中級講座 Ⅰ.理論・基礎知識 経営と広報 CSRの基礎 〜CSRとは(2)〜

こんにちは、荒木洋二です。

「経営と広報」の「2.CSRの基礎」に関する解説を前々回から始めました。内容は次のスライドのとおりです。

②CSRとは

今回は4回にわたる解説の3回目です。前回と今回で「②CSRとは」を解説しています。

前回は日本におけるCSRの源流ともいえる「近江商人の三方よし」を解説しました。

今回は次のスライドにある、「②CSRとは」についていよいよ解説します。さらには「③CSRとリスクマネジメント」についても触れます。

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CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略です。日本語だと「企業の社会的責任」といいます。

CSRが世界の企業社会に根付くまでの動向を簡潔に振り返ってみましょう。

■欧州の動向

まず、欧州の動向です。

EU(ヨーロッパ連合)では2001年7月に「CSRに関する欧州フレームワーク」が公表されました。その1年後、2002年7月には「CSR政策に関する欧州委員会報告」が公表されました。これは、あらゆるEUの政策にCSRを組みこむことを表明した内容でした。

■米国の動向

続いて、米国の動向です。

米国では、1986年に書籍『RATING AMERICA CORPORATE CONSCIENCE』(原題)が出版されました。続いて1988年、『SHOPPING FOR A BETTER WORLD』(原題)が発行されました。これらの書籍はどういう内容だったのか。「企業の良心を図る七つの評価軸」を提唱しています。

現在、日本でも注目を浴びる、SDGs(持続可能な開発目標)に通じる内容が示されています。SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略で、「エス・ディー・ジーズ」と読みます。2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」で採択されました。国際連合加盟193カ国が、2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。

さらにCSR評価機関「Social Accountability International」、略してSAIが1997年10月、 SA8000(社会的説明責任)を確定しました。これは審査登録機関の調査による第三者認証システムです。

ここでは九つの評価軸を制定して認証しています。前述の七つの評価軸と重なっている軸もあります。

■日本の動向

続いて、日本の動向をざっと要点だけ振り返ります。

日本では1956年、経済同友会が「経営者の社会的責任の自覚と実践」という内容を公表しました。「社会的責任」という言葉は、近代でもかなり早い時期に企業社会で使われていたことが分かります。

1960年代に高度経済成長を迎え、ここで深刻な公害問題が発生しました。企業の環境的責任が厳しく問われました。1970年代に入り、企業は公害対策や、社会に利益を還元する活動にも取り組み始めました。

1980年代になると、労働問題などが社会問題としてクローズアップされました。同時期、フィランソロピーやメセナという名称の社会貢献活動が盛んに行われました。企業イメージを向上させることを企図した活動です。

そして、1990年代に突入するや否や、「バブル経済」が崩壊しました。この頃、企業不祥事も多発しました。経団連(日本経済団体連合会)は1991年に「企業行動憲章」を制定、企業の責任ある行動原則を定めました。地球規模における環境問題の実態が顕在化したのも、同時期でした。

その後の日本の動きなどは、次回の講座「CSRの今」で改めて解説します。

③CSRとリスクマネジメント

では、続いて「CSRとリスクマネジメント」を解説します。

米国の有名な経営学者ピーター・F・ドラッカー氏は、「組織の社会的責任の4原則」を提唱しています。詳しくは次のスライドをご覧ください。

以上が、ドラッカー博士が主張した「組織の社会的責任の4原則」です。こうして四つを一つ一つ確認してみると、分かることがあります。何を主張しているのかというと、まさしく「リスクマネジメントせよ!」と言っているではありませんか。

次回は 「2.CSRの基礎」の最後「③CSRの今」を解説します。

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