【ポッドキャスト #05】 買い叩きや下請けイジメなど、弱い立場を苦しめる経営ってどうなの?

昨年の大ヒット映画『ラストマイル』を話題に、物流業界が抱える課題に切り込みます。コンビニやスーパーなどの課題にも触れつつ、「PR=パブリック・リレーションズ」の本質にも、ググっと迫る(?!)勢いでお話ししていきます!

本来のパブリック・リレーションズの在り方とは 下請け企業や業務委託先に過度な負担を強いている現状に警鐘を鳴らす

荒木: おはようございます。

濱口: おはようございます。

荒木: 『広報オタ倶楽部』、今日も元気に始めていきたいと思います。濱口さん、よろしくお願いします。

濱口: よろしくお願いします。朝がまだまだ寒いですね。

荒木: 寒いですね・・・。寒い日が続きます。

濱口: 続きますね。

荒木: 前回の(2025年)最初の放送時に、「2024年は地震で始まりましたね(2025年は、災害がなければいい)」という話をしていたんですが、今年も1月(13日)、宮崎県で地震がありました。

濱口: そうですね。

荒木: 日本は地震大国なんだ、と改めて思いました。

濱口: そうですね。ちょうど(私が住んでいる)鹿児島県も揺れました。震度4でした。

荒木: 震度4は、まあまあ大きいよね。

濱口: そうですね、揺れている時間が長かったですね。

荒木: それは怖い。

濱口: 怖かったですね。

荒木: うちの会社のスタッフ(熊本県在住の子どもを持つ母親)からも、小学生の娘さんが(地震の揺れやアラート音が)怖くて泣いてしまった、という話を聞いた。

濱口: そうですよね・・・。結構揺れましたからね。

荒木: 改めて、日本は地震大国だと実感するね。

濱口: 地震大国ですね。

荒木: 話は変わるけど、濱口さんは映画ってあんまり見ない?

濱口: 映画は、すごく話題になったものは見ますね。

荒木: 昨年、話題になった映画『ラストマイル』(2024年8月23日公開)は見ていない?

濱口: 見ていないです。

荒木: (この映画は)「シェアード・ユニバース」(という手法を使用)といって、TBS系ドラマ『アンナチュラル』や『MIU404』を手掛けた女性チーム、脚本家の野木亜紀子さん・監督の塚原あゆ子さん・プロデューサーの新井順子さんたちが(中心となり)作っている。「シェアード・ユニバース」は、複数の作品が同じ世界観(登場人物も含む)を共有していて、ストーリーが展開される形式のこと。

どんな映画なのかというと、巨大物流(外資大手通販サイト)が倉庫を持っていて、(どこの企業をモデルにしているか予想がつく)その倉庫で起こった事件を追っていくというストーリー。ストーリーの中で(地元の中小企業も含め)いくつかの物流業者たちが荷物を届けている。その物流業者たちが、すごく過酷な労働環境を強いられている話で、その企業のシステム(やり方)は印象深かった。これは映画だけではなく、実際にもよくある話だよね。

濱口: もう今、大問題になっていますもんね。

荒木: (私が目にした)年始の記事で、日本郵便が「ゆうパック」の委託先の配送業者に対して(下請法が禁じる)買い叩き行為(に当たる恐れ)があったとして(公正取引委員会から)行政指導を受けていた(共同通信)。これは結構前に指導されていたのに、結局、改善されなかった。いろいろな物価が上がっているのに、価格に転嫁させないで価格を据え置いたまま。日本郵便の勝手な社内ルールを(委託先に)押し付けて、誠実に対応していなかったという話。

これは(前述の映画)物流業者と同じだよね。日本郵便も物流をやっているわけだからね。

2~3年前に、私は物流会社を自分で立ち上げた社長(30代)に会う機会があった。彼もやはり、「物流の問題」を話していたね。例えば大企業(上場企業含む)は、「働き方改革をしなければいけないから、過酷な労働をさせない」となっている。けれど、(実情は)業務委託先の物流業者は、過酷な労働を強いられている。

日本郵便も、その他の物流業者も含めて、いろいろな業界で同じような現象が起こっている。この現状を聞いて、大手(企業)が利益を出すために、彼ら(業務委託先)が負担を強いられている。ある面、1番発言力も小さい(ほぼない)、弱い立場の人たちが大事にされていない。(下請法などの法律で守っていこうとは、しているけれど)ここを日本は直さないといけないと感じる。

濱口: そうですね。下請け(業務委託先の立場)からすると、「(契約を)切られたらどうしよう」とか、「(他社に)乗り換えられたらどうしよう」と思いますよね。

荒木: (大手企業は)優越的な地位にいるわけだから、以前から「嫌だな、良くないな」と問題意識を持って(この問題を)見ていた。われわれ広報PRの考え方からしても、良くない状況だと感じる。

濱口: めちゃくちゃ良くないですよね。

荒木: 広報PR業界には、これ(業務上の優越的な地位を利用した行い)を改善する役割があるのではないか、と(大げさだけど)思っているんだ。

濱口: 広報PRの根本的な考え方からすると、「それは、よろしくないですよね」となりますもんね。

荒木: 「広報PR」の本来の意味を分からずに、使われるケースが多い。これは、『広報オタ俱楽部』の放送が始まったときから言っていること。

濱口: 多いです。私も誤解していましたね。

荒木: ちょっと繰り返し(の説明)になってしまうけれど、「PR」は、プロモーションでもアピールでもなく、「パブリック・リレーションズ」の略。

「パブリック・リレーションズ」という言葉は、第二次世界大戦が終わった後に、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって、日本の社会・企業にもたらされたといわれている(諸説ある)。「パブリック・リレーションズ」は直訳すると、「公共関係」とか「公衆関係」となる。中国では、「公共関係」とそのまま直訳されている、という話もある。

このことは、(広報について)勉強すると、大体どんな広報書籍にも出てくる(学会などでもいわれている内容)。企業や組織にとって、「公共って何か」ということを、具対的に落とし込んで話すね。

企業を取り巻く関係者、例えば、社員、経営者、顧客(BtoC、BtoBを問わず)、取引先、パートナーなどのことを日本語で「利害関係者」という。(現代は)世界的な分業社会だから、1社で全てを賄うことは、なかなかできない。取引先やパートナーなど、複数社と協力し合いながら物を作ったり、物を運んだりすることで初めて、最終的な自分たちの製品やサービスがクライアントや顧客のもとに届く。

上場企業の場合は、投資家や株主がいる。上場を目指す企業にも株主がいる。他にも、自分たち(自社)が生きている社会(地域社会の住民、行政機関など)も関わってくる。

濱口: うん、分かりやすい。

荒木: これらの利益も損害も影響し合う、共有し合う相手のことを「利害関係者」といって、英語では「ステークホルダー」という。

「ストックホルダー」という株主だけを指す言葉もある。これは、今までの企業社会が、株主の方ばかり見ていたことから「株主至上主義」とか「金融資本主義」といわれていた。資本主義なんだけれど、「金融が第一」という考え方。それがリーマンショックやコロナを経て、「ストックホルダーだけではなく、ステークホルダー全員が大切」「全員を大切にしなければいけない」というように変わってきている。

パブリック・リレーションズも、「ステークホルダーと良好な関係を築きましょう」というのが本来の概念。「いじめ(に当たる行い)や自分たちに(自社にとって)いいように(利益を得るため)、不利益を与えてもいい」なんて一切書いていない。それなのに、実際は株主の方は見ているけれど、下請け業者など(小さな事業者)がこき使われたり、不利益を被ったりしている。企業を人として考えると「それ(その行為)どうなの」と感じる。

濱口: いや、あり得ないですよね。そんな人(企業)とは、絶対に付き合いたくないです。

荒木: このようなことは、日本の組織構造としてどの業界にもあるよね。建設業界だと、ゼネコン(総合建設企業)がいて、一次、二次、三次下請けという構造がある。テレビ業界は、テレビ局がいて、制作会社がある。新聞・雑誌業界では、編集プロダクションがいて、ライターがいる。そういう構造があって、どれも(どの立場・工程を担う人たちも)大切にすべきなのに、小さな事業者が不利益を被ってしまう。その上で、(自社の)利益が上がりました、と決算発表をしても、(企業の在り方として)どうかと思う。

濱口: いや、絶対に駄目ですよ。

荒木: その部分に、(大きな企業:優越的な地位を持つ企業が)ちゃんと向き合って欲しい。それだけではなく、いわゆる下請けといわれる中小企業(最終的に原料を作ったり、製品・サービスなどを届けたりする分野の人たち)自体が、発言権や発言力(コミュニケーション力)を持っていく必要もあると思う。

大きな企業は、それ(中小企業の発言)を待つのではなく、襟を正して、「自分たちは誰かの不利益の下に成り立っているんじゃないか」ということに思いを寄せる。「誰かが不幸になっているのなら、それを改めよう」という思いを持っていくことが大事だと思う。

濱口: よくないですよね。やっぱり他人事だと思っているでしょうし、そこに目を向けていないですよ。きつい思いをさせていることに気付いているのかな、と思います。

荒木: 気付いていると思う。

濱口: 見て見ぬふりをしているってことですね。

大手スーパーが生み出す利益は誰の犠牲の上に成り立っているのか

荒木: (企業名は支障をきたす場合があるため公表を伏せるけど)「安い」で有名なスーパーマーケットの話がある。そこの店は、私の周りの人も、「あのスーパー、いいよね」と言っている。うちの近所にもできて、1回行ったら確かに安くて、いい店だと思った。だけど、私が行ってから1年ぐらい経って、ニュースになっていたんだ。

戦争などの影響もあって、いろいろなコストが上がって、今は全てにおいて値上げが多い。なのに、そこの店は安いまま提供していた。それは、(店側が)納入業者に圧力をかけて価格転嫁をしていないからできたこと。消費者(来店者)に向かっては、「安いですよ」「こんな時でも、うちは変わりませんよ」と、いい顔(言い方はよくないけれど)をしている。だけど、自分たちの企業努力(自社の経費削減など)によるものではなくて、相手先(さまざまな納入業者)に対して、負担を強いて(彼らが苦しんでいるのに)原価を抑えたまま。

濱口: そうですよね。

荒木: この(ニュースに関しては)事実確認を全部できていない(当時のニュース以降、同ニュースに関する情報をつかめていない)から、憶測でしかない。だから、ここで断罪のような言い方はできないけれど、もしそれが本当なら、「安いからいい」と思って買っているけれど、「それが誰かを苦しめている」と考えると、どうなんだろう。

濱口: やっぱり、よくないですよ。私は、(以前、大手企業の)スーパーマーケットに勤めたことがあります。(スーパーマーケット側は)生産者やメーカーに対して、「買い叩きはしていない。痛み分けをしている」というようなことを言うんです。けれど、どう見ても、生産者やメーカーを困らせている、というのは(私、個人の意見にはなりますけど)一社員が見ていても分かりました。

荒木: なるほどね。

濱口: 企業(スーパーマーケット)側が、どこ努力をしているのかといったら、企業のコストカットだったので、困っていたのは従業員の私たちでした。企業は何も困っていないよ、と思っていましたね。「痛み分けをしているのは、従業員や生産者、メーカーであって、あなたたち(企業)は何を言っているんですか」って、正直に言うと思っていました。

荒木: 大手だと、そうなってしまう。だから本来、利益も損害も影響し、共有していくステークホルダーだと思っているのなら、みんな同じく上下はない(職業に貴賎なし)。ビジネスは全て、等価交換で行われているものだから、みんなの目線も立場も価値も同じという状況になることが良好な関係。

さらに、その会社のビジョンや理念に共感・共鳴して、社員や取引先も、その一翼を担いたいと思う。顧客も、「こんなにいい会社だから、ここの商品(製品)を買おう(使おう)」という状況まで(顧客の思いを)持っていく。そういう誰も不幸にならない、適正な利益を長期間にわたって与えられる状況を作っていくのが、本来のパブリック・リレーションズが目指す姿。だけど、実際はなかなか、その状況になっていない現状がある。

社員、株主にとってはいいかもしれない。あるいは、同じ大企業同士にとっても、いいかもしれない。だけど、そうじゃない人たち(前述以外のステークホルダー)にしわ寄せがいって、不利益を与えてしまっている。それは良くない。

濱口: 「焼き畑農業」をやっているみたいなものです。

荒木: 確かにそうだね。本来は、それらに問題意識を持って取り組んでいくのが、広報とかPR業界の役割だと思う。

濱口: 全く、その通りですね。

荒木: 今は、発信力のある新しいメディアが生まれているし、日本には業界ごとに業界紙(特定の業界関係者を対象にした紙媒体)がある。(業界紙は)各業界内でよく知られ、とても発信力がある媒体。本来はマスメディアがもっともっと、小さな事業者たちの声を拾って、届けていくべきなんだろうけど(中には、徹底的に追いかけているジャーナリストがいるかもしれないけれど)、なかなかできていない。

濱口: 表に出てくるそういうの(小さな事業者たちの声)は、少ないですもんね。

荒木: 本来、その小さな声や弱き人の痛みを拾ってきて、それを国民に知らせていくことが、マスメディアの役割なんだと思う。大企業自身が、自分たちの(組織・事業の)先には誰がいるのか、ということを想像していく必要がある。

24時間営業のコンビニ業界が抱える構造的な課題とは

これから話す内容は、次回でもいいけれど、簡単に触れるね。例えば、コンビニエンスストアも本部があって、フランチャイズチェーンがある。10年前くらいは、フランチャイズチェーンが24時間営業を強いられていた(今は改善されてきている)。

あるいは、(コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンで)ワンオペ(ワンオペレーション:全ての作業を一人でこなさなくてはならない状況)の問題があった。夜中(深夜営業時間帯)に学生が一人で(店舗営業を)回さなければいけない状況の中で、(本当は店を閉めてはいけないのに)店を(一時的に)閉めていたこと。他に、店のレジのお金を自分の口座に入れたこと。それら(学生の行動)が問題視されて、司法書士と結託して店長から訴えられた。

(前述の事件)ふたを開けてみると、その学生はワンオペしているから、夜中に納入されたものを並べる(陳列の)ために、いったん店を閉めていた(閉めないと陳列できないため)。(店のお金を学生の口座に入れたことは)お釣りを(店長が)準備してくれていないから、自分の口座を使って両替(2万円を9000円ずつ2回に分け、さらに別途2000円を引き出し、計3回の両替手続き)をしていた。だから、そのことは悪いわけじゃないし、原因は別にある。

その後、24時間営業をやめることができないフランチャイズオーナーが、苦しみ(葛藤のような思い)を多く抱えていることが、だいぶん分かってくる(情報が表に出る)ようになった。

当時は、どのコンビニでも、「利益がこんなに出ました」と決算発表を(堂々と誇らしげに)していた。それは誰かの犠牲の上に成り立っている。だから、誰を見て仕事をしているんだろう、と感じる。全てのステークホルダーを大切にしていくには、痛みを感じるときは同じように感じて、利益が出たときには適切に分配していく。そうならないと良くないと思う。

濱口: バーンと「利益が出ました!」と、利益のことだけ言われたら、苦労しているフランチャイズオーナーたちは、やるせない気持ちになるだろうな、と想像できますもんね。

荒木: (その思いは)想像できる、本当にやるせないと思う。だから、そこはもっともっと改善されたらいいなと思う。このコンビニエンスストアの問題は、割とダイヤモンド・オンライン(出版社、ダイヤモンド社が提供するビジネス情報サイト)の記者(ジャーナリスト)が、ずっと追いかけて、業界全体の構造的な問題を指摘していた。やっぱり、弱い(立場の)人たちにまで不利益が流れていく状況は、変えていく必要があると思う。

これらのことは、パブリック・リレーションズができていない、ということだね。(優越的な地位から)偉そうに締め付けることはよくないし、それは(組織を取り巻く関係者と)良好な関係を築けていないということ。

濱口: どの業界も、問題だらけですね。

荒木: これから徐々に大きく変わっていく(分水嶺のように)変わり目にきていると思う。この問題については(私が気になった時に)この『広報オタ倶楽部』でまた話していきたいね。

濱口: いいテーマですね。めちゃくちゃ大事です。

荒木: もっと発信力持って、しっかりと追いかけていければいいなと思う。

濱口: 伝えていきたいですね。

荒木: 今回は「ステークホルダーを大切にしましょう」という話でした。

濱口: 大切にしましょう!

荒木: 「誰かに負担を強いて、不利益を押し付けて、利益を出すのはやめましょう!」という話でもありましたね。

濱口: うん、素晴らしい。

荒木: 朝から(聞くには)少し重い話でしたが、また来週も頑張って、濱口さんといろいろなテーマで発信していきたいと思います。

濱口: われわれのステークホルダーの関係は良好ですからね。

荒木: 良好だね。何も強いていないからね。もし、何かあったら言ってください。

濱口: ありがとうございます。荒木さんも言ってくださいませ。

荒木: はい、分かりました。では、今日もありがとうございました。

濱口: ありがとうございます。

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