初級講座「Ⅲ.実務能力編」 プレスリリースの作り方 プレスリリースを構成する各項目の作り方③

こんにちは、荒木洋二です。

今回は「プレスリリースの作り方」第10回、「プレスリリースを構成する各項目の作り方」の3回です。

プレスリリースには基本の形があります。「プレスリリースの作り方」第3回(プレスリリースの基本構成)で説明したとおり、プレスリリースは12項目から構成されています(次のスライド参照)。

毎回繰り返し確認しておきましょう。プレスリリースに欠かせない基本要素は「5W3H・YTT」です。文章の基本構造は結論を先に述べる、「結起承転」の流れです。

本文を書くにあたって、常に留意しなければならないことがあります。それは事実(ファクト)のみを扱い、分かりやすく説明することです。事実以外のことを書いてはなりません。

■本文

本文は、次のスライドに記載されている四つの部分によって成り立っています。

前回は、「 Why(なぜ)」に当たる「背景・経緯・理由」について解説しました。
今回の講座では2番目の「テーマ解説」と、3番目の「写真・図表」について解説します。本文の「写真・図表」は、基本12項目の中で10番目の「関連画像」に当たります。

2.テーマ(承)

まず、テーマ解説について説明します。
ここでは5Wのうち、「Why」以外の4W、「 Who(誰に)」「What(何を)」「When(いつ)」「Where(どこで)」を記載します。加えて、「3H」の中の一つ「How(どのように)」、全部で五つの事実を記します。

四つのWは、次のスライドに記載の通りです。

4Wについてはリード文で簡潔に述べています。本文では深掘りが必要な項目を詳説します。特に「What(何を)」の項目は、発表テーマの主要部分を占める場合が多いので、より詳しい説明が欠かせません。

そこで、テーマを解説する際に、要点が三つあります。

■要点1

テーマの新しさ、際立つ点を明らかにすることです。

テーマが新製品発売の場合、どうすればいいのか。
何を基準として、どこが新しいのか、どんな新しさがあるのか。必要な部品や機能など、ほとんどが出そろっているといわれる時代です。製品のコモディティ化(均質化・同一化)があらゆる分野に広がっています。そんな時代における新しさとは、組み合わせの妙から生まれるといえます。

際立つ点でいえば、従来製品、競合品と比較して、何がどう違うのか。全てを数字で表現します。
例えば、業界平均の納期が1カ月なのに10日で可能にしたのであれば、納期を3分の1に短縮したということです。平均値を示さなければ、納期が早いかどうかの判断がつきません。何が際立っているのかが不明です。
同等程度のサービスの月額平均利用料が3万円なのに、1万円にしたのであれば、コストを3分の1にしたということです。平均値を示さなければ、高いのか安いのかが判別できません。

形容詞を使うと表現が抽象的なため、何も伝わりません。大小、長短、濃淡など、基準を数字で示すからこそ、読み手(報道関係者・ステークホルダー)に明確に伝わるのです。

■要点2

新しい取り組みが、事業であれば事業概要、製品であれば製品仕様を箇条書きでまとめます。文章として一つ一つ説明しますと、非常に分かりづらく、一覧性にも欠けます。
プレスリリースの基本は「分かりやすく」ですから、箇条書きや表にしてまとめます。
その際に、製品であれば価格、サービスであれば料金体系を忘れずに記すようにします。これらは3Hの中の「HOW MUCH(量)」に当たる部分でもあります。

■要点3

新たな取り組みや打ち手には、必ず目標があります。事業計画を立てた際に、目標を設定しています。その目標をどんな戦術・方法で達成するのかを具体的に示します。これは3Hの中の最初のHである「HOW」に当たります。
中小・中堅企業、スタートアップの場合、目標をどう達成するのかが具体的に記載されていないと、報道関係者たちに単なる机上の空論、絵空事のように捉えられてしまいます。そう思われたら、記事になる以前に、取材もされないし、関心さえも抱いてもらえないかもしれません。

綿密な計画や方法を具体的に、だが簡潔に記載しておくことが大切です。

3.写真・図表

基本12項目の10番目「画像」に当たる部分です。

言葉だけ、文章だけで理解させるのは簡単ではありません。
プレスリリースを報道関係者に届ける際、記者クラブを利用します。記者クラブの場合、ほとんどが印刷媒体として投函します。その場合、どんなに長くても2ページ以内に収めます。3ページになると、長すぎるという理由で敬遠されます。記者は読みません。目を通してくれません。

ですから、視覚に訴えることが大事です。
例えば、印刷媒体の1ページ目に、目立つように発表テーマに関連する写真、あるいはテーマに関わる図表・グラフなどを掲載します。図解やイラストを掲載することもあります。
これらを適度に配置することで、テーマ全体に対する理解を速めさせることも、深めさせることもできます。あまり多すぎると肝心の文章量が減り、テーマが伝わりません。これでは本末転倒です。適度に掲載することで理解を促進できます。

製品の場合、撮影角度の違う写真を2枚掲載します。施設であれば、外観と施設内で合計2枚です。IT(情報通信技術)関連のシステムの場合、全体構成や仕組みを言葉だけで説明するのは困難なので、イラスト・図解が有効です。

大企業が導入を進めている「ニュースルーム」の場合、プレスリリースにひも付けて、画像を2、3点ではなく相当数保存することができます。トヨタ自動車のニュースルームを閲覧すると、自動車の新商品のプレスリリースには何十枚という画像が掲載され、ダウンロードできるようになっています。どんな画像を掲載するのか、多数の選択肢の中から記者が自由に選べるのです。
印刷媒体では限度がありますが、ニュースルームには(サーバー容量に左右されますが)その制限はありません。

ニュースルームとは、広報専用ウェブサイトであり、プレスリリースに限らず、自社の社内外の出来事などを蓄積するウェブメディアです。SNS(会員制交流サイト)が相手の画面で流れていくフロー型メディアであるの対して、ニュースルームはストック型メディアであり、プレスリリースに加え、さまざまな「舞台裏」の情報を蓄積し、ステークホルダーと共有するための場所、(電脳)空間でもあります。

ニュースルームに関しては、中級講座の「Ⅱ.組織能力編」と「Ⅲ.実務能力編」で詳しく説明します。

次回は本文の書き方の最後「4.目標・将来」を解説します。

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