【ポッドキャスト #79】「元産業スパイ」は、何を見ていたのか

MCK有限会社代表の河合將之さんを迎え、「元産業スパイ」としての企業調査の経験を伺います。
企業は外からどう見られ、公開情報や現場の断片から何を読み取られているのか。
刺激的な言葉の奥にある、情報管理と見られ方の本質を丁寧に考えます。
音声(番組)は以下より聴取できます。
・ポッドキャスト:#79
・Spotify:#79
以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。
荒木
今日は『広報オタ倶楽部』として、2人目のゲストをお迎えしています。
MCK有限会社代表の河合將之さんです。
河合さんは、前職時代には川崎雅志さんというビジネスネームで活動されていました。
そして、我々の周辺ではよく知られていますが、ご自身のことを「元産業スパイ」と表現されています。
もちろん今日は、怪しい暴露話を聞く回ではありません。
企業調査の現場で、企業は外からどう見られているのか。
どんな情報が、外から読み取られているのか。
そのあたりを伺っていきたいと思います。
現在は、SNSデータベースマーケティングなどを得意とされていて、私とも採用マーケター養成プログラムや、ビジネスシューズ「POLARIS」のプロジェクトでご一緒しています。
河合さん、よろしくお願いします。
河合
よろしくお願いします。
濱口
もう、まず聞きたいのは、産業スパイって何ですか、ということです。
スパイって本当にいるんですね。小説やドラマの中だけの話だと思っていました。
◆「産業スパイ」ではなく、企業調査員
河合
すごくクリーンな言い方をすると、企業調査員です。
帝国データバンクや東京商工リサーチのような企業調査会社がありますよね。大枠で言えば、ああした企業調査に近い仕事です。
ただ、私たちが扱っていたのは、一般的な企業調査会社では対応できないような案件でした。
濱口
一般的な企業調査会社ではできない案件、ですか。
河合
通常の企業調査会社は、自社の名刺を持って正面から訪問します。
「御社の情報を確認したい」と伝えて、正面から調査に入るわけです。
でも、正面から行っても絶対に取れない情報があります。
たとえば、工場の中の情報です。どのような設備があるのか。生産ラインがいくつあるのか。サプライヤーはどこなのか。そうした情報は、企業にとって機密に近いものです。
荒木
普通に訪問しても、教えてもらえない情報ですね。
河合
そうです。
競合企業が「相手の工場の中で何が行われているのかを知りたい」と思っても、正面から聞いて得られるものではありません。
そうした時に、私たちのような特殊な企業調査の仕事がありました。
濱口
やっぱりスパイですね。
河合
だから私はよく「元産業スパイ」と言っています。
ただし、正確には特殊な企業調査をしていた、ということです。
◆情報は、表に出ていないようで見えている
荒木
差し支えない範囲で、どのように情報を取るのかを伺ってもいいですか。
河合
よく誤解されるのは、スパイは内部に入り込むものだ、というイメージです。
でも、実際には、スパイ本人が中に入ってしまうと動けなくなります。大事なのは、外から見える情報や、関係者との接点をどうつくるかです。
濱口 内部に入り込むわけではないんですね。
河合
そうです。
たとえば海外案件では、医療機器や工場、製造現場に関する調査もありました。表に出ている情報だけでは分からないことが多い。だから、公開情報を調べ、関係者の話を聞き、現場の空気を見ながら、断片を集めていくわけです。
荒木
つまり、企業が出している情報だけではなく、周辺にある情報や人の話、現場の断片から読み解いていくということですね。
河合
はい。
企業側は「これは外に出ていない」と思っていても、実際にはいろいろなところに断片が出ています。
その断片をつないでいくと、かなり多くのことが見えてしまうんです。
◆企業は、思わぬ場面で見られている
河合
企業にとって気をつけた方がいいのは、情報は思わぬ場面で外に出るということです。
たとえば、採用面接です。
人手不足の業界では、応募者が来ると企業側は丁寧に説明しようとします。場合によっては、現場を案内することもあります。
濱口
確かに、応募者には会社のことをよく知ってもらいたいですもんね。
河合
そうです。
ただ、そこでは通常より多くの情報が出ることもあります。
企業側は「採用のための説明」と思っていても、外から見ると重要な情報になることがあるんです。
荒木
リスクマネジメントの視点で見ると、非常に大事な話ですね。
採用面接や取引先との会話、現場案内など、日常業務の中で情報が外へ出ている。
河合
そうですね。
ものづくりの現場の方は、真面目で誠実なかたが多いです。だからこそ、丁寧に説明してくださる。
でも、どこまで話してよいのか、どこから先は社外に出すべきではないのかは、企業として整理しておいた方がいいと思います。
◆外からの視点を持つ意味
濱口
聞けば聞くほど、企業はかなり外から見られているんですね。
河合
見られています。
しかも、本人たちは見られていることに気づいていないことが多いです。
荒木
広報の視点で言うと、ここはとても重要です。
企業は「自分たちが何を発信するか」ばかりを考えがちです。
でも実際には、発信していないつもりの情報も、外からは読み取られていることがあります。
濱口
企業が見せたいものだけが見られているわけではないんですね。
荒木
そうです。
だから、企業は「何を伝えるか」と同時に、「外からどう見えているか」を考える必要があります。
河合さんの経験は、そこをかなり強く教えてくれるものだと思います。
河合
企業調査の現場にいると、情報は必ずどこかに出ていると感じます。
大事なのは、自分たちがどんな情報を外に出しているのか、そしてどんなふうに受け取られる可能性があるのかを意識することだと思います。
荒木
今回はまず、河合さんが「元産業スパイ」と表現されている企業調査の現場について伺いました。
来週は、この経験が今の仕事にどうつながっているのか。
そして、広報やマーケティング、採用にどう生きているのかを伺っていきたいと思います。

