【ポッドキャスト #84】退職した社員は、もう会社と関係がないのか

前回に続き、合同会社社外人事部長代表の長谷川満さんをゲストに迎えました。
前回は、社員52人から513人へと組織が成長する過程で、社員との対話や、人材育成・評価の仕組みが果たした役割を伺いました。
今回は、社員が会社を辞める時、そして辞めた後の関係について考えます。
音声(番組)は以下より聴取できます。
・ポッドキャスト:#84
・Spotify:#84
以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。
◆採用のコツは、退職する時にある
濱口
前回、長谷川さんが退職した後も、元の会社の社長と関係が続いているという話がありました。
人事責任者として多くの採用に関わる一方で、退職する社員もたくさん見てきたと思います。
退職した人は、会社にとって、もう関係のない人になるのでしょうか。
長谷川
私が初めて人事責任者になった時、社長に「採用のコツは何ですか」と聞いたことがあります。
すると、「会社を辞める時に、気持ちよく辞めてもらうことだ」と言われました。
最初は意味が分かりませんでした。
採用の方法を聞いたのに、なぜ退職する時の話をするのだろうと思いました。
◆入社前に、できていないことも伝える
長谷川
社長の言葉を聞いて考えていくと、採用と退職はつながっていることが分かりました。
社員が会社を嫌いになって辞める背景には、入社前に聞いていたことと、入社後の現実とのギャップがあります。
採用の時に良いことだけを伝えれば、入社後に「話が違う」と感じる可能性が高まります。
だから、会社がまだできていないことや、仕事の大変さ、見せたくない部分も、採用の段階で誠実に伝える。
すべてを理解した上で入社してもらえば、少なくとも大きなギャップは減らせます。
荒木
広報でも同じです。
人を採用したいからといって、会社を実際以上によく見せれば、短期的には入社につながるかもしれません。
しかし、その後に現実との違いが分かれば、信頼を失います。
できていることだけでなく、できていないことも伝える。会社のありのままを示した上で、相手に判断してもらう。
採用も、相手との関係を結ぶためのコミュニケーションなのだと思います。
◆学生が、社員に直接話を聞く
長谷川
新卒採用では、学生に会社の新聞を作ってもらう選考も行いました。
数人の学生でチームをつくり、会社案内やウェブサイトの情報だけでなく、実際に働いている社員二人にインタビューして新聞を作るという内容です。
濱口
インタビューする社員は、会社側が選ぶのですか。
長谷川
学生自身が社内へ行き、その場で社員を選んで話を聞きます。
採用担当者ではない社員や、会社への思いが特別強いわけではない人に話を聞く可能性もあります。
会社にとっては、当然リスクがあります。
ただ、採用担当者が用意した言葉だけではなく、実際に働く人の生の声を聞くことで、学生は会社の現実を知ることができます。
社員にとっても、自分の仕事や会社について学生へ説明する経験になります。
荒木
会社側がすべてを取り繕うことができない仕組みですね。
学生が社員の言葉を聞き、自分たちで考え、新聞として編集する。これは採用活動であると同時に、会社と学生、社員との対話でもあります。
◆退職しても、関係は終わらない
長谷川
その会社では、退職した社員との関係も以前から大切にしていました。
現在では「アルムナイ」と呼ばれる取り組みですが、会社を辞めた社員ともつながりを持ち、戻りたい人を受け入れる仕組みがありました。
実際に、転職した後で「前の会社の方が自分に合っていた」と気付き、戻ってきた人もいました。
経営方針書にも、再入社を認めることや、その条件が記載されていました。
荒木
気持ちよく送り出していなければ、戻りたいと思っても、会社には連絡できません。
退職した社員が、別の会社で働きながら取引先や協力者になることもあります。会社のことを理解する人として、採用候補者へ会社を勧める可能性もあります。
一度結んだ関係は、雇用契約が終わったからといって、すべてなくなるわけではありません。
◆退職は、関係の終わりではなく変化である
濱口
採用する時から、退職する時までをつなげて考えるという発想が面白いですね。
長谷川
退職には、さまざまな事情があります。
もちろん、すべての退職が円満になるわけではありません。
ただ、会社が人との関係を大切にする姿勢を持ち、入社前から誠実に向き合っていれば、辞めた後も良い関係が続く可能性は高まります。
荒木
採用、在職、退職を、別々の出来事として切り離さないことが大切なのだと思います。
採用時に正直に伝える。
在職中に社員と向き合う。
退職時には、その人の判断や事情を尊重する。
そして、退職後も必要に応じて関係を続ける。
退職は、会社と人との関係が消える瞬間ではありません。
社員という関係から、元社員、協力者、顧客、取引先へと、関係の形が変わる可能性があります。
採用のコツは、気持ちよく辞めてもらうこと。
その言葉の奥には、人との関係を一時的な雇用としてではなく、長い時間の中で捉える経営の姿勢があるのだと思います。

