初級講座 Ⅰ.理論・基礎知識「経営資源とは」

こんにちは。荒木洋二です。

前回までは「そもそも企業·組織とは」について解説してきました。今回からは、次の「そもそも広報PRとは」を解説していきます。

そもそも企業·組織とは何なのか。ここでもう一度整理しましょう。

あらゆる企業·組織は社会を構成する主体です。社会の存続があってこそ、成り立つ存在です。社会の存続が前提となっています。

企業·組織を取り巻く、利益や損害を共有し合う、影響し合う関係者を利害関係者といいます。企業·組織は、利害関係者と共に価値を生み出すことで存続できます。彼らと価値を共に生み出す仲間となる。そうなることでお互いに存続することができる、ということです。

そのような存在である企業·組織において、そもそも広報PRとは何なのか。何を目的に行うのか。さらに経営においてどんな役割や機能を担っているのか。これらのことについて、これから一つ一つ解説を進めていきます。

まず、「そもそも広報PRとは」の講座の全体の流れ、目次について説明します。

最初に、「経営資源」ということについて解説します。広報PRと深い関係がある言葉ですので最初に説明します。その上で次に「広報PRって何のためにするの?」「そもそも何なの?」ということについて話します。

重要なポイントとして前回の講座でも話したように、企業·組織は利害関係者から選ばれ続けることによってしか存続できません。では、「選ばれ続けるにはどうしたらいいのか」ということをひも解いていきます。

そして最後に「経営における基礎体力作り」ということで結論を述べます。

今回の講座では、1番目の「経営資源とは?」について解説します。

一般的に経営資源といった場合、四つの要素で構成されるといわれています。それが「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」です。おそらく何度か耳にしたことがあると思います。最近では、「知的財産」と「時間」を加えて六つともいわれていますが、ここでは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」ということにします。

経営資源とは価値を生み出す源泉です。その大事な要素が、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の四つなのです。一つ一つをしっかりと確認していきましょう。

「ヒト」といった場合、当然人間のことですから、その企業·組織に関わる、経営者·代表者や社員·スタッフのことをさします。彼らは企業·組織の最も身近な利害関係者です。

次に「モノ」という場合、これは主に製造業を想定して使われる言葉です。「モノ」を生み出すためには、それに関わる取引先が必要です。例えば、原材料や部品の調達先、つまり供給網(サプライチェーン)が欠かせません。あるいは装置産業の場合、資金投資して整備する設備も必要です。

「モノ」、つまり製品を販売するには販売しなければなりませんから、販売に携わる取引先も必要です。例えば、消費財の場合は、物流を含む卸し売りや運輸、小売りなどの販売網も必要です。

確かに「モノ」は経営資源ですが、「モノ」を作るためには、製造に携わる取引先が欠かせません。取引先なくして「ものづくり」は成り立ちません。供給網や販売網などの利害関係者よって初めて成り立つものです。

次に、「カネ」という経営資源です。

例えば、資金調達です。これは株主、投資家から資金調達して設備資金や運転資金に充てることがあります。あるいは金融機関から借り入れをして、設備資金や運転資金に充てることもあります。

そもそもの売上高、利益はどこから来るかというと、顧客がその製品を購入してくれるからこそ、売り上げがたつわけです。そこで利益も生まれて、自己資金が貯まるわけです。

ということは、重要な経営資源である「カネ」、これも株主や金融機関、顧客という利害関係者との関係があって、彼らがいて初めて生み出される資源であるということが分かります。

「情報」はどうでしょうか。

マクロもミクロも含めたさまざまな経済動向があります。環境も変化します。その動向や変化のなかで企業も組織も生きているわけです。

そこで価値を提供し続けるためには、自分たちが存在している社会、関係している経済に関する情報をすばやくキャッチしなければなりません。それら情報の多くが報道機関、いわゆるメディアによってもたらされています。

あるいは社会全体の動向はどうでしょうか。官公庁などの公共機関や民間調査会社が、さまざまな調査を行っています。これらの「情報」もやはり、利害関係者からもたらされている、といえます。

こうして一つ一つ丁寧に確認していくと、明らかになることがあります。経営資源とは、つまり価値を生み出す源泉は何かというと、実は利害関係者であるということです。利害関係者が、(企業·組織と)共に価値を生み出しているのです。

ですので、経営資源自体、ヒト·モノ·カネ·情報、これら全ては、利害関係者がいて、はじめて企業·組織の中に資源として残るものなのです。重要なので繰り返しますが、利害関係者こそが実は経営資源であるということです。

最近の報道を見てみますと、よく「マルチステークホルダー主義」ということが注目されています。つまり「ストックホルダー=株主」だけでなくて、利害関係者、「マルチ=全ての利害関係者」が重要なのである、という報道です。

企業に関して、最近はこんな報道もあります。企業価値といった場合、普段は決算書の中で数字で見ていきますが、決算書の数字に現れない、目に見えない資産が企業価値の大半を占めている、という報道です。このことを無形資産、あるいは無形資本といい、(企業社会で)非常に注目を浴びています。

目に見えない資産、無形資本のつながりでいうと、「知的資本」という呼び方もします。「インテレクチャル·キャピタル」ということです。

知的資本は、人的資本、組織資本、関係資本の三つで構成されています。これが目に見えない、無形の資本です。

経済産業省では、人的資産、組織資産、関係資産といい、これらを無形資産あるいは知的資産としています。

人的資本とは、組織に属する個々人にひも付いている知識や能力のことです。「暗黙知」ともいわれます。個々人とは誰かというと、経営者もそうです、優秀な社員たちもそうです。

組織資本とは、組織自体が有する仕組みやシステム、あるいは「知的財産」といわれる特許などのことです。これを組織資本といいます。

関係資本とは、顧客、取引先などの関係先のことです。どれほどの顧客を抱えているのか。どういう取引先と関係を持っているのか。これを関係資本といいます。

これら三つの資本が目に見えない資本、無形資本、知的資本です。無形資本によって価値が生み出されるということです。

さらに経営学の最前線では、「社会関係資本=ソーシャルキャピタル」といい、信頼·ネットワーク·互恵関係が重要だということが注目されています。

今まで確認してきたとおり、無形資本もすなわち利害関係者であるが明らかになりました。

もう一度、今回の講座を最後に振り返ります。

·経営資源とは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4要素のことをいう
·「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」は全て利害関係者から生み出される

ということは、つまり

·利害関係者こそ経営資源である
·利害関係者こそ無形資本である

利害関係者は、企業·組織にとって価値を生み出す重要な資源であり、資本であるということです。

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