初級講座 Ⅰ.理論・「基礎知識経営の基礎体力づくり(2)」
こんにちは。荒木洋二です。
「そもそも広報PRとは」の講座は今回が最終回です。最後までしっかりと学んでいきましょう。前回に引き続き、結論である、経営における基礎体力づくりについて解説を進めます。もう一度確認しましょう。
利害関係者とは企業・組織にとっての経営資源です。そして、価値を共に生み出す仲間でもあります。その利害関係者と共感に基づく信頼関係を築くことが経営にとって非常に重要です。
スポーツにおいてはどんな競技であれ、基礎体力がなければ始まりません。基礎体力が重要です。全ての基本です。では、経営における基礎体力とは何でしょうか。
答えは利害関係者との良好な関係です。利害関係者との共感に基づく信頼関係こそ、経営における基礎体力なんです。共感に基づく信頼関係が築かれているからこそ、さまざまな施策が生きてきます。共感に基づく信頼関係をしっかりと利害関係者と築きあげた上でさまざまな施策を実施することが、実は非常に重要なんです。
利害関係者とのつながりが脆弱だったら、さまざまな流行の施策にいくら取り組んでみてもなかなか思うように進みません。社員教育やキャリア形成、あるいはマーケティング戦略も、そもそも利害関係者とのつながりが弱かったら、組織の成長や存続につながりません。つながりが弱く、もろいと不祥事が起きやすくなります。事件や事故などの危機にも十分に対応できません。当然、回復も遅いです。
利害関係者と共感に基づく信頼関係を築くとどうなるでしょうか。経営にとってどんな影響があるでしょうか。具体的に確認しましょう。
結論を述べます。経営における基礎体力を強化するとどうなるのか。共感に基づく信頼関係をしっかりと築きあげればどうなるのか。どういう影響があるか。
・生産性が向上します。
・取引費用も削減できます。
・投資利益率も向上します。
・リスク耐性が強化されます。
では、利害関係者ごとに、より具体的に詳しく確認していきましょう。
■社員
社員と共感に基づく信頼関係がしっかりと構築できればどうなるか。理念・価値観を軸に主体的に働くようになります。すると、働きがいを得ることができます。良好な組織文化も醸成されます。結果、離職率は間違いなく低下します。同時に採用コストも削減されます。
■顧客
では、顧客はどうか。顧客が共感して、ファンになってくれたらどうなるか。企業であれば、製品やサービスを長く購入し利用します。顧客生涯価値が上がります。大ファンですから、価値を自ら伝え広めます。他者へ推奨するということです。SNSにしろ口コミにしろ、「いいよ」と価値を自ら伝え、広めるようになります。それだけでなく、製品やサービスを愛するがゆえに、建設的な意見や新しいアイデアを提案するようにもなるでしょう。
■取引先・供給網
取引先・供給網、サプライチェーンはどうか。共感に基づく信頼関係が結ばれればどうなるか。理念、価値観、ビジョンに賛同して理解を示すようになります。すると、事業の仕組み、商品・製品に対する改善を、あるいは「一緒にこういうことやりませんか」という新規事業のアイデアを、積極的に提案するでしょう。その企業・組織が危機に陥った際も、主体的に動いて支援してくれます。
■株主・金融機関
株主・金融機関はどうでか。共感に基づいた固い信頼関係がありますから、安定株主として株を長期保有してくれます。投機的ではありません。製品やその会社のことを高く評価していますから、ことあるごとに価値を自ら伝えて、広めていきます。他者へ推奨します。経営危機に直面すれば、資本増加などにも迅速に対応してくれます。
■市場
市場はどうか。市場における評価や評判が上がります。そうなると、例えば新製品を展開すれば、市場への浸透速度は間違いなく上がります。企業なり製品の市場への影響力が増大します。
■業界
業界としっかりと信頼関係を築けたらどうなるか。優良な取引先の開拓が進みます。業界をけん引する立場にも立てるでしょう。さらに進めば、業界におけるオピニオンリーダーという立場を確保できる可能性もあります。
■地域社会
地域社会はどうか。理解し、信頼されるための地道な活動を続けることで事業や活動に対する理解は深まります。すると、組織に対して好意的な住民が増えます。その結果、地域社会における地位も向上するでしょう。
■報道機関
最後に、報道機関はどうか。良好な関係を築いてますから、プレスリリースに積極的に目を通すでしょう。すると、報道機会が増えるし、内容は好意的なものとなるでしょう。
このように、経営における基礎体力を強化することで、一つ一つの利害関係者との間にプラスの効果が現れてくるということです。全ての施策が実ってくるんです。しっかりとした土台の上に、一つ一つの施策が実を結ぶようになるということです。
■コーヒーブレイク
ここで番外編です。
当社が主催したマーケティング関連セミナーの中で、経営のインナーマッスルという話をしました。このインナーマッスルとは、深層筋のことです。われわれの目に見えている、触れられる表面の筋肉はアウターマッスル、表層筋です。深層のインナーマッスルとは体幹だけだと思っている人もいますが、いろいろ調べてみると、体幹だけじゃなく肩関節や股関節にもインナーマッスルがあるそうです。
公益財団法人長寿科学振興財団が運営している「健康長寿ネット」というウェブサイトがあります。同サイトでインナーマッスルについて解説しています。インナーマッスルとアウターマッスル(表層筋=通常われわれが筋肉と呼ぶ)のバランスがとれると、次のような効果があるとしています。
・長時間姿勢を保持し続ける。
・同様の少ない安定した動作ができる。
・方向や力の調節などの微細なコントロールができる。
・柔軟性に富んだしなやかな動きができる。
・上肢・下肢、体幹の協調した動きができ。
・バランスの保持や崩したときに立ち直る動作ができる。
これを企業・組織の経営に当てはめて考えてみるとどうなるでしょうか。基礎体力は共感に基づく信頼関係であると説明をしました。
ではインナーマッスルとは何でしょうか。
それは、企業・組織の理念、価値観、ビジョンがどれほど浸透し定着しているか、ということです。表舞台と舞台裏を伝えるなかで、理念・価値観・ビジョンが利害関係者にどれほど浸透するか、定着するかです。先ほどインナーマッスルとアウターマッスルのバランスの話をしました。一つ一つの言葉を経営ということに当てはめて考えてみると、納得いきますよね。
バランスの保持や、崩したときに立ち直る動作ということであれば、けがをしにくい、つまり危機に強いし、もし危機に直面しても回復が速い、ということです。つまり、経営の基礎体力、あるいは経営のインナーマッスルが重要です。その重要な部分を担っているのが実は広報PRだ、ということです。
「そもそも広報PRとは」の講座は今回は最後です。もう一度、今回の講座を振り返ってまとめます。
・経営における基礎体力は、「共感に基づく信頼関係」だ。
・「共感に基づく信頼関係」の上にさまざまな施策を実施する。
・利害関係者とのつながりが脆弱であれば、さまざまな施策は進まない。
・不祥事も起きやすく、危機にも弱く、回復も遅い。
・経営における基礎体力を強化することで、生産性・投資利益率の向上、取引費用削減、リスク耐性の強化が図れる。
以上