広報PRコラム#86 「情報発信」をひもとく(1)

こんにちは、荒木洋二です。

2022年7月から休載していたコラムを1年ぶりに再開します。休載理由だった書籍の執筆が、ようやく落ち着き、出版のめどがたったからです。筆者にとって、人生初の商業出版(自費出版ではありません!)です。詳細は改めて当ニュースルームで共有しますので、しばしお待ちください。

当社の近況を述べますと、今年の春先から「情報発信の基本」をテーマとした内容を伝える機会が増えています。というより意図的に増やしています。いくつかの経営者交流会や経営者マッチングのサービスを利用しており、そこで出会う経営者たちなどにオンラインの1対1(1on1)の対面や、数人が集まるイベントの場で熱っぽく語っています。

◾️生活者と企業を取り巻く情報環境は急激に変化

今回から10数回にわたり、そもそも情報発信とは何か、企業にとってどれほど重要なのか、企業人(ビジネスパーソン)としてどう情報と向き合えばいいのか。これらを一つ一つひもといていきます。読者の皆さんも「そもそも何だろう」という思い、意識を持ちつつ、読み進めてみてください。当たり前に日々使っているビジネス用語の数々を見直す、そして情報発信の本質を理解できる絶好の機会になるかもしれません。

ICT(情報通信技術)の目覚ましい技術革新により、デジタル化は急激に進展し、インターネットという新しいインフラは急速に全世界で普及しました。日本も例外ではないことは、皆さんがそれぞれの立場で実感しているでしょう。生活の隅々まで浸透し、私たちの生活になくてはならない、企業経営になくてはならない社会インフラとして定着しています。

インターネットの登場とその普及により、私たちを取り巻く情報量も、私たちが接する情報量も爆発的に増えました。情報の海にのまれる、渦に巻き込まれる、と表現されるほどです。私たちを取り巻く情報環境は今なお変化し続けています。

生活者だけでなく、企業を取り巻く情報環境も急変、激変したことは言うまでもありません。

◾️そもそも情報とは何か

ここで改めて問います。そもそも「情報」とは何でしょうか。

『例解 現代国語辞典 第五版』(小学館刊)によると、「(1)事柄の内容、様子についての知らせ。インフォメーション。(2)文字、記号、音声など、いろいろな媒体によって伝えられ、判断、行動のよりどころになるもの」とあります。
『広辞苑 第六版』(岩波書店刊)では、どうでしょう。「(1)あることがらについてのしらせ。(2)判断を下したり行動を起こしたりするために必要な、種々の媒体を介しての知識」としています。

両辞典に共通する言葉を挙げ、企業の情報発信という視点で整理してみましょう。
まず「事柄」ですから、つまり企業における「事実(ファクト)」についての知らせが「情報」ということです。次に情報とは、(企業が発信する情報を受け取る相手の)判断や行動に影響を与えるもの(知識)です。詳細は後述しますが、企業における「事実」と「魅力」のことです。

◾️情報発信は企業の宿命

企業は、市場、さらに言えば社会とも情報でつながっています。情報が架け橋となり、初めて企業は市場とも社会ともつながることができます。企業は自らの存在そのものを、あるいは自社商品・サービスを、市場や社会に知らせないと何も始まりません。なぜならば、知らないということは存在していないに等しいからです。存在していないのですから、選択肢に挙がるはずがありません。選択肢にさえ挙がらないのですから、誰からも選ばれないということです。

つまり情報発信は企業にとって宿命なのです。インターネットが登場する、はるか以前より情報発信という行為は、企業にとっての宿命だったのです。企業が市場や社会で生きていくため、成長していくためには情報を発信し続けるしかありません。市場なくして、社会なくして企業は存立できません。市場と社会は、企業が存立するのための基盤そのものです。情報発信をやめた時点で、企業の成長は一気に失速します。株式市場では、情報開示が不十分な企業は信頼されません。

企業にとって、情報発信で大切なことは何でしょうか。

企業社会では、杓子定規な、ステレオタイプな考え方により物事の本質を見失うことがあります。一方で、物事を構成要素ごとに分解し、単純化することで本質が見えてくることがあります。情報発信における構成要素の核となるのは、何のために(目的)、誰(主体)が誰(対象)に、何(情報の内容)を伝えるのか、ということです。さらに言えば、どうやって(手段)伝えるのかも加えられます。

私たちは頻繁に米国から流入される、輸入される最新のカタカナ・ビジネス用語に踊らされ、翻弄されて、しばしば本質を見失いがちです。情報発信の基本を押さえないまま、日々の業務に取り組むことは成果が何かを見誤ることにつながります。自分が何をしているのか、分からなくなり、迷子になり、疲れ、スキルも身に付かないまま時間を浪費することにつながります。

次回は、情報発信の基本を一つ一つ解説します。

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