Weekly Essay 岡山・奈義町、21年の出生率2.68

先々週の当エッセイで、伊藤忠商事における2021年の出生率が全国平均の1.30を大幅に上回る1.97だったことを紹介しました。10年以上かけて、社内託児所の設置、朝型勤務の導入、在宅勤務の導入など、社員が働きやすい仕組み、制度、環境を整えた成果が現れたのです。

伊藤忠の取り組みにはかなり驚かされましたが、先週6日(木)、もっと驚嘆するニュースが私の目に飛び込んできました。ヤフーニュースに掲載された毎日新聞の同日6時30分配信のニュースです。どんなニュースなのか。それは、岡山県の北東部に位置する奈義町の合計特殊出生率が、なんと全国平均の2倍を上回る2.68だった、というものです。しかも奈義町の人口はわずか約5700人。2年前の19年には2.95を記録しています。

どうやって、伊藤忠をもはるかにしのぐ驚異的といえる出生率を達成できたのか。約20年かけて、少子化対策を段階的に進めてきた成果だといいます。記事によると、子育て支援策として「小中学校の教材費や高校生までの医療費の無償、高校生の就学支援金として1人当たり年24万円の支給」などを実現したそうです。これだけでも他の自治体と比較すると、十分過ぎる支援策だと思います。
しかし、奈義町はここに止まりませんでした。07年に子育て支援施設を開設、住民参加型の子ども一時預かりサービスも始めることで、親が子連れで交流できる場ができました。評判が広がり、若い世代の移住者が増えると、さらに子育てがしやすい住宅建設も進めました。

どうすれば、住みやすい、子育てがしやすい町になるのか。自治体が徹底して考え抜き、住民の声を傾聴した成果だったといいます。伊藤忠や奈義町の取り組みから、私たちは多くの気付きを得て、その気付きをもとに徹底して考え抜いて、自らの組織に適した形で展開する。そこから日本全体の少子化の解決につながる道が見えてくるかもしれません。


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