MLB:第4回 感情資本はなぜ世代を超えるのか

こんにちは、荒木洋二です。
第1回では、MLBを「関係資本産業」として捉えました。
第2回では、その関係を壊さないための制度資本を読み解きました。
第3回では、ファンが生まれる瞬間、すなわち感情資本の生成点を見てきました。
では、その感情はなぜ消えずに残り、世代を超えて引き継がれるのでしょうか。
1、感情はなぜ消えるのか
通常、感情は持続しません。
・喜びは時間とともに薄れる
・怒りはやがて忘れられる
・熱狂は冷める
多くの企業においても、キャンペーンや話題で生まれた感情は長く続きません。
それは、感情が個人の内部で完結しているからです。
2、感情が残るときに起きていること
では、なぜMLBでは感情が残るのか。
それは感情が個人の内側に留まらず、外部に保存されるからです。
・記録として残る
・言葉として語られる
・映像として繰り返される
・場として再体験される
感情は「出来事」ではなく、意味づけられた記憶へと変わります。
3、制度が記憶を保存する
ここで重要なのは、感情を保存しているのは「人」ではなく、制度だという点です。
・記録(成績・スタッツ)
・ルール(比較可能性の担保)
・球場(同じ場所での再現性)
・メディア(語りの継続)
ここでいうメディアは単なる情報伝達手段ではありません。
試合の記録、記事、映像、実況を通じて、感情に意味を与え、時間の中に保存し続ける制度です。
これらがあることで、
「あの試合」
「あの一球」
「あの瞬間」
が、時間を超えて参照可能になります。
制度があるからこそ、感情は「共有可能な記憶」になります。
4、歴史資本とは何か
SRCFにおける歴史資本とは、単なる過去の蓄積ではありません。
意味づけられ、語り継がれ、現在の判断に影響を与え続ける時間です。
MLBでは、
・100年前の記録
・過去の名勝負
・球団ごとの物語
が現在の試合の意味を深くしています。
歴史は過去ではなく、現在に作用する資本です。
5、感情資本が歴史資本に変わる瞬間
感情が歴史になる瞬間があります。
それは、語られたときです。
・親が子に話す
・メディアが取り上げる
・球場で再現される
・記録として残る
ここで感情は個人の体験を超え、社会の共有財産になります。
6、五資本の連鎖
ここまでをSRCFで整理すると、
・制度資本:感情を安全に生む
・感情資本:体験として生まれる
・物語資本:語られる
・歴史資本:時間を超えて保存される
・関係資本:人と人を結び続ける
つまり、感情は単体では持続せず、他の資本と連鎖することで初めて残るのです。
7、企業経営への示唆
企業でも同じです。
・顧客体験はある
・感情も生まれる
しかし、それが
・記録されない
・語られない
・保存されない
場合、感情は消えていきます。
多くの企業が「関係が続かない」理由はここにあります。
8、ニュースルームの役割
ここでニュースルームが登場します。
MLBにおいて、メディアはニュースルームと同様に、「判断と感情の履歴」を社会に保存し、継承する装置として機能しています。
ニュースルームは単なる情報発信の場ではありません。
・判断の記録
・感情の言語化
・意味づけの蓄積
を行う装置です。
つまり、感情資本を歴史資本へ変換する制度なのです。
9、なぜMLBは150年続いたのか
MLBが続いている理由は、
・勝ち続けたからではありません
・人気があったからでもありません
感情を保存する仕組みを持っていたからです。
だからこそ、
・世代を超え
・地域を超え
・時間を超えて
関係が維持されているのです。
次回は、「ボールパークはなぜ“場の制度”なのか」を読み解きます。
なぜ同じ試合でも、球場で観る体験は特別なのか。「場」という存在が、どのように関係資本を生み続けるのか。さらに深く見ていきます。
