その中から外の人を呼ぶアイデアも出てきた。会社を知ってもらう場が、ウェブサイトではなく、実際の空間としてできているところが面白いです。

白井
僕らは、完成させることだけでなく、長く使ってもらうことをコンサルティングしたいんです。

そのためには、使う人の納得感をつくる必要があります。

そして今回は、提案を受け入れてくださった会社もすごかったと思います。

最終的な予算は、当初の約4倍になりました。キッチンをつくるなら業務用にしたいと、会社側も乗ってくださったんです。

荒木
そこを受け止めて、予算を出した経営者もすごいですね。

白井
増えたのは内装にかかる費用で、僕らの報酬は変わっていません。

でも、本当にやってよかったと思っています。今も、その場所を使って、いろいろな話し合いをしています。

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