【ポッドキャスト #80】見る・聞くから始まる広報

先週に続き河合將之さんを迎え、企業調査の経験が現在のSNSデータベースマーケティングにどうつながるのかを伺います。
フォロワー数や再生回数だけでなく、その先にいる相手を見ること。
広報の基本である「見る・聞く」を今あらためて考えます。
音声(番組)は以下より聴取できます。
・ポッドキャスト:#80
・Spotify:#80
以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。
荒木
今週も引き続き、MCK有限会社代表の河合將之さんにお越しいただいています。
先週は、河合さんがご自身で「元産業スパイ」と表現されている、企業調査の仕事について伺いました。
刺激的な言葉ではありますが、実際には、企業が外からどう見られているのか、公開情報や現場の断片から何が読み取られているのか、というお話でした。
今週は、その経験が今の仕事にどうつながっているのかを伺っていきたいと思います。
濱口
荒木さんと河合さんが、広報系のお仕事でも一緒に動いていると聞いています。
でも、素人からすると、産業スパイと広報がどうつながるのか、まったく分からないんです。
何がどうなって、今の仕事につながっているのでしょうか。
◆コロナで変わった仕事
河合
一番分かりやすいきっかけは、コロナです。
コロナで人と人が直接会えなくなりました。
企業活動も止まり、他社を調べたいという案件も大きく減りました。
産業スパイ、つまり企業調査の仕事は、人と直接会うことで出てくる情報がとても大きいんです。そこが一気に難しくなりました。
濱口
人に会えないと、仕事そのものが成立しにくくなるんですね。
河合
そうです。
そこで、自分は何ができるのかを考えました。これまで、人の話を引き出すことを専門的にやってきた。であれば、それを別の形で生かせないかと思ったんです。
その時に出会ったのが、コーチングでした。
人の話を聞き、引き出すという意味では、自分にもできるのではないかと思いました。実際にモニターとして試してみると、反応も良かったんです。
荒木
企業調査で培ってきた「聞き出す力」が、別の形で生きたわけですね。
河合
はい。
ただ、その仕事を広げるためには集客が必要でした。そこで、Facebookを始めました。
それが、私にとってSNSの入口です。
◆SNSにも、見えている情報がある
河合
最初は、自分の集客のためにSNSを使っていました。
でも、だんだん「Facebookのやり方を教えてほしい」「SNS運用を教えてほしい」という相談が増えていきました。
そこからSNSの仕事に入っていったんです。
さらに、3年ほど前にSNSのデータベースというものを知りました。
いいね、コメント、フォロワー、過去の投稿、行動履歴。そうしたものがデータとして蓄積されていることを知ったんです。
濱口
普通は、そこまで意識しないですよね。
河合
そうです。
普通の人は、知る必要もないので意識しません。
でも、企業調査の仕事をしていた私からすると、「ここにも情報がある」と思ったんです。
荒木
そこが河合さんらしいところですよね。
普通はSNSを「発信する場所」と見ます。
でも河合さんは、「人の行動や関心が残っている場所」として見る。
河合
そうですね。
過去の投稿や反応を見ていくと、その人が何に関心を持ち、どんな行動をしてきたのかが見えてきます。
それをマーケティングに生かせるのではないかと考えました。
◆フォロワー数より、誰に届いているか
荒木
私は河合さんの話を聞いて、広報にとってものすごく大事なことをしていると思いました。
広報は本来、パブリックリレーションズです。
つまり、双方向の関係です。
私の言葉で言えば、「見る、聞く、考える、そして伝える」。
河合さんは、この「見る、聞く」のプロなんです。
濱口
伝える前の部分ですね。
荒木
そうです。
広報はどうしても、何を発信するかに意識が向きます。
でも、その前に、相手は誰なのかを知らなければならない。
誰に見られているのか。誰に届いているのか。誰と関係をつくりたいのか。
そこを見ないまま発信しても、ずれてしまいます。
河合
SNSでも同じです。
多くの人はフォロワー数を見ます。もちろんフォロワーは大事です。
ただ、それ以上に大事なのは、どんな人がフォローしているのか、どんな人が投稿に反応しているのかです。
濱口
フォロワー数だけでは分からないんですね。
河合
はい。
たとえば、フォロワーの属性と、実際に投稿に反応している人の属性が違うことがあります。
本来届けたい人に届いているのか。違う人に届いているのか。
そこを見ないと、アカウントをどう伸ばせばいいのかも分かりません。
荒木
以前、インスタグラマーおばあちゃんの話をしましたよね。
フォロワーは増えたけれど採用にはつながらなかった。
あの話も、まさに「誰に見られているのか」を見ていなかった可能性があります。
濱口
フォロワー数や再生回数だけを見ると、分かった気になってしまいますね。
河合
そうなんです。
大事なのは、数の裏側に誰がいるのかです。
◆見る・聞くが、関係をつくる
荒木
SNSという言葉が出てくると、どうしてもフォロワー、エンゲージメント、再生回数という数字に振り回されがちです。
でも、本来はそこに人がいるわけです。
誰とつながりたいのか。
どんな関係をつくりたいのか。
それを見極めることが大事です。
濱口
つまり、SNSもコミュニケーションなんですね。
荒木
そうです。
フォローする、いいねする、コメントする。
それはすべて接点です。
接点が増えれば、関係が深まる可能性がある。
これは本来、パブリックリレーションズそのものなんです。
河合
私の仕事では、見込み客リストを作ることも多いです。
ウェブやSNS上の情報から、属性を絞ってリスト化し、そこに対して丁寧に接点をつくっていきます。
荒木
そこも大事ですね。
無差別にばらまくのではなく、将来お客さんになる可能性のある人、つまり未来のステークホルダーを明確にする。
そして、その人たちにどう伝えるかを丁寧に考える。
濱口
広報の本質とつながりますね。
荒木
そう思います。
伝える前に、まず見る。
見るだけでなく、聞く。
相手を知った上で、何をどう伝えるかを考える。
河合さんの仕事は、広報が見落としがちな「相手を見る」という部分を、非常に具体的に支えているように見えます。
河合
ありがとうございます。
荒木
今回は2回にわたって、河合さんにお話を伺いました。
刺激的な「元産業スパイ」という言葉から始まりましたが、最後に見えてきたのは、企業は外から見られているということ。そして、広報は相手を見ることから始まるということでした。
企業は、誰に見られているのか。
誰と関係をつくりたいのか。
その問いを持つだけでも、発信のあり方は変わってくると思います。

