初級講座「Ⅲ.実務能力編」 ファクトブックの作り方 4.ファクトブックの各項目の作り方  ②第2部 どんな事業を営んでいるのか?

こんにちは、荒木洋二です。

今回も「4.ファクトブックを構成する各項目の作り方」について説明します。前回は「①第1部 どんな会社なのか?」を解説しました。

今回は「②第2部 どんな事業を営んでいるのか?」を詳説します。

端的にいえば、事業の成り立ちや実態を伝える項目です。第1部同様にこの第2部も五つのパートで構成されています。次のスライドに記載のとおりです。

一つ一つ説明していきます。

1)どんな製品・サービスを扱っているのか?

ここでは会社・組織が営んでいる事業の領域を明らかにします。経済社会全体、業界全体の中でどんな領域でどんな事業を営んでいるのか、ということです。

加えて、扱っている製品・サービスの分類です。どんな製品群、サービス体系なのか。さらに各製品の仕様、各サービスの機能を一つ一つ分かりやすく説明します。分かりやすくするために文章だけでなく、写真・グラフ・図表・図像などを活用します。

2)どんな価値(便益・体験など)を提供しているのか?

営んでいる事業、製品・サービスが自社を取り巻く関係者、顧客に対してどんな価値を提供しているのか、ということを説明します。価値とは、すなわちどんな便益を、あるいはどんな体験を提供しているのか。そういうことです。

これを明らかにするために、まず、競争優位の源泉(コア・コンピタンス)を示す必要があります。どんな価値を持っているのか。最も際立つ、最も核となる点を解説します。

そのために競合比較は有効です。マトリックスを用いて、例えば性能とシェアを縦横の軸として定めます。競合他社とどう違うのか、どこが一致しているのかを分かりやすく示します。

なおかつ自社特有の技術があるのであれば、さまざまなエビデンス(科学的根拠)、研究成果を明示しながら解説します。

3)どのようにして価値を生み出しているのか?

次に提供している価値、その価値をどうやって生み出しているのかを解説します。経営資源とはヒト、モノ、カネ、情報の四つといわれています。

価値を生み出すには、そこに必ず「人」が関わっているということです。社員教育もその一環です。正社員であれば新入社員から始まり、中堅社員、幹部候補、役員研修に至るまで、一体どんな教育を施し、どうやって人を育成し、どうやってキャリア形成を行っているのか。技術者がいるのであれば、どんなプログラムで技術教育をしているのか。このような能力開発や組織開発の取り組みを一覧表示などで説明します。

次にモノ、製品を作るためには設備投資は欠かせません。どんな設備投資を行っているのか。どんな設備(機械・工場)があるのか。あるいはサービスを生み出すためにどんな投資を行っているのか。

そして、全体を俯瞰し、どのように価値を生み出しているのかという仕組み、つまり価値創造のメカニズムをしっかりと図像や写真などを交えて解説します。

4)どんな企業や組織と関わっているのか?

さらにその価値を生み出すに当たり、どんな企業や組織と関わっているのか。価値創造のメカニズムを成立させている各プレイヤーのことを、ここでしっかりと説明します。

製造業で言えば、どんな供給網(サプライチェーン)があるのか。原材料や部品、生産設備に関わる取引先について記載します。販売網、つまり卸だったり物流だったり小売りだったり、さまざまな企業と取引しているでしょう。

一つの製品なりサービスなりを顧客に届けるまでに、どんな価値の連鎖(バリューチェーン)があるのか。これらを明示します。

提携会社やパートナーがいるのであれば、これらも明記します。取引先を属性別に分類するなど工夫が必要です。

5)どんな顧客がいるのか?

最後はどんな顧客がいるのかを説明します。顧客の購買や利用が、売上高や利益に直結します。価値に対して最終的に対価を支払っているのは顧客です。

その顧客の全体像について示しましょう。どんな顧客がいるのか理解できるように適切に分類します。

例えば、BtoBであれば、売上高別、従業員数別、シェア別、地域別などです。

BtoCであれば、男女、年代、地域などが挙げられます。

要は顧客の全体像が分かるようにさまざまな属性で分類し、全体像を明らかにしていく、ということです。

加えて、代表的な顧客の声を掲載したり、顧客満足度調査の結果を掲載したりしてもいいでしょう。

今後、「ニュースレターの作り方」の講座で詳しく説明しますが、顧客を取材して、インタビュー記事にまとめます。このようなインタビュー記事を発信することは、自社の魅力を伝えるために決定的に重要な広報活動です。魅力の宝庫である「舞台裏」を見える化するのです。その一部を抜粋して掲載するということです。

顧客満足度調査だけでなく、お客さま相談室などに寄せられたクレーム件数などを掲載してもいいかもしれません。真摯に向き合う姿勢が伝わるからです。

以上、「②第2部 どんな事業を営んでいるのか?」を構成する五つの項目について解説しました。 次回は「4.ファクトブックを構成する各項目の作り方」の最後「③第3部 どんな環境で生きているのか?」を解説します。

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