セミナーレポート 2月22日開催、創新基本セミナー「ウィズコロナ時代! 中小企業こそ、ニュースルームで広報PRを最適化せよ!」

 

2021年2月22日(月)17時。経営者異業種交流会「創新ネットシティ」(以下、同会)主催の創新基本セミナーがzoomで開催された。既報のとおり、当社代表・荒木洋二が講師として登壇、「ウィズコロナ時代! 中小企業こそ、ニュースルームで広報PRを最適化せよ!」をテーマに講演した。

同会員でもある中小企業の経営者を中心に約30人が参加した。司会は同会幹事の上村欣浩氏(そらまめ総合特許事務所・弁理士)。上村氏からコロナ禍で始めた、これまでの創新基本セミナーの振り返りと講師プロフィール紹介後、講演は始まった。

◆ニュースルーム、舞台裏、見える化

本セミナーのキーワードは三つだ。まずは「ニュースルーム」とは何か。次にニュースルームで伝える「舞台裏」の情報とは何か。最後に広報PRに関わることとして「見える化」。

ニュースルームとは広報PR専用ウェブサイトのことであり、公式情報を集約する場でもある。情報の受発信や共有の形態がインターネットの登場と普及により変化する過程で生まれた。

実際のニュースルームの実例として、トヨタ自動車AppleFacebookTwitterを画面共有機能を使い、参加者にも閲覧してもらった。トヨタ自動車は誰でもメールアドレスだけ登録すれば、報道関係者と同時にトヨタの最新記事(ニュース)が直接トヨタからメールで送られてくる。

次にニュースルームと類似した発想で取り組んでいる企業のウェブサイトを共有した。顧客事例(顧客インタビュー記事、顧客の声)を積極的に発信している企業として、営業支援システムのSalesforce、リスクマネジメントのコンサルティング会社ニュートン・コンサルティングを紹介した。いずれも実際の顧客担当者などへ直接インタビューし、写真付きで丁寧に記事として発信している。業種別などで検索できるほど、多数の事例が掲載されており、圧巻というしかない。

◆企業経営の魅力、醍醐味、こだわり、とんがりは舞台裏に現れる

次に社員インタビューや社内外の出来事などをウェブサイトで発信している企業の実例を3社挙げ、共有した。

任天堂は採用サイト「仕事を読み解くキーワード」で50数種の職種で働く社員の働きぶりをインタビューした記事を発信している。採用対象の学生ばかりでなく、顧客であるゲームファンの間でも支持されたという。

転職支援のエンジャパンはウェブ社内報「en soku!」を広く一般に公開している。総勢200人のレポーター(広報部以外の社員が担当)が社内外の出来事を日々取材し、発信している。内定者が企業文化の一旦に触れ動機を高めたり、先輩社員の取り組みを後輩社員がロールモデルとしたり、退職した元社員が戻ってきたり、記事をきっかけに新聞報道につながったりするなど、多様な利害関係者に好影響をもたらした。

マンション管理代行のコミュニティセンターでは、管理員代行業務を担うシニアの登録スタッフを毎月丹念に取材し、「働く人の声」として紙媒体とウェブサイトの両方で発信した。5年以上続けるなかでさまざまな利害関係者に意識の変化や行動をもたらした。当時の社長がまず一番の愛読者となり自社のスタッフの働く姿勢に感銘を受け、スタッフを誇らしく思い感謝した。採用面では新聞広告では採用できなかった元官僚の人が、(当時の)全ての「働く人の声」を読み、同社一本に絞り応募してきた。直行直帰で孤独な立場での仕事が多い登録スタッフが同じスタッフたちの姿に励まされ、共感し、後輩スタッフがノウハウ集やバイブルのように大切にしたり、取材を受けることが一種のステータスになったりするなど、全体のモチベーション向上に寄与した。管理会社に渡せば、取材を受けている自社の制服を着たスタッフの真摯な姿勢に触れ、信頼が高まった。極めつけともいえるのは、東京都が主体となった事業承継ファンドが全株取得を決めた背景に、登録スタッフの働く姿に触れて、決算書に表れない価値を感じとったことも大きく影響した。

これら事例から分かることがある。事例に挙げた会社は何を伝えたのか。それを誰に伝えたのか。

伝えたのはそれぞれの企業の「舞台裏」の情報だ。ふだんはその場にいない限り、詳しく聞かない限り知る由もなかった、社員や顧客などの関係者たちの声や姿、振る舞いなどの情報だ。これら「舞台裏」の情報こそ、その会社独自の魅力であり、醍醐味である。わが社のこだわりも「とんがり」もそこに現れる。この「舞台裏」を全ての利害関係者に伝えた。経営者や社員、顧客、取引先、株主、報道機関など、くまなく伝えたし伝わった。

生活者が魅力を感じる、企業活動のファクト(事実)とは何か。広報戦略研究所(電通PR)が提唱する「魅力度ブランディングモデル」によると、人的魅力、財務的魅力、商品的魅力のうち、トップ5のほぼ全てを人的魅力が占める。要素を細かく見ると「舞台裏」の情報だ。商品的魅力の要素にも「舞台裏」の情報がいくつかあるのが分かる。

◆広報PRで「見える化」

舞台裏の数々の情報は、わが社の魅力や醍醐味は、目に見えない無形資本そのものだ。見えないままでは伝わらない。どうすればいいのか。ここで広報PRの出番だ。広報PRで「見える化」できる。無形資本を広報媒体にして、「見える化」することで、利害関係者たちに価値や魅力が伝わる。その結果、利害関係者と信頼と共感で結ばれた関係を築ける。この関係、絆が経営の基礎体力となる。基礎体力があるから、そのほかの施策の効果を最大化できる。

今まで大企業が紙媒体で伝えてきた広報媒体を、ウェブサイトに集約したのがニュースルームだ。広報媒体とはプレスリリース、ファクトブック、ニュースレター、アニュアルレポートのことだ。無形資本を広報媒体で、ニュースルームで見える化することこそ、広報PRの本丸だ。

わが社の魅力や醍醐味が盛り込まれた舞台裏のコンテンツをニュースルームのメールアラート機能で、全ての利害関係者に伝える。トヨタ自動車のように。一つ一つの熱量を帯びた、他社にはない自社独自の記事をコンテンツマーケティングでのオウンドメディア、採用ランディングページ、SNS(インターネット上の交流サイト)でそのまま掲載できる。

◆わが社の物語の大切な登場人物

新たな挑戦を始めるには社長一人の力ではどうにもならない。魅力を、醍醐味をもっと周りの人たちに知ってもらい、感じてもらうためにはどうすべきか。

わが社の物語(ストーリー)の大切な登場人物たちに光を当てることだ。

わが社を取り巻く関係者たちは、共に価値をつくる仲間といえる。彼らにニュースルームに登場してもらおう。彼らと深めてきた絆、関係性をニュースルームでずっと表し続け、紡ぎ続けることだ。熱量を帯びた舞台裏の情報をニュースルームで共有し、蓄積していくことで企業の人格はつくられ、そこに表れる。



ニュースルームで表舞台と舞台裏の情報を、自ら直接伝える。そのためには三つの取り組み(下図)が必要だ。現在、当社はいずれも無償(一定期間)で提供している。

当社のニュースルームシステムを使った事例を紹介する。

KOHOgene(当社サービス)
アステックス(非常用電源の負荷試験装置)
伸こう福祉会(介護福祉事業者)

今こそ、中小企業はニュースルームに取り組もう。

◆質疑応答

約70分の講演後、質疑応答の時間を設けた。主な質疑は次のとおり。

Q:ニュースルームは非常に興味深い。どんなコンテンツをどのくらい発信していくと効果が現れるのか。いつ始めればいいのか。どの程度の期間で目に見えて成果が上がるのか。

A:(質問者が所属する組織の場合、どんなコンテンツがいいのか、具体例を挙げながら)このような舞台裏の情報を丁寧に取材し、記事として上げていく。いつかと言われれば、「今」から始めた方がいい。効果や成果はどんなコンテンツを作り、コンテンツの一つ一つを広めるために組織内でどんな取り組みを行ったのかに左右される。社員全員で丁寧に伝える取り組みができたのかが問われる。

Q:英語や中国語で発信する場合も同様の成果が期待できるのか。

A:もともとニュースルームは米国から日本へと伝わってきたものだ。米国でスタンダードになりつつあるのだから、英語でも同様の成果が期待できるだろう。社会心理学の観点でいえば、国籍などで大きな差異は見られない。人が何かを信頼したり共感したりするのに差異はないということだろう。つまりそのほかの言語でも同様だろう。

Q:表舞台と舞台裏でいうと、まず表舞台がしっかり確立していることが先決だと思う。順番としては表舞台が確立できた後に、舞台裏の情報を発信すればいいということか。

A:確かに表舞台(能力・機能・実績)があってこその、その舞台裏だ。ただし、現在製品・サービスの均質化・同一化が進むなかで何を持って差別化するのか。十分な表舞台が出来上がるまで待つ必要はないと考える。しっかりとした表舞台を築き上げていく過程での、舞台裏の情報が魅力的だ。失敗や苦労しながら、こだわり取り組んできたことを表す、舞台裏の情報に魅力がある。

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