初級講座「Ⅲ.実務能力編」 プレスリリースの作り方 プレスリリースとは?

こんにちは、荒木洋二です。

「プレスリリースの作り方」第2回は、「そもそもプレスリリースとは何か」について解説します。

まず、誰に、何を、ということを明確にしましょう。次のスライドをご覧ください。

つまり、プレスリリースとは「報道関係者向け発表資料」です。

プレスリリースは、報道関係者と企業をつなぐ接点です。そして、パブリシティのための基礎的な資料でもあります。

では、パブリシティとば何でしょうか。

企業・組織がプレスリリースや報道資料などを報道関係者向けに発信します。その情報をもとに報道機関が取材します。そして、報道機関は一般社会つまり視聴者・読者にニュースを報道します。この一連の流れをパブリシティと言います。まとめますと、次のスライドの通りです。

プレスリリースとは、報道関係者向け発表資料です。

では、何を発表するのでしょうか。

新製品の発売や新サービスの提供だけが、プレスリリースで発信できる情報ではありません。組織における新たな取り組み、新しい打ち手、つまり戦略は全て発表できます。

自社にとっての「ニュース(NEWS)」であれば、発表できます。もっと言えば、社会的責任の一丁目一番地として情報開示すべきです。企業・組織はすべからく全ての経営資源を社会から負託されている立場だといえます。ですから、上場・未上場の区別なく、社会に対して公表、公開するのが経営の基本的姿勢なのです。報道されるかどうかとは別の問題です。

では、報道されるための要点は何でしょうか。それは発信した情報自体に「something new」、つまり何か新しいことがあるかどうかです。社会にとって、地域にとって、あるいは業界にとって、今までにない何か新しいことがあれば、記者たちは視聴者・読者に対して「ニュース」として発信します。

時折、PR業界やスタートアップの広報担当者の中で聞かれる会話に違和感を覚えることがあります。それは「どうすれば、露出(=報道)されるのか」「露出するために何が必要か」という会話です。これらの会話に何も感じないとすれば、広報に対するそもそもの姿勢に少々ずれが生じています。手段を目的としてしまっているということです。もちろん無意味だと言いたいわけではありません。先に述べた内容をしっかりと整理した上で日々の業務に当たりたいものです。

では、何が発表できないのか。

新しくないこと、過去の出来事は発表できません。新たな取り組みであったとしても、既に自社のウェブサイトなどを通じて発信してしまっている、公開してしまっている情報はプレスリリースに適していません。ウェブ広告を先行させてしまったり、図らずもある一つの媒体だけに記事が掲載されたり(「リーク」といいます)した場合です。
記者クラブをはじめ、報道機関には公平の原則がありますから、たとえ1媒体でも報道されてしまった情報を「プレスリリース」として投函・配信することは厳に慎まなければなりません。

それでも、どうしても伝えたい場合はどうしたらいいのか。プレスリリースと同じ体裁で通常「プレスリリース」と記載している箇所に「情報提供」「情報提供資料」と明記してください。そして記者クラブに投函したり、報道関係者個人に配信したりしましょう。あくまでも「情報提供」であることを主張するのです。

次に、プレスリリースのテーマとして扱えない情報があります。

キャンペーン情報です。

近年、プレスリリースを一斉配信するサービスが日本の企業社会でも広がりを見せています。そこでは、キャンペーン情報のようなものがプレスリリースとして配信されているのを見かけることがあります。キャンペーン情報は広告として配信すべきです。販売促進が目的なのですから。キャンペーン情報は報道されません。決してニュースにはなりません。報道関係者を対象とする情報発信ですから、適していないと私どもは考えています。
それでもどうしてもキャンペーン情報を報道関係者に伝えたい場合は、新製品発売のプレスリリースの文章中にキャンペーン実施の事実を記載するにとどめましょう。

最後に、文章表現について解説します。

大切なことは分かりやすい文章かどうか、ということです。このことが基準です。報道関係者は、文章を書く専門家、プロフェッショナルです。彼らは、いかに分かりやすく、やさしい文章を書くか。
そのことに徹底してこだわってきた歴史があります。その中で基準を設定しました。

その一つが、共同通信社が発行している『記者ハンドブック』です。1956年に初版が発行されました。その後、2022年3月に増補・改訂された第14版が出版されています。第13版の発行が2016年でしたから、6年ぶりの増補・改訂です。
広報担当者は『記者ハンドブック』を必ず一冊手元に持っておきましょう。常に『記者ハンドブック』を基準として、文章の表現を決めていくようにしましょう。

では、最後にもう一度整理します。
プレスリリースとは何でしょうか。次のスライドをご覧ください。

今回は以上です。次回はプレスリリースの基本構成について解説します。

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