【ポッドキャスト #04】 どうなる!? マスメディアとネットメディアのこれから
デジタル化の進展により、企業や個人を取り巻くメディア環境、情報環境は変化し続けています。
そんな時代に、私たちはどうやって情報の「確かさ」を確保すればいいのかを語りました。このラジオ内容が参考になる(?) かもしれません。ぜひお聞きください。
メディア環境が変化する中で、企業における情報発信の在り方が問われている
荒木: おはようございます。
濱口: おはようございます。
荒木: 『広報オタ俱楽部』、今日が2025年の2回目ですね。
濱口: 2回目です。新年(仕事など)が始まりましたが、まだ正月ぼけが抜けきれません。
荒木: 濱口さんは普段、どんなメディア(マスメディアとして、テレビ、新聞、雑誌、ラジオのマスコミ4媒体)、インターネットも含めて、見ているかな?
今は、マスメディアや企業、個人もいろいろな人たち(組織)がユーチューブチャンネルをやっている。
そんな中で、濱口さんが 常に見ている、いわゆるマスメディア(オールドメディア)や、ネットメディアとかで追いかけている番組、見ているチャンネルはある?
濱口: 私は、昔はテレビだけだったけれど、ユーチューブでも動画を見るようになりました。テレビ局もいろいろな発信媒体を作っているから、(発信媒体の数)も無限に増えていますよね。だから今、情報量が増え過ぎていますよ。
それで結局、(多くの情報の中から)何を取りに行けばいいのか分からなくなってしまったので、今は、テレビ だけ見ている状態です。
以前の放送で話題に上った、 群馬県・草津町の町長(黒岩信忠氏)や兵庫県知事(斎藤元彦氏)の話もあるので、「(テレビでの報道)全部が事実ではないだろう」という視点で、実際に見ているのはテレビだけです。
荒木さんは何を見ていますか?
荒木: 実は私、「ドラマ好き」で、テレビではドラマを見ている。
濱口: 意外です。
荒木: 今はファイアースティック(Fire TV Stick)があると、テレビ画面でNetflixとかTVer(民放公式テレビ配信サービス)とか、いろいろと見られるじゃない。だから、ドラマはテレビで見る。割と仕事系のドラマは好きだね。Netflixは、テレビ放送ではないけれど、大画面で見るためにテレビで見ている。
それ以外にも、ユーチューブは、いくつか(チャンネル)登録していたり、関心のあるテーマを(時間があれば)チェックしたりして見ているね。
濱口: なるほど。
荒木: マスメディアも、だいぶインターネット媒体に進出してきているよね。(動画メディア)ユーチューブだと、芸人がチャンネルをやっていたり、いわゆるマスメディアと言われる人たちがやっていたりと、ずいぶん変わってきているなと思う。
濱口: ポッドキャストをやっている人も増えていますよね。
荒木: うん、増えているね。
また(前回の放送時も話題に上った)大谷翔平選手の話になるけれど、 彼のニュースってたくさん飛び交うじゃない。その中で、(大谷選手に関する)海外のニュースを翻訳して紹介しているニュースもある。それを見ると 、「ポッドキャスト番組の誰々が、こう言っていた」という話を多く目にする。(肌感覚では)ニュースを5本見たら、そのうちの3本ぐらいは、ポッドキャストで(大谷選手について)「誰が、何と発言したか」という話をしているね。
アメリカでは日本よりも、ポッドキャスト(認知や利用)がメジャーなんだと感じた。
濱口: そうなのかもしれないですね。
荒木: (ニュースを発信するメディアが)大谷選手の情報を扱う番組を全部、チェックしているんだろうね。
他に注目しているのは、ABEMA(アベマ:株式会社AbemaTVが運営する広告付無料ストリーミングテレビ)がやっている 番組。あるいは、NewsPicks(ニューズピックス:株式会社ユーザーベースが運営するオンライン経済メディア)。
いわゆるマスメディアのような人たちが作っているユーチューブチャンネルもある。そういった番組は、(テレビと違って)尺が決まっていないから、毎回、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日の名物番組)のようになっている番組もある。
他にも、地上波(放送)では「呼ばないだろうな」と思う人たち(コメンテーターやゲスト)を呼んで、議論を交わすから、多様な意見を聞けるという意味では、(地上波放送より)そっちの方が面白いと思うことが多いね。
濱口: テレビだと、どうしても偏った意見になってしまいがちなんですよね。
荒木: テレビだと毎回、(登場する)コメンテーターが決まっていることが多い。(ユーチューブは)きっと実験的にやっていると思うけど、企画ごとにコメンテーターや専門家たちが違うから、議論を交わしたり、(意見が対立して)けんかのように見えたり、そこも(ありのままに)流しているので、その辺りが面白いと思う。
濱口: なんかリアルで面白いですね。
荒木: あと、ReHacQ(リハック:株式会社tonariが運営する経済動画メディア)という面白い番組がある。テレビ東京で『日経テレ東大学』というユーチューブチャンネル(2021年4月~2023年3月放送、1年10カ月で登録者数100万人を突破)の(テレビ東京の)プロデューサー・高橋弘樹氏(現在、株式会社tonari代表取締役)が2023年3月に立ち上げた(高橋氏がテレビ東京退職に伴い『日経テレ東大学』は閉鎖)。
ReHacQは、政治や経済系の堅い情報も扱うし、その他いろいろな情報を中立の意識を持って発信しているから面白い。チャンネル登録者は(1年7カ月で)100万人を突破している。
今後のメディア(インターネットも含めて)は、どうなっていくのかな。マスメディアもインターネット媒体に力を入れているからね。
■情報の確かさを確保するための四つの情報源とは?
濱口: どうなっていきますかね。私は、明らかに今は情報が多過ぎると感じているんですよ。
荒木さんが発信している「寺子屋広報人」(広報・PRを笑いながら気楽に学べるeラーニングコンテンツ、全243講座)の内容にも、「情報量が多すぎると感じている人が半数近くいる」(2018年、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の「メディア定点調査 2018」)という内容がありましたよね。
荒木: 当時(の情報量)でね。今は、そのときより増えているからね。
濱口: 絶対に増えていますよね。
荒木: その調査結果(「メディア定点調査2018」の分析結果をまとめた書籍『広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2018』)によると、情報に振り回されないためには、「ノイズ(雑音と思うもの)を自分なりに排除する」「確かさを確保するための四つの情報源がある」と記されている。
博報堂DYメディアパートナーズの(シンクタンク)メディア環境研究所が毎年行う「メディア定点調査」をまとめた書籍『メディアガイド』(宣伝会議刊)に記載されたデータは、調査結果に基づいて分析し、なおかつ、マスメディア(広告代理店)の内部(だけ)が持っていると思われるディープな詳しい情報が多く載っていたので、 私は毎年(書籍を)買っていた。
ただ、2020年版が出た後からは、(方向転換によるものなのか)発行されなくなった。
調査結果の分析でいわれていた「四つの情報源」の話は、今でも「なるほどな」と思わせるほど納得している。その内容は、われわれ人間、生活者には「四つの情報源」があって、それを組み合わせて確かさを確保している、といわれている。
濱口: 「生活者」とは・・・? 消費者ということでしょうか。
荒木: われわれのことを「生活者」と表現しているのは、われわれは「消費」するだけではなく、生活をしている。だから、いろいろな調査では「生活者」と表現されているんだ。
「生活者に関する調査」で、おすすめ(調査)が三つある。一つは、(前述の)「メディア定点調査」。
もう一つは、一般財団法人経済広報センター(経団連の関連団体)が行っている「生活者の“企業観”に関する調査」。これは、われわれ生活者は、企業をどう見ていのか、 どの情報発信源を信用しているのか、ということを毎年発表してくれている。
あと一つは、株式会社電通PRコンサルティング(電通グループのPR会社)の中に企業広報戦略研究所というシンクタンクがある。そこが行っている「魅力度ブランディング調査」も生活者に対して 調査している。
この三つは毎年チェックしているね。
濱口: すごく「オタク」っぽいです。
荒木: 2017年の「メディア定点調査」結果を分析したのが、2018年に出版された『広告メディアに関わる人のメディアガイド2018』という本。その分析された(結果)「四つの情報源」って何だと思う?
濱口: 全く分からないです。
荒木: 一つ目は、公の情報。これは、国が発表する情報、マスメディアが報道する内容、大企業が自分たちで発信する情報(大企業は業績や評判に関わるから、うそをつけない)。
二つ目は、みんなの意見。主にインターネット上にある「みんな、どう思っているのか」というような意見。
濱口: われわれみたいな個人の意見もですよね。
荒木: そう、個人も含めて。SNS上では、どんな風になっているのか(どんな意見があるのか)、というようなものも含めて。
三つ目は、専門家の意見。その分野の専門家の解説。
四つ目は、 当事者の見解。体験談みたいなもの。その場にいた(部外者ではなく)当事者の見解。
この四つを情報源として引っ張ってきて、組み合わせて、そこから自分なりに「この情報が正しいだろう」とか「 これは真実だろう」というように分析をしていく。
私は、今でも「人間ってそういう観点や意識でやっているに違いない」と思っている。自分自身の(意識や行動を)振り返ってみても、そうしている気がする。
濱口: 荒木さんの場合は消費者であり、一個人の意見でもあり、専門家としての意見も持っていますよね。
荒木: この話(コロナに関する話)をすると、いろいろな意見があるから(話す内容)が問題(反対意見など)だと思われてしまうかもしれない。コロナ(流行時)は、まさに(濱口さんが前述で話した)そんな立場や観点で情報源(専門家の意見や解説)を引っ張ってきていた。
とくに、ネットでいろいろな大学教授が自分の専門分野(免疫学やウイルスに関する研究など)の情報を発信しているもの。 あとは、行政が発表する内容を情報源としていた。マスメディアの発表や報道、ネット上の意見も聞きつつね。
当事者の見解としては、私は医者の家系だったので、(コロナが広がる前の)医者をしている兄の意見も含めて、いろいろな情報を総合的に判断して、自分の中で「どの情報が正しいのか」を判断していた。当然、偏りはあると思うけど、自分なりに「四つの情報源」から判断していたなと思う。
よく言われているように、「高齢者はマスメディアの情報だけに流されてしまう」ことがあるかもしれない。あるいは、ユーチューブ(視聴者)の場合は、「陰謀論」のような言い方もあるように、そちらに流れる場合もある。だから、なるべく「四つの情報源」から引っ張ってくることが大切だと意識しているね。
濱口: コロナの時は、「何を信じればいいのか分からない」という状況に(自分でも実感するほど)なりましたよ。みんな、言っていることが全然違ったじゃないですか。
荒木: ウイルスの構造は割と早い段階で解明されていたんだよね。「感染って何?(=どういう状態なのか)」とか、「陽性、PCR検査って何?」という情報は多く出ていたので、それを冷静に見ていくと、 あまり(情報に)振り回されずに済んだ。
私が思うに、恐怖が先立つと、何も見えなくなってしまうケースがある。だけど、冷静に見ていくと、「なるほど、そういうことなんだ」というように感じられる。(各専門分野の)大学教授も(ネット上の情報収集では)5人ぐらい、 テレビに出ている人たちの意見も(含めて)聞いたりチェックしたりして、多くの情報を得ていたね。(その中から)「何が正しいのか」を、自分なりに考えて出していた。
直感で「怖い」と思う人もいたり、「平気だ」と思う人もいたり、(感じ方)はさまざまだけどね。
濱口: テレビは、「ワクチンを打ってください」って、めちゃくちゃ言っていたけれど、お医者さんの中には、「打たな くてもいいよ」って、言う人もいました。「打ったら死ぬぞ!」みたいに、極端な人もいましたね。
荒木: 今後、われわれは、「メディアにどう向き合っていくか」ということが重要になる。さっき濱口さんが言ったように、ものすごい量の情報がある。そうなると、われわれが関わっている広報(企業広報)の情報発信も(企業の)需要な役割の一つなので、今後どういう情報を発信したらいいのか、考えていかなきゃいけないね。
濱口: そうですね。
荒木: 私は共通点を見つけることが好きなんだ。だから、「四つの情報源」(企業広報に通ずる共通点)が分かっていると、企業はその四つの情報を(企業なりに)発信していくことで、生活者が判断できる情報をバランス良く発信できる。四つの方向性から発信の仕方を考える必要があるということ。
最近はやっているオウンドメディア、あるいはニュースルームのように、自分たち(企業自ら)のメディアを持てるので、そこで何を発信していくのか、今年はそこに注目しているね。
■ニュースルームとオウンドメディア
荒木: 「オウンドメディア」という言葉、よく聞く(耳にする)?
濱口: 「オウンドメディア」っていう単語は、あんまり聞かないですね。
荒木: コロナ禍からオンライン(Zoomでの交流)が、当たり前になった。それから、いろいろなマッチングサービスで多くの(新しい)人と出会って話をしていると、広報やマーケティング業界の人たちの会話に「オウンドメディア」という言葉が、よく使われている(会話中に出てくる)。
その辺のことも話したいけど、(話すと)長くなるから話せないな・・・。「オウンドメディア」が、どういう流れで 日本に入ってきたのか。そもそも「オウンドメディア」とは何なのか。片や、「ニュースルーム」とは(ニュースルームってなんだろう)? 「オウンドメディア」も「ニュースルーム」も、どちらも、(オウンドメディアを)日本語に直せば「自分たちが所有・運営しているメディア」ということで「オウンドメディア」になってしまうんだよね。
大手を調べてみると、ニュースルームとオウンドメディアの両方をやっている(混在しているケースもある)。
私の(個人的な両方に対する)結論を言うと、「 オウンドメディア」はマーケティング(新規顧客獲得)の一環として流れてきたもの。
「ニュースルーム」は、広報(広報について話をすると長くなるから今回は省略)、いわゆる企業が自分たちの言葉で自分たちのことを発信していく、広報の延長線上にあるもの。
私は、そう(前述のように)考えると、(オウンドメディアも)「 ニュースルーム」という言葉に集約されていくんじゃないか、と個人的には思っている。その方が、正当な流れだし、そこに正当性があるんじゃないかな。
そんなことを考えながら新年を過ごし、なおかつ執筆に追われているんだよね。
濱口: なるほど。
荒木: うれしいことに、今年の4月か5月、3冊目を出版する予定で(執筆作業を)進めているんだ。
濱口: もう間もなくですね。4月、5月は、あっという間ですからね。
荒木: もう、本当にふらふらしながら書いていて、正月もほとんど執筆のこと(どうやったら本質が伝わるか)で頭がいっぱいだった。「分かりやすく、かつ、本質を伝えるには、どうしたらいいのか」ってね。本質を伝えることも、(それが読み手に)伝わることも難しい。
濱口: めちゃくちゃ難しいですよね。これは相手の受け取り方の問題も出てきますしね。
荒木: そうそう、「相手の受け取り方」についても、また(今度)話したいんだよね。
濱口: いろいろ聞きたいですね。今日の放送だけでも、(広報に関する、さまざまな視点の)いろいろなネタが出てきていますよ。
荒木: これから話したいことが、いっぱいある。広報をやる人(携わる人)にとって面白い本(私が紹介したい本)があるからね。広報の本だけじゃなくて、「言葉の問題」とか「情報ってなんだろう?」とか、そういう内容を読んでいくと、だいぶ見方が広がっていく。
(前述の)「どうやったら本質が伝わるんだろう?」ということも、「人によって受け取り方が違う」という話も、「それって、なんでなの?」「どうすればいいの?」という辺りも、今後話していければいいなと思う。
今から話すと時間が足りなくなるからね(放送開始から間もなく20分が経過し尺が不足)。今後も、(雑談の中から)いろいろなテーマをお互いに見つけて、そこから深掘りして、「 やっぱり荒木は単なる『オタク』じゃないか」ということを示していきたいね。
濱口: 単なる「オタク」じゃないですけどね。(今回放送の)最初の質問で「濱口さんは、どこから情報を得ています?」って言われたら、「私は、ここで荒木さんから情報を得ていますよ」という答えになりますね。
荒木: 濱口さんは、ちゃんと私のことをディスらないといけないんだからね。
濱口: そうなんですよ、いろいろな方面から荒木洋二さんは「突っ込んで生きるんだから、しっかりと突っ込んでください」って、ご意見がきているんです。
荒木: 確かに突っ込まれているときの方が、生き生きとしているかもしれない。
濱口: 今年は「荒木さんに突っ込む」ことが私の修行です。
荒木: ぜひ突っ込みどころを見つけてくださいね。 (今回の放送も)あっという間でした。また引き続き頑張っていきましょう。