広報PRコラム#91 「情報発信」をひもとく(6)

こんにちは、荒木洋二です。

企業は、常に情報と向き合わなければなりません。どんな情報に囲まれ、どんな情報を保有しているのか。情報をどう扱うのか、どう向き合うのか。これらは企業経営が続く限り、終わることのない問い掛けです。企業(経営者)は自問自答し続けるしかありません。

◾️企業が発信する2種類の公式情報

企業が情報を発信する目的は二つです。知らせるためと選ばれるためです。今まで5回にわたり、情報発信をひもとくために四つの構成要素に分け、一つ一つ解説を進めてきました。

①目的     :何のために伝えるのか。
②(主体と)対象:(誰が)誰に伝えるのか。
③情報の内容  :何を伝えるのか。
④手段     :どうやって表すのか。どうやって伝えるのか。

前回は、情報を伝える「対象」を認知と関係の有無を基準に分類しました。今回は何を伝えるのか、情報の内容について詳しく解説します。

企業が発信する公式(オフィシャル)な情報は、2種類に大別できます。

どう分けるのか。企業経営における表と裏に分けます。「表舞台」の情報と「舞台裏」の情報に分ける、ということです。それぞれの詳しい内容は後述するとして、同じことを少し視点を変えて明らかにしましょう。

◾️機能的価値と情緒的価値

企業価値には二つの側面があります。二つの価値によって構成されている、とも言えます。その二つとは機能的価値と情緒的価値です。情緒的価値を感性的価値という場合もあります。商品を対象とした用語として、「ブランド」が定着していることは皆さんも知るところです。ブランドを論ずる際も、機能的価値と情緒的価値の二つの側面がある、と言われています。価値とはそもそも相手があって成立する言葉です。商品でいえば、購入者・利用者に対して機能的な側面で役に立っているのか、情緒的な側面で役に立っているのか、ということです。
つまり近年、企業社会で頻繁に使われている「企業ブランド」とは、企業価値と同意語・同義語であるということが分かります。

当社においては、企業における機能的な側面の情報を「表舞台」の情報、情緒的な側面の情報を「舞台裏」の情報としています。実はこの両側面の情報は、情報発信の目的とも連動しています。前述のとおり(ほぼ毎回述べているとおり)、目的も二つに大別できます。知らせるためと選ばれるためです。つまり何が言いたいのかというと、情報とは知らせるための情報と選ばれるための情報に分類できるのです。整理して結論を示すと次のとおりです。

・知らせるための情報:「表舞台」(機能的な側面)の情報
・選ばれるための情報:「舞台裏」(情緒的な側面)の情報

◾️何のために知らせるのか

何のために知らせるのかといえば、まず認知を獲得するためです。「知らない」ということは、「存在していない」に等しいと何度も繰り返し強調してきました。相手から明確にその存在を認知されなければ、選択肢に挙がることすらあり得ません。競争の場にすら参加できないことを意味します。まさに「話にならない」状況です。

採用、営業などの場面で選択肢に挙がるためには、最低限、企業名、商品・サービス名を認知してもらわなければなりません。当たり前のことです。ただ、名称を認知しただけでは選択肢には挙がらないでしょう。存在そのものを知っているだけに過ぎないからです。

では、どうすればいいのか。認知の先、次の段階として理解を獲得する必要があります。
理解とは、単なる名称にとどまらず、もう一歩踏み込んで、どんな企業なのか、どんな事業を営んでいるのか、どんな人が経営しているのか、これらをよく知るということです。理解とはよく知るということです。理解するためには、企業のホームページ(コーポレートサイト)に掲載されている会社概要、事業内容、経営者プロフィールなどの情報が必要です。会社の沿革(歴史)や業績もそうです。商品・サービスでいえば、価格・料金、詳細な仕様・機能などに当たります。

◾️選ばれる前に認知と理解

企業そのものにしろ、商品・サービスにしろ、選択肢に挙がるためには認知と理解が欠かせません。認知も理解も一足飛びに獲得することはできません。

情報発信の回数も、もちろん時間も必要です。情報があふれ過ぎている今の時代、認知してもらうまでには、何度も何度も繰り返し伝えるしかありません。理解を深めてもらうため、あるいは正しく理解してもらうためにも繰り返し伝えるしかありません。繰り返し説明するしかありません。

なぜ知らせるのか。結局、それは選ばれたいからです。選択肢に挙げてほしいからです。ですから選ばれる前提として、認知と理解を獲得しなければなりません。事実(ファクト)を、機能的な側面の情報を繰り返し伝える、あらゆる場面を逃さずに伝えるのです。選ばれる前にそのことがどれほど大切なことなのか。理解できたと思います。

◾️選ばれるための情報とは?

では、選択肢に挙がった後、そこからどうすれば選ばれるでしょうか。選ばれるためには選ぶ側に「選ぶ理由」が必要です。選ばれるための情報を発信するということは、「選ぶ理由」を与えることといえます。

次回は選ばれるための情報、すなわち「舞台裏」(=情緒的な側面)の情報とは何かを詳説します。

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