セミナーレポート 5月28日開催、現役大学生を対象とした職能セミナー「広報とPR。ホントの、現場の話。」(CheerCareer主催)
2021年5月28日(金)17時〜19時、「【職能セミナー】広報とPR。ホントの、現場の話。/広報PR歴24年≪広報・PR職≫分析セミナー」(主催:CheerCareer)が開催された。「CheerCareer」とは、ベンチャー ・成長企業からスカウトがもらえる就活サイト。「CheerCareer」を運営するのは、株式会社Cheer(本社:東京都新宿区、代表取締役:平塚ひかる)。当社代表・荒木洋二が講師として登壇した。今回は3回シリーズの第1回、「広報とPRって、何するの?」がテーマだった。
司会の鈴木瑞己さん(Cheer社スタッフ)が当セミナーの主旨や留意事項を丁寧に学生に説明した。講師プロフィール紹介後、荒木の講座が始まった。
◆「そもそも」を問う10の問い掛け
学生たちが社会に出て、どんな企業や組織で働くにせよ、「そもそも会社とはどんな存在なのか」を理解することは重要だ。日頃、企業社会ではビジネス用語や外来語を余り深く考えず、何となく使っていることが多い。そういう姿勢で果たして仕事ができるのか。一つ一つの言葉がそもそもどういう意味なのか。短時間だが学生たちに考えてもらいたいという趣旨で、セミナー全体を通して、10個の問い掛けをした。次のとおりだ。
・問い1 :会社 = 経営者?
・問い2 :会社は誰のものか?
・問い3 :企業と社会の関わりは?
・問い4 :PRは何の略? どんな意味?
・問い5 :広報とは?
・問い6 :企業広報の始まりは?
・問い7 :マーケティングとは?
・問い8 :ブランディングとは?
・問い9 :なぜ情報を発信するのか?
・問い10:どう見える化するのか?
◆広報とPRは同意語
会社とは代表者とは別の人格であり、法のもとに人格を認められた存在だ。会社は社会の役に立つことで、つまり価値を提供することで初めて存続できる。存在することを社会から許容される。リーマンショックやコロナ禍を経て、会社は株主だけのものでなく、全ての利害関係者のものであるという、「マルチステークホルダー主義」が世界で浸透し始めている。
広報とPRは同意語であり、PRとはパブリック・リレーションズの略だ。利害関係者との良好な関係構築という概念だ。利害関係者とは、具体的にいえば、経営者・社員に始まり、顧客、取引先(業界)、株主・金融機関、さらには地域社会、報道機関などがある。日本では19世紀後半には顧客向け情報紙が誕生し、20世紀初頭には社内報が生まれている。現在の企業社会の現場では「広報=パブリシティ」あるいは「広報=メディア・リレーションズ」との認識が定着している。しかし、パブリシティが広く現場で活用されるようになったのは高度経済成長期以降、しばらく経ってからのことだ。株主向け広報(IR)に至っては、バブル崩壊と冷戦終結後に訪れたグローバル時代になってから、本格的に普及した。
◆表舞台と舞台裏を見える化し、内外に自ら伝える
「広報=PR」の目的と守備範囲を知るためには、マーケティングに対する理解が不可欠だ。当社の見解を述べれば、マーケティングとは「市場と関わるあらゆる行為(行動)」を指す。市場は商品市場だけでなく、採用(労働)市場、金融(株式)市場もある。商品市場も医薬品・食品など、上流から下流まで業界ごとに多岐にわたる。各市場にいるのは、まさしく「未来」の利害関係者だ。未来の利害関係者との関係構築こそがマーケティングの守備範囲である。
広報の目的を理解するためには、ブランドに対する深い理解が必要だ。ブランドの語源は家畜の焼き印であり、他の家畜と識別するために行った。ブランディングを企業に置き換えると、企業自身の機能面と情緒面をどう相手に伝えるのか、すなわち、全ての利害関係者から価値を認めてもらう、選ばれ続けるための活動といえる。選ばれ続けることによって、企業の経営における基礎体力は強化される。この基礎体力強化こそ、広報PRの目的である。その守備範囲は、現在の利害関係者との信頼関係構築であり、マーケティングとは関係構築の前後で分けられる。
「知らない = 存在していない」に等しい。つまり、企業・組織にとって、情報発信(=知らせる、伝える)は宿命だ。企業の「機能面=表舞台」と「情緒面=舞台裏」の情報を見える化しなければならない。見える化しなければ、伝わらない。「表舞台」の情報は知るきっかけであり、理解する過程では間違いなく欠かせない。だが、それだけでは選ばれない。共感もされない。信頼にも結び付かない。「舞台裏」の情報を伝えることで、初めて「選ぶ理由」が生まれ、共感も生まれる。
広報PRの本質は、「表・裏を見える化」して、「内外に自ら伝える」ことだ。内外とは「内部=利害関係者」、「外部=未来の利害関係者」を指す。インターネット全盛時代、これからは広報PRの専用ウェブサイトである「ニュースルーム」がその中心となるだろう。
最後に、大企業と中小企業・スタートアップ、それぞれの広報の現状を確認した。現在の主流をなす企業社会における、広告代理店とPR会社の役割を整理した。大多数のPR会社の業務内容である、メディア・リレーションズについては、次回の「第2回 メディア・リレーションズを知る」で解説する。
◆参加した学生の感想
「自分が曖昧に思っていた部分を、最前線で働いている方の目線や具体例をお示し頂いたおかげで理解が深まりました。」
「広報、PRの根本的なことから理解できてよかった。利害関係者との良好なコミュニケーションが必要だということ(が分かった)。」
「会社や広報・PRについて、普段はあまり意識して考えない本質の部分を学べたことがとても良い経験になったと思います。一つ一つを事例などを挙げながら熱意を込めて話して下さったため、とても楽しかったです。」
「全体的に私が持つ広報のイメージがいい意味で壊されたかなと思いました。今まで持っていた広報のイメージだったり専門的な言葉の意味について、今日のセミナーで本当に認識できたような気がします。」
「特に私は表と裏の見える化についての部分が興味深くて、表だけだと知るきっかけにはなるが認識で止まってしまうこと、裏まで見せることによって選ぶ理由や共感を持たせる基になると学ぶことが出来ました。」
「そもそもPRとは何か。ブランドとは何か?から始まった本講座の内容はとても深いものでした。」
「ブランドの語源が家畜の識別に使われた焼き印由来であることや企業広報(愛善堂や鐘紡)の始まりの歴史の話は興味深かったです。」
「表舞台と舞台裏の話は面白かったです。現在、選考を受けている中で、表舞台(就活サイト・新聞・CM)で企業の存在を知り、舞台裏(座談会・工場見学・ニュースルーム・交流会)で共感していく流れは実体験として経験しています。事実、オンライン選考の中では特に、舞台裏を多く提供している会社に惹かれていきました。」
「想像以上に深いお話をお聞きすることができて、頭がいっぱいいっぱいになりつつも、非常に興味深かったです。今回お伺いできたお話を復習して、次回のセミナーも予約させていただけたらと思います。」
「広報やPRの本質を自分自身が思っていた以上に理解できていなかったことに衝撃を受けました。」
「広報・PRの根幹の考え方が参考になったというよりかは大変勉強になりました。」