中級講座Ⅰ.理論・基礎知識編はじめに 米国歴史・近代的PR
こんにちは。荒木洋二です。
今回から広報PRの歴史について、確認していきましょう。
参考文献は、『デジタル時代の基礎知識PR思考』(伊達佑美・根本陽平著、翔泳社刊)です。著者の二人は電通PRに所属しています。非常に有益な内容が多く含まれていますので、関心があればぜひ購入して一読してください。
広報PRの歴史は、次の三つに分けて説明します。
1、米国における誕生と歴史
2、日本における誕生と歴史
3、日本の広報PR業界
1、米国における誕生と歴史
まず、米国の歴史から見ていきましょう。
ここでは、さらに次の三つに分け、確認していきます。
①鉄道会社による「近代的PR」の幕開け
②パブリシティの時代
③パブリック・リレーションズへ進化
①鉄道会社による「近代的PR」の幕開け
今回の講座では、「①鉄道会社による『近代的PR』の幕開け」について解説します。
鉄道会社よる近代的PRの幕開けは、19世紀末に起こりました。米国の鉄道会社は、企業として経営を成り立たせるために、「PR= パブリック・リレーションズ」 を活動の根幹に取り入れました。当時、鉄道会社は課題を抱えていました。鉄道会社は、都市と都市、あるいは都市と郊外をつなぐ、公的利益に貢献する事業を営んでいました。重要な社会インフラ、公共交通機関を担っていたのです。その中で、彼らを取り巻く重要な関係者が大別すると2種類、存在していました。
まずは、多様な人種の立場の労働者・従業員です。鉄道会社は、彼らと組織として調和を図りたい、という課題を抱えていました。もう一つの重要な関係者が、鉄道の沿線住民を中心とする人々、住民がいました。彼らに対しては鉄道事業への理解を得たい、という課題を抱えていました。当時、前述の二つの課題を抱えていました。鉄道会社は、多様な労働者・従業員、働く人々との一体感を醸成するために、PR雑誌を刊行しました。
次に沿線住民を中心とする人々に、鉄道事業への理解を得るためにどうしたらいいのか。そこで注目したのが、社会的影響力のある第三者です。つまり政治家、聖職者、大学関係者、そして報道機関の記者です。彼らのような社会的影響力のある第三者に注目しました。
具体的に何をしたかというと、彼らに寄付や支援を行いました。寄付や支援を継続することで、社会的影響力がある彼らが、沿線住民たちに対して鉄道事業の重要性を説きました。友人という立場で、ある時は演説で、ある時は新聞などの寄稿を通じて、さまざまな機会で重要性を伝えました。これらの積み重ねにより、沿線住民たちの鉄道事業への理解を深めていったのです。
以上が米国におけるPRの誕生であり、近代的PRの幕開けであったといわれています。
次回からは、
②パブリシティの時代
③パブリック・リレーションズへ進化
について解説を進めます。