セミナーレポート 7月16日開催、現役大学生を対象とした職能セミナー「広報とPR。ホントの、現場の話。」(CheerCareer主催)

2021年7月16日(金)17時〜19時、「【職能セミナー】広報とPR。ホントの、現場の話。/広報PR歴24年≪広報・PR職≫分析セミナー」(主催:CheerCareer)が開催された。「CheerCareer」とは、ベンチャー ・成長企業からスカウトがもらえる就活サイト。「CheerCareer」を運営するのは、株式会社Cheer(本社:東京都新宿区、代表取締役:平塚ひかる)。当社代表・荒木洋二が講師として登壇した。今回は3回シリーズの第3回、「プレスリリースを書こう!」がテーマだった。
司会の鈴木瑞己さん(Cheer社スタッフ)が当セミナーの主旨や留意事項を丁寧に学生に説明した。講師プロフィール紹介後、荒木の講座が始まった。

第3回のプログラム

◆そもそもプレスリリースとは?

参加した学生は事前に第1、2回の講座を動画で事前に視聴している。最初に次の3点を確認した。

・広報とPRは同義語、同意語である
・PRとはパブリック・リレーションズの略である
・PRとは利害関係者との良好な関係構築という概念である


その上で今回は、利害関係者の一つである報道関係者との良好な関係を築く(=メディア・リレーションズ)ための基本を学べると伝えた。

そもそもプレスリリースとは何か。日本語では何というのか。誰に向けて何を伝えるのか。基本から解説を始めた。プレスリリースとは報道関係者向け発表資料だ。手紙ではなく資料であることを理解すると、文章の表現方法も自ずと決まる。

では何を発表するのか。組織の新たな取り組み、つまり「ニュース(NEWS)」であれば、全て発表できる。プレスリリースの一斉配信事業者のウェブサイトを見ると、新商品の発売やイベント告知ばかりが目立つ。しかし、上場か非上場かに関係なく、新たな打ち手、戦略であれば、全て発表すべきである。プレスリリースは公式情報であり、戦略の記録でもある。報道関係者だけでなく、利害関係者がプレスリリースを見れば、その組織の戦略の履歴を確認できる。
プレスリリースは報道関係者とのファーストコンタクトに欠かせない資料であり、パブリシティの基礎資料である。プレスリリースを正しく書くことで、面識のない報道関係者とも対話できる。

◆基本構成を知る

プレスリリースの基本構成を知ることから全てが始まる。基本を知らず、作成しているプレスリリースがあまりにも多いことに驚きを禁じ得ない。基本を習得しないまま、便利なインターネットのツールを利用しても企業の成長につながる成果は期待できない。流行のSNSでもそうだが、単なるツール、手段にしか過ぎないことを理解すべきだ。

基本の形、基本要素、基本構造に分けて、一つ一つをひもときながら講座を進めた。基本の形として、下図の12項目で構成されている。「中見出し」を加えると、13項目となる。プレスリリースにおけるヘッダー部分(下図①〜⑥)とフッター部分(下図⑪⑫)は毎回掲載する共通情報だ。ヘッダーとフッターを記載したひな形を準備することで効率的に作成できる。

プレスリリース 基本の形

基本要素は「5W3HYTT」だ。詳しくは以下の3枚のスライドに記載したとおりだ。


プレスリリースを印刷媒体で作成する場合、2ページ以内に収めなければならない。多忙かつ膨大な情報を受け取る報道関係者の目に留まり、関心を持って目を通してもらうためには2ページに収まる情報量が適切だ。2ページ内に「5W3HYTT」の全ての要素を組み込む。これら要素が抜けていると、報道関係者は違和感を抱く。「何が伝えたいのか?」、「何だかよく分からない」と感じ、記事候補からすぐ脱落することになる。まず、全ての要素を集め、整理してから書き始めることが肝要だ。いきなり作成しようとすると、必ず3、4個の要素が欠けてしまう。

学校でも教わったとおり、文章は起承転結が重要だ。記事やプレスリリースは結論を先に書く。「結」起承転の流れだ。

基本構成をしっかり理解したうえで、プレスリリースを書こう。

◆タイトル、サブタイトル、リード文、本文の書き方

基本構成を理解できたら、いよいよ実際の作成へと進む。プレスリリースの肝は、タイトルとサブタイトルだ。記者たちの注意を引き、関心を喚起できるかどうかはタイトルで決まると言っても過言ではない。発表するテーマの最も際立つ点を短くまとめる。記事の見出しになることを想定して書く。短い言葉で注意を引けるタイトルを書くことは簡単ではない。どうすれば書けるようになるのか。日頃から産業・経済紙や業界紙の記事見出しを研究することだ。一企業の新たな取り組みを扱ったニュースの見出しだ。本文も読み、どうしてこの見出しを付けたのかを考察してみる。1日3本、自分が関心のある記事で始めてみることを推奨する。平日だけで1週間で15本の題材があるということだ。

次にリード文(前文)だ。最初の段落であり、ここで「結論」を簡潔に述べる。「WHY(なぜ)」以外の4Wは全て記載する。場合によっては、目標数字である「2H:How Many(数)とHow Much(量)」を記載してもいい。分かりやすい文章の基本は、短単文にすることだ。長文ではなく短文、複文ではなく単文とすることだ。そのことを踏まえた上で、三つの文章(200字前後)に収める。

最後に本文の書き方だ。プレスリリースでは事実のみを書く。事実以外を書いてはならない。分かりやすく事実のみを伝える。個人の感想は必要ない。情緒的表現も適切ではない。詩や小説ではないからだ。

大企業や有名企業でない場合、重要となるのは「WHY(なぜ)」の部分だ。政府が発表する統計情報、公共機関や民間調査会社などの調査結果を出所を明記しつつ、引用する。業界動向や社会情勢、生活者の意識変化など、発表するテーマに関連が深い情報を探し、活用する。事業計画やマーケティング戦略などを立案する際に調べているはずだ。多忙な記者に代わり、記者が望み、必要とする情報を先回りして、プレスリリースに組み込む。大事なのは事実、つまり数字だ。根拠を具体的な数字で示す。


視覚情報も欠かせない。写真、グラフ、図解、イラストなどの視覚表現は、理解を深めたり速めたりするのに非常に有用だ。情報量が多いからだ。2ページで収めるためには1ページ目に掲載することで、いわゆる「アイキャッチ」効果もある。
補足として中見出しの活用方法にも触れた。プレスリリースは「資料」だから、「背景」や「製品概要」という中見出し(章立て?)と書いても間違いではない。ただ、大企業・有名企業でないならば、この表現は適切ではない。報道関係者の注意を引き続けるためには、「中見出し」として本文を全て、一気に読んでもらうために工夫する。記者たち自身が、読者に記事の全てを読んでもらえるように中見出しも相当こだわり抜いて決めているように、だ。

作成後、すぐに公開したり投函・配信したりしない。最終チェックを忘れてはならない。特に誤字脱字や名称の誤り、商標権侵害には十分に留意すべきだ。もう一つ、文章表現だ。共同通信社の『記者ハンドブック』を紹介した。文章を書く専門家たちが、いかにやさしく分かりやすい文章を書くために腐心してきたのか。その英知の結集ともいえる同書に敬意を表し、まず同書を基準とすることを推奨した。

◆演習「タイトルとサブタイトルを書いてみよう」

講義の要点を解説した後、短時間だが演習を行った。実は事前に、実際の企業のある資料を参加者には送っていた。その資料をもとに、10分間与えてタイトルとサブタイトルを考え、書いてみる。10分終了後、参加者全員に自分で書いたタイトルとサブタイトルを発表してもらった。
最後は講師から社会人(PR会社の若手スタッフ)が作成したタイトルとサブタイトルをいくつか提示しながら、講評した。実際のプレスリリースも提示した。

90分程度の時間でかなり実践的な内容を伝え、わずかだが頭と手を動かし、実践する機会もつくることができた。3回にわたった今回のセミナーへの参加をきっかけに、少しでも多くの学生たちが広報PRに関心を持ってくれたとしたら、望外の幸運だ。同様の機会を継続して提供できないか、主催者と相談しながら、可能性を探りたい。

今回、このような貴重な場を設けていただいたCheerの平塚ひかる社長と、運営に携わっていただいた間嶋さんと鈴木さんにこの場を借りてお礼を申し上げたい。

誠にありがとうございました。

◆参加した学生の感想

「広報系の職種を希望しており、また、いくつかの企業で選考が進んでいたため、とても勉強になりました。」

「実際のプレスリリースの書き方が勉強になりました。」

「プレスリリースの構成や重点のおく書き方を理解することが出来たが、自分で実際に書いてみようとすると、要点をきちんと抑えたタイトルを書くことが出来なかったため、資料をもう一度見直して、また自分自身で考えてみたいと思う。」

「文字数や書き方のバランスなど、ただ長くすればよいというものではないとわかった。」

「『報道』についてぼんやりとしたイメージしかなかったのですが、特に企業に関わる分野ではっきりとした全体像を観ることができてとてもよかったです。」

「『誰かのニーズにフィットした文章を書く』ことは、PRの現場だけではなく社会人として常に求められるスキルだと感じました。特に『主観を交えないこと』や『わかりやすくすっきりした文章を書くこと』は今後も大切にしていきたいです。」

「実践も交えながら貴重なお話を聞けてとても有意義で勉強になりました。プレスリリースについての知識はなかったが、今回の講義だけで書き方など理解が深まりました。」

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