【ポッドキャスト #28】広まるか? ネットラジオによる「声の社内報」
社長の思いや創業ストーリーは社員に伝わっていますか。社員のこだわりや熱い思いを発信していますか。広報とは背伸びしない、等身大の情報を発信すること。
その表現手段の一つが「声」。映像ではなく、「声」だからこそ情報が削ぎ落とされ、人々の心に刺さるものです。「声の社内報」の可能性を探ります。
ネットの普及で脚光を浴びるネットラジオ
「声」から始める広報とは?
荒木洋二 : 皆さん、おはようございます。
濱口ちあき : おはようございます。
荒木 : 7月3日木曜日、今日も元気に『広報オタ倶楽部』を始めてまいりたいと思います。『広報オタ倶楽部』は、本来の企業広報の在り方を広めるべく、28年以上にわたって企業広報活動を支援してきた荒木洋二による、オタク目線で語る広報の哲学ラジオです。
聞き手は・・・
濱口 : 「まな弟子」の濱口ちあきです。
荒木 : はい、「まな弟子」です。
濱口 : ありがとうございます、毎週、毎週。
荒木 : もう早いもので、先週にも言いましたけど、あっという間に2025年も半分が過ぎ去って、7月になりました。
濱口 : なりましたね。暑いですね。
荒木 : 暑いです。もう私はとうとう2日前に還暦を迎えました。
濱口 : おめでとうございます!
荒木 : ありがとうございます。
濱口 : 「赤いちゃんちゃんこ」の年になりましたね。
荒木 : そうですね。赤いスーツを着ようかなと思ったんですけどね。
濱口 : 赤いスーツとはまた、荒木さん似合わないですね。そんな人じゃない、荒木さん、そんなチープな人じゃない。
荒木 : いや、でもね、8月8日に、六本木のマハラジャというクラブを貸し切って、僕ともう1人の還暦パーティーを企画してくれている人がいるんだ。いつも『広報オタ倶楽部』のオープニングの時にかかる音楽を歌っている、ラッパーのGANMAくんが、「荒木さんは、赤のスーツです」と。
濱口 : いや、「まな弟子」の私は認めません。赤のスーツは似合いません。荒木さん、ダメ。
荒木 : はい、すみません。ちょっと無駄話が多くて。
今までニュースルームの話をしてきました。広報を進めるに当たって、これだけインターネットが広がっていく中で、さまざまな媒体、ツールを使って、自分たちの考えていること、思っていること、あるいは自分たちと関わっている人たちが何を感じているのか、何を思っているのか。
それらをちゃんと言葉にして、残していきましょう。言葉にして、媒体に刻んで伝えていきましょう。という話を今までしてきました。
ニュースルームは大変意味のあるものだと思っている。しかし、それも1つの情報を伝えるツールに過ぎない。そういう意味では、いろいろなものがあってもいいなと思っています。
そういう中で、濱口さん、どうですか。
最近これだけインターネットが広がって、この番組自体もPodcastで音声のみで伝えているじゃないですか。
1つの広報の手段として、(われわれも)このPodcast、このラジオを使っている。こういう取り組みはなかなか面白いな、と思っています。Podcast関係で、今日は話があると聞いていますが、、、。
濱口 : そうですね。Podcast、要はネットラジオですよね。ネットラジオを使って、社長さんのみならず、従業員さんたちも発信をするのはすごくいいのではないかな、と思っていまして。
企業さんに対して「『声の社内報』をしませんか」と、今ご提案を一生懸命させていただいています。
荒木 : 面白いですね、「声の社内報」。
濱口 : すごくうれしいです。
荒木 : いいですね。
発信する内容のキーワードは「もったいない」
濱口 : 私は、元々出身が広報とかPRではなくて、企業コーチングをしていた者なんですよ。
当時は営業も兼ねて、1000人以上の社長さんのインタビューをさせていただいている中で、すごくいい話をしてくれる社長さんが多かったんですよ。
「こんな思いで実は事業やっているんですよね」とか、「過去にこういうことがあって」とか。創業のストーリーだったり、2代目・3代目だったら、「なぜ会社を継いだのか」という話だったりをいろいろ聞く中で、「いい話が多いな」と思っていたんです。
これはたまたま私がお伺いして、インタビューさせていただいたから話してくれただけであって、下手したら社長さんたちは、ホームページにも書いていないし、従業員さんたちにも話していないだろうし、なんなら墓場まで持っていくのはもったいないだろうな、と当時からずっと思っていまして。
それで、「従業員さんたちね、なんか問題あるんだよね」と言っているけれども、「いや、社長のこういう話を聞いたら味方になってくれる人が絶対いるよね」と当時から思っていました。
一方で従業員さんたちに、コーチングのセッションでお話をお伺いする場面も多かったんです。すると、社長に負けないくらい会社のことを思っていて、一緒に働くその社員さんたちのことも思っているかたたちは案外少なくなくって。
荒木 : そうですよね、確かに。
濱口 : そうなんですよ。ただ、それを発信する場がないから、なかなか同じ社内の人が、社長も含めて知らないというのはもったいないな、と当時から実は思っていました。
そうこうしているうちに、荒木さんと知り合って、「実はそういうところが大事なんだよね」と教えてもらって。
まさに、われわれの『広報オタ倶楽部』を編集してくれているリクライブの二宮さんが、そういうことをされているじゃないですか。
彼がとてもセンスがいいし、感性もすばらしいなと思うことが多いので、そのまま言うと、パクらせてもらうという・・・。
荒木 : 確かに、二宮さんは広報に対するセンスがいい。この『広報オタ倶楽部』の説明するときに「広報の哲学ラジオです」と言いますよね。これは二宮さんに「荒木さんの哲学ですね」と言われたのが、そもそものきっかけだった。このラジオを始めるきっかけも二宮さん。
いろいろ(『広報オタ倶楽部』の)編集もお願いしている。彼も別のお客さんで、確か社長と社員が対談してPodcastで流す、ということもやっているので、アイデアが豊富だよね。「面白いな」と思うことを多くやっているので、「リスペクトしてオマージュする」という、「パクる」と言わない(笑)。
濱口 : 昨日も営業させていただいている間に、「面白いですね。これはどうやって思いついたんですか」と言われる。「リクライブさんの二宮さんのところ(のアイデア)をパクらせてもらったんですよね」と言ったら、「それは聞かなかったことにしますね」と言われて、気を使われた。
荒木 : でも今、濱口さんの話を聞いていて、前回も前々回も話したけど、キーワードは「もったいない」だよね。
なんか当たり前だと思っているけれど、「いや、その話、もったいないですよね」と。
「なんで社員に聞かせないんですか」とね。
濱口 : そうですよね。
荒木 : いいですね。
濱口 : そうなんですよ。結構、社員さんたちの声も出していくというのが、割とみそだと思っていて。
私はそれこそ昔、イオングループの子会社のスーパーマーケットで働いていたんですね。毎月、社内報は紙媒体で当時は届いていたんですよ。
荒木 : そうですよね。
社長と社員のたちの雑談に注目
濱口 : 10ページぐらいあったと思うのですけれど、1ページ目に必ず毎月「社長の言葉」を書いていたのですけど、そんなところは誰も読んでいない。
それよりも悲しいかな、同じ店舗で働いている仲間であるとか、同期の人(の内容を)を見ていたので、やはりそれだけ組織が大きくなればなるほど、社長と社員の距離は遠くなっていく。
荒木 : そうですね。うん。
濱口 : だから、ラジオというところで雑談することで、その社長の人となりを聞いてもらうと同時に、社員さんたちも一緒でつくっていくという感覚が、一緒につくっていけるというのは面白いなと思っています。
荒木 : 面白いですね。今、濱口さんが「声の社内報」と言ったじゃないですか。
その表現がいいなと思う。「声の社内報」、いいな、うん。
ラジオ、ネットラジオではあるんだけど、「声の社内報」という言い方が、今話を聞いていて、「このワードめっちゃいいじゃん」と思いましたね。
濱口 : 本当ですか。荒木さんに言われるとちょっとうれしいですね。なかなかこう、ピンと来ない人が多くてですね。
荒木 : 本当にその通りだよね。社長もそうだけど、社長以外の社員でも真剣にやっているし、こだわっていると、その話が面白いじゃないですか。
私の最近の体験を言っていいでしょうか。
私の会社のクライアントさんで、総合印刷会社があるんですね。今、40年ぐらい続く会社で、こちらが(工場見学を)提案した。
昨年、埼玉県川口市にある工場をリニューアルしたんですね。そのリニューアルをきっかけにして、「オープンファクトリー」という名前で、工場見学を企画したんですね。
僕もその工場見学に行ってみたかった。(こちらの提案は報道関係者向けだったが、先方は)「お客さんを呼んでやる」となった。
報道関係者に見せてもいいけど、まず、「では自分たちのお客さんを呼ぼう」と。印刷会社にとってのお客さん、会社のデザイン担当やいろいろな(会社の)広告担当の人たちが、その時には8人ぐらい来ていて、私もそこに参加した。
それで印刷の工程の各責任者が説明してくれるんですよ。「どういうふうにやっているか」「何に使うか」とか。
みんな職人なんですよ。本当に楽しそうに話すし、「この人たち職人だな、プロだ」ということが、話すことを聞くだけで伝わってくる。「このインキとこのインキを混ぜるとね、特殊ナントカになるんですよ」とかね。
とにかく、その工程が5つぐらいあったのだけど、みんながプロ。裁断は裁断でやる人もプロだし、話が面白いなと思ったので、「もうちょっとこの人たちの話聞いてみたいな」と思ったんですよ。
濱口 : そうなりますよね。
荒木 : 参加者も、印刷会社の印刷している現場に来て、担当の話を聞くこともなかったので、満足度が高かった。これはリアルで集まって見学するのが大事なんだ。当然、現場も見ているし、話も聞いて面白かった。そういう意味では、みんな(の会社にも)そういう社員がいるはずなので、それを届ける。そういう意味でいいんじゃないですかね、「声の社内報」。
濱口 : うーん、すごくうれしい。そうなんですよ。だから、一生懸命やっている社長さんほど、社員さんたちはその背中を見ているなというのは、私もインタビューさせていただきながら感じている。
特に採用で、「こういう人来てくれたらいいな」みたいな感じで、「その会社の中の雰囲気を伝えたいです」という声が多い。それでインタビューさせていただくんです。すると、「すごい、いい会社なんですよね」というのを、社長さんよりも社員さんの方が結構、力が案外入るなというのを(感じる)。
荒木 : 熱がこもっているわけね。
濱口 : そうなんですよ。「いや、うちは本当にいい会社で、嫌な会社だったらもっと離職率が多いはずなんですよ」とか、「でも誰も辞めないんですよ」とか。
社員さん(が言う)というのが、少し面白くないですか。
広報における表現手段の1つとしての「声」の可能性
荒木 : いいですね。だからそれって採用にもきっと響くと思うんですよね。
だって本音じゃないですか。もちろん文字も大事なのだけれど、声って本当にリアルじゃないですか。
その人の声でもって熱量が伝わるじゃないですか、文字以上に。うん、それはいい話ですね。
濱口 : そうなんですよ。文字とかだと、私もそれこそ代筆させていただくことってあったんです。すると、どうしても私の主観が入ってしまうので、微妙な言葉の表現だったり、熱を伝えたりってすごく難しい。声だったら、その人が話してくれた言葉がそのまま残るので、「なんか、いいな」と思ってですね。
荒木 : うん、いいですね。広めたいですね、「声の社内報」。
濱口 : もう一生懸命広めていきたいです
荒木 : 二宮さんをリスペクトしているが故に、オマージュしてね。
濱口 : すごい気を遣ってくれている。もう私、「どうやって、やっているんですか。そんなのをやっている人は他にいないですよね」とか、いろいろなところから言われているんですけど、「いや、北海道にあるんですよ。私、そこの会社のをパクらせてもらっているんですよ」と(応えている)。「パクリ女」と自分で言っているんです。
荒木 : 本当に広報は「相手にどう伝えるか」なので、表現する手段と伝達手段があるじゃないですか。
表現は、もちろん映像もあるしラジオも声もあるし、もちろん文字もある。時にはイラストとか、漫画もそうですね。
最近私が知り合った人で、元々はシステムエンジニアで、今、PR動画をイラスト、アニメでやっているクリエイターがいる。自分でアニメもつくっているんですよ。
彼は開発秘話とか創業ストーリーとかをやっている。創業ストーリーだと昔だから、昔のリアルの映像がないじゃないですか。
だから、彼は「アニメは(創業ストーリーなどに)向いてるんじゃないか」と。
あるいは、開発秘話をずっと追いかけていなかったら、それは撮っていないわけだから。過去のことを聞く場合は、アニメがいいんじゃないか。
あるいは、「こんな会社にしたい!」という未来の話だった場合は、アニメが合っているんじゃないか。
それも1つの広報の手段ですよね。
「背伸びしないで、等身大で発信している」という意味においては、同じく広報なので。そういう話があって、漫画やイラストがある中で、「声」もとても重要な表現手段。
伝達するには、「紙がいいのか」「電子媒体がいいのか」とか、いろいろな方法があるんだけれど、1つの表現として「声」で伝えていくというのは、熱量が伝わることを考えると、とてもいい広報の1つの表現手段だなと思いますね。
濱口 : うん、すごくうれしい。
荒木 :だから、すごくそれは共感しますね。
濱口 : うれしいです。ちょっと声だと、「動画と何が違うんですか」とよく言われる時に、動画は長くて10分かなと思っているんです。でも声だと、このラジオも20分ぐらいありますし、割と20〜30分流し聞きで聞いてくれるというのもある。
私はそれ以上に、いい意味で顔とかが出ない点が、「いいな」と思っている。
荒木 : なるほど。
濱口 : もう、見た目はその好みってだいぶ・・・
荒木 : ありますね。
濱口 : あるじゃないですか。ではなくて声だけだと、なんか勝手に「この人はどういう顔だろう」みたいな想像をしちゃうし。余分な情報が入ってこないというのは、こんなに聞きやすいんだっていうことを・・・。
荒木 : 確かに、音に特化しているからね。
濱口 : そうなんですよ。
荒木 : うん、それはあるかもしれない。確かに、映像だといい意味で情報量が多いけれど、悪く言えば多すぎてしまったりとか。
他のものに気を取られてしまう気もする。これ(=声)はもう、耳で聞くしかないから。五感のひとつの耳・聴覚のみに頼って情報を得るわけだから、いいよね、確かに。
濱口 : そうなんですよ。その人の人となりが強く出るな、と思う。
「声を聞けば、その人の歩んできた人生が分かる」
荒木 : これは、「前回の僕の話をちゃんと聞いてくれていたのかな」と濱口さんに対して思うね。2回連続でお話をした「No No Girls」というちゃんみなの(プロジェクト)ね。ちゃんみなも、「身長も体重も年齢も要りません。あなたの声と人生を聞かせてください」と呼びかけた。「声を聞けば、その人の歩んできた人生が分かる」という。
本当に「声」にはその人の人生が現れたりとかするんじゃないですか。
濱口 : はい。
荒木 : 「声」で思い出したんだけど、これまた1週間ぐらい前に、ある人と久しぶりに再会して、その人が少し携わっている事業の話を聞いた時に、メンタルヘルスのアプリみたいなものがあった。どうするかというと、毎朝「おはようございます」とか「ありがとうございます」と、この「声」でその人のメンタルの調子が分かると言っていたんだよね。
濱口 : 面白い。
荒木 : そういう意味では、「声」にはいろいろなものがあるね。
濱口 : いいですね。
荒木 : 半年後ぐらいには、この番組で「声の社内報」を「こんなのがあるんですよ」と流してみたいね。
濱口 : いいですね。
荒木 : コラボのようなことをやってみても面白いかもしれない。その(声の社内報の)発想はなかなかないけど、案外そこに特化して広報をそこから取り組んでもらう、というのはいいのかなと思いますね。
濱口 : そうですね。これも二宮さん情報、全部が二宮さん情報なんですけど(笑)、毎週その会社の人とか社長さんたちと、基本は雑談していく。そうしたらすごく仲良くなるので、そこからいろいろないい情報や、その施策が広がっていくというのもお伺いしている。実際に私もやらせてもらって、「それはその通りだな」と感じていますね。
荒木 : 確かに。本当にいいなと思いますね。この「声」の出るコミュニケーションはとてもいいなと思うし、やっぱりラジオはインターネット時代になって、逆に見直されているというのはよく言われる話。なかなか楽しそうですね、「声」。
濱口 : 楽しいし、あと、誰であったかはちょっと忘れちゃったんですけど、もう今亡くなった歴史上の有名なトランペット奏者だったと思うんですけど、「どんな楽器を用いても人の声にはかなわない」という言葉を残しているらしいんですよ。
荒木 : いいですね。
濱口 : そうなんですよ。彼は「歌声」という意味でこの言葉は残したとは思うんです。でも人の「声」がその人に影響する力はすごいんだろうな、というのは思っている。
荒木 : うん、いいですね、「声」。僕も「広報を当たり前にしたいな」と思っているんだけれど、あまり難しいことを言って「あれもこれもやりましょう」というのは、難しくて無理なんだよね。
そういう意味では、「まずは、『声の社内報』から始めてみませんか」、それで実感する中で、「では、これを外の人にも聞いてもらいましょう」とかね。
「では、お客さんと話してみたらどうですか」とか、そういう方法でね。そうすると、映像ほど手間がかからないし、文章ほども手間がかからないから。
うん、「声の社内報」を広げていくことは、広報を広げていくことにおいて、とてもいいんじゃないかなと思いますね。
1カ月1回か2カ月に1回は「濱口回」をつくらないとね。いや、面白い。
濱口 : そんな、荒木さんほどネタないですよ。
荒木 : いや、今回の話がすごく面白かったので、ぜひ、この「声の社内報」については、また何かいろいろな事例が出てきたら、この『広報オタ倶楽部』でも紹介したいなと思っています。引き続きぜひ進めてください。
濱口 : ありがとうございます。
荒木 : はい、ちょうどいい時間になりましたね。皆さん、もうあっという間に半年が過ぎ去って、もう7月に入って暑い日が続きますが、頑張って元気に仕事をしていきましょう。今日も皆さん、ありがとうございました。
いってらっしゃい。
濱口 : はい、いってらっしゃい。

