初級講座 Ⅰ.理論・基礎知識「コミュニケーションの実際」

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こんにちは。荒木洋二です。

今回も「そもそも広報PRとは」の解説です。前回の2番目、「広報PRとは?」について、その続きを一つ一つ解説します。

今までの内容をもう一度振り返ります。

広報とは、PRと同義語です。PRとは、パブリックリレーションズです。意訳すると利害関係者と良好な関係を築くことです。良好な関係を築くためには、利害関係者との、その相手とのコミュニケーションが必要不可欠です。

そして、前回はコミュニケーションの基本として、次の四つの要素について説明しました。

1、考える
2、相手の事を知る·理解する
3、存在を知らせる
4、価値を伝える

パブリックリレーションズとは、利害関係者と良好な関係を築くことです。では、利害関係者とは一体誰なのか、ということです。例えば、企業にとって利害関係者とは誰なのかを見ていきましょう。

「そもそも企業組織とは?」の講座で解説したとおり、企業にとっての利害関係者とは、まず経営者·社員です。次に顧客です。BtoB 、BtoC かは関係ありません。そして取引先、株主·金融機関が現在の利害関係者です。さらには少し距離はありますが、メディア·報道機関も利害関係者ですし、(地域)社会(住民·行政)も利害関係者です。

続いて、企業にとっての「未来の利害関係者」は誰なのかを確認しましょう。

今後、社員·スタッフになるかもしれない、学生や中途入社も含めての求職者です。将来、顧客となる人·会社などが存在しているであろう市場。そして、未来の取引先が存在しているであろう業界全体です。最後に未来の株主になるかもしれない投資家です。これらが企業にとっての「未来の利害関係者」です。

では、今、挙げたそれぞれの利害関係者とのコミュニケーション活動とは、実際どんなものがあるでしょうか。「コミュニケーション活動の実際」を一つ一つ確認しましょう。

·社員
まず、社員です。社員であれば、大手企業は社内報を発行しています。社員教育もします。朝礼でもコミュニケーションします。ミーティングもそうです。さまざまな社内イベント、例えば、運動会。これも組織と社員とのコミュニケーションの実際、現場です。

·顧客
顧客はどうでしょうか。大手企業は顧客管理システムを導入しています。CRM(カスタマー·リレーション·マネジメント)で関係を深めようとしています。お客さま相談室、カスタマーサービスの部署を設けています。大手企業·有名企業は顧客向けの情報誌を発行しています。展示会などを開いて顧客を招くこともあるし、顧客に対する感謝会なども開いています。そういうコミュニケーション活動をしています。

·取引先
では、取引先についてはどんなことに取り組んでいるでしょうか。セミナーを開催したり、自社主催の展示会や賀詞交歓会に招いたりします。大手企業はCSRレポートやアニュアルレポートを発行し、配布しています。業界関連イベントで交流するなど、コミュニケーションをしています。

·株主·金融機関
では、株主や金融機関についてはどうでしょうか。上場企業はIR活動をしています。IRとはインベスター·リレーションズの略で、株主·投資家向け広報のことです。株主総会やスモールミーティングを開いています。アニュアルレポートも発行しています。

·求職者
求職者に対しては、学生·中途を含めて採用のための専用ウェブサイト、ランディングページをつくっています。就職サイトや転職サイトに広告を出稿しています。自社主催の就活イベントを行ったり、大小さまざまな就活イベントに出展したりしながら、未来に社員なるであろう、人たちとのコミュニケーションを図っています。

·市場
市場に対してはどんな取り組みをしているでしょうか。まだ顧客になってない人たちに対して、いろんな媒体に広告を出すなど、マーケティング活動をしています。アンケート調査なども行っています。それらに加えて、店頭における販売促進活動なども行っていますし、相手が企業であれば、展示会にも出展しています。未来の顧客となる人たちとのコミュニケーションを図っています。

·業界
業界で括ると、そこには確かに競争相手も存在していますが、業界団体があり、多くの企業が所属しています。業界標準のルールをつくったり、会合やセミナーを定期的に開いたりしています。大手企業であれば、業界団体に役員を送り出しています。業界に特化したイベントに出展したり、さまざまな交流会に参加したりします。

·投資家
未来の株主となり得る投資家に対してはどうでしょうか。先ほど述べたとおり、IR活動をしています。上場企業は四半期ごとに業績を情報開示しています。アニュアルレポート(年次報告書)も誰でも見れるようにウェブサイトに掲載しています。必要があれば、個別のミーティング対応も繰り返しながら、投資家が自分たちの株主になってもらえる努力を続けています。

·地域社会
本社や支社の所在地である)地域社会に対しては社会貢献活動を行っています。例えば、地域の清掃やイベントに参加したり、お祭りに協賛したりしています。それから、全国各地に「警察官友の会」という、地元の警察官を支えている組織があります。ここには多くの地元老舗企業や大手企業が会員となり、地元の安全ために彼らと交流しています。工場を持っている場合、地元の小学生の見学会を催したり、地域住民を敷地に招き交流会なども行っています。

·報道機関
報道機関に対しては定期的にプレスリリースを配布しています。取材も受けています。記者発表会、記者懇親会、プレス向けセミナーなども定期的に行っています。さらには、報道関係者に企画を提案するプロモート活動や、個別懇親など、良好な関係を築くための取り組みを日々行っています。

ここまで説明したきたとおり、大手や有名企業、上場企業は、それぞれの利害関係者に対して、実に細かく丁寧なコミュニケーション活動を行っているのです。

最後にもう一度、今回の講座を振り返ります。

·パブリックリレーションとは、利害関係者との良好な関係構築
·良好な関係を構築するためにはコミュニケーションが必要不可欠
·利害関係者それぞれとの丁寧なコミュニケーション活動が重要

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