初級講座 Ⅰ.理論・基礎知識 広報PRって何をするの? 伝わるをひもとく(3)
こんにちは、荒木洋二です。
「広報PRって何をするの?」は四つの項目に分けて解説を進めています。今回は、全体の4項目中の2番目、「伝わるをひもとく」に関する解説の3回目です。3回にわたる解説の最後となります。
繰り返しになりますが、利害関係者と信頼関係を築くためには組織としてのコミュニケーション活動が大切です。その信頼関係こそが経営における基礎体力、最も重要な土台となっています。組織としてのコミュニケーションに焦点を当て、今まで2回にわたり、どうすれば伝わるのかについて説明してきました。
要点は次の二つです。
(1)どうすれば(利害関係者にその組織の価値が)伝わるのか。
(2)何が伝わる(と信頼関係は結ばれるの)か
前回まで2回にわり、「(1)どうすれば伝わるのか」について解説しました。今回は「(2)何が伝わるのか」というテーマに関して解説します。
(2)何が「伝わる」のか
まず、広報と広告の役割の違いを明らかにします。いずれも同じ「伝える」という行動でも広報と広告では目的が異なります。当講座は広報PRの講座ですから、その違いを示しながら広報が担う領域を明らかにします。
・広告の主目的は認知の獲得
では、広告から見ていきましょう。広告の主な目的は認知の獲得です。以前の講座で説明したように、購買決定のプロセスとして次の二つがあります。
・AIDMA(アイドマ)
・AISAS(アイサス) ※広告代理店の電通が提唱
二つに共通する最初の 「A」は 「Attention」の「A」です。注意を引くということです。つまり、認知での獲得です。
では、広告では利害関係者に何を伝えるのでしょうか。広告業務に携わったことがある人であれば、理解してると思います。伝える内容は「事実」とは限りません。タレントを使って、実在の人物ではなく演出された内容であることがほとんどです。最近は、広告でも事実、つまり実際に働く人などを登場させることも増えました。しかし、そもそもは「事実」ではなく、「印象」が伝わればいいのです。いかに視聴者・読者に印象付けられるか、そこではインパクトが問われます。
イメージ戦略です。ですから、広告では「印象」が相手に伝わるのです。視覚情報、デザインを広告は非常に重視します。もちろんコピーライティングも重視しますが、より視覚情報を重視します。
次に広告をメディアという視点で見ていきましょう。広告は主にマスメディアを通して情報を伝えます。企業・組織と利害関係者との間にメディアが入っています。メディアが媒介しています。間にメディアを介しての関係なので直接的な関係を結んでいません。大半は未来の利害関係者です。もちろんメディアを介して情報を受け取る対象には既に関係を結んでいる利害関係者もいるでしょう。しかし、そもそも対象が不特定多数ですから、ほとんどがまだ関係を結べていません。会ったことがない人が大半でしょう。ですからメディアを介して間接的に伝えているのです。そういう意味では交通広告や施設内で掲示されている広告、DM、チラシ、メール広告、インターネット広告も間接的に伝えています。お互いに直接は知りませんので、間接的に伝えるというのが広告の特徴です。
・広報の主な目的は信頼の獲得
広告は印象を伝えますが、では広報は何を伝えるのでしょうか。伝える内容は「事実」のみです。事実に限定されます。事実だからこそ価値が伝わります。そして、どちらかというと視覚情報よりも文章を基本としているという特徴があります。広告と同じようにメディア、媒体という視点で見てみましょう。
広報は自ら伝えるのです。メディアを通して伝えるのではなく、自分で直接伝えます。まずは報道関係者に自分たちの言葉で伝えます。たとえ報道されなかったとしても、自ら伝えるのです。組織における事実と魅力を「広報基本4媒体」によって伝えていくのが、広報なんです。
つまり「何が伝わるのか」というと、印象が伝わることも確かに重要です。しかし、もっと重要なことは事実と魅力、そして価値が伝わることです。その価値が伝わるからこそ利害関係者と良好な関係を、共感に基づく信頼関係を築くことができます。価値を共に創造する仲間になってもらえます。そうやって経営における基礎体力を強化できるのです。
広報、パブリック・リレーションズがコミュニケーション活動の土台・基礎なのです。その土台の上に全ての施策を組み合わせることで、各施策の効果を最大化できるのです。
広報をしっかり地道に実行し続けた上で広告も実施しましょう。もちろん営業も販売促進も推進しましょう。セミナーもどんどん開催しましょう。展示会にもどんどん出展しましょう。相談窓口を設けましょう。社員、求職者、顧客に対して、取引先、株主・投資家に対してさまざまな施策を打っていきましょう。ただ、それは広報が土台・基礎にあって、初めてその一つずつの施策が実ってくるのです。広報が土台にあって、初めてが生かされていくということを忘れてはなりません。
最後に今回の講座をもう一度振り返り、まとめましょう。
・広報と広告の役割の違いを知りましょう
なぜか
・広報が担う領域を明らかにするためです
・広報の主な目的は信頼の獲得です
・伝える内容は事実に限られます
そして、事実に基づくことを伝えるからこそ価値が伝わります。
・価値が伝わることが重要です
そこから信頼や共感が生まれます。大事なのは誰かを通じてだけでなく、ベースになるのは
・自ら伝える、直接自分の言葉で伝えることです
そして、
・組織における事実(価値)と魅力を「広報基本4媒体」によって伝えます
「広報基本4媒体」については次の講座で詳しく説明します。
そして、
・広報を土台・基礎に全ての施策を組み合わせます
そうすることで、それぞれが最大の効果を発揮できます。