Weekly Essay SNSの役割と広報

先週土曜日、『Yahoo!ニュース』のある記事が目にとまりました。『ENCOUNT』(エンカウント)という総合ニュースサイトによる記事でした。同記事では、22歳の医大生が経営する株式会社メディアエイドがSNS(交流サイト)を活用した採用サービスを始めたことや、そのサービス内容を紹介していました。

どんなサービスかというと、「企業がSNSを通して自社の本質的な価値を発信することを可能に」することを目指しています。そうすることで「ミスマッチのない採用を支援する」といいます。
どうしてもSNSというと、今までは「バズる」ことばかりが注目され、企業の活用方法としてはマーケティングの一環、商品を販売するためのツール(道具)という位置付けが大半だった印象があります。しかし、今回のサービスは、広告主導で成り立つ採用市場の課題を解決しようと立ち上げたものです。メディアエイドの九島社長によると、米国は求人媒体に頼らない、間に業者が入らない、SNSによる自社採用が浸透しているとしています。九島社長は、日本においてSNSによる自社採用を一般化することを目標にしています。つまり採用広報を支援するサービスというわけです。ある一定の時間はかかるとしながらも、SNSを活用した採用広報を外注ではなく、内製化させる、SNS採用の担当が一人いることが当たり前の状態を目指すとしています。

情報発信において、常に念頭に置き、忘れてはいけないことがあります。誰に何をどうやって伝えるのか、何のために伝えるのか、ということです。SNSは「どうやって」という手段に過ぎません。日本の企業社会では、目新しいツールとの認識だけで、思考停止のままSNSに飛びついてしまう傾向が強いのではないでしょうか。

本来、広報とは「PR=パブリック・リレーションズ」の訳です。その意味するところは何か。いかにステークホルダー、つまり企業を取り巻く関係者と良好な関係、信頼関係を築けるのかが主題です。相互に信頼関係を築くためにはコミュニケーションが欠かせまん。SNSは単なる情報発信の手段ではなく、双方向のコミュニケーション、つまり交流を可能にする場を提供しています。パブリック・リレーションズを推進できる場だということです。

今回、九島社長はステークホルダーの中で求職者を対象に、採用を目的にしたサービスを提供し始めました。それは企業の本質的な価値を伝えるためにです。何のために、誰に何をどうやって伝えるのかを明確にしています。実際に九島社長は現在の社員を全てSNSで採用しています。直接コミュニケーションを繰り返しながら、双方納得の上で採用に至っていますので、当然離職率は下がります。

技術の進歩とともに今後も新しいSNSが生まれるでしょう。そろそろ私たちは、流行に振り回されるのではなく本質を見据えて、広報に取り組んでいくべき時を迎えているのかもしれません。


2月27日(月) 荒木洋二のPRコラム
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