第1回 「それは、『企業の人格』」は、どこから生まれたのか

「それは、『企業の人格』」は、どこから生まれたのか
経営理念 全4回連載 第1回
| 株式会社AGENCY ONEは、創業20周年を機に企業理念を再構築しました。本連載では、新しい理念に込めた意味を、4回に分けて記します。第1回は、創業後間もない時期に生まれた「それは、『企業の人格』」という言葉の原点を振り返ります。 |
問いから始まった理念
「それは、『企業の人格』」。
これが、当社が長く掲げてきた企業理念です。
「それは」という言葉は、飾りとして付けたものではありません。広報とは何か。パブリック・リレーションズとは何か。企業が社会と関係を築くとは、どういうことなのか。その問いに対する答えとして、「それは」と続けました。
創業後間もない時期、私は相棒と何度も対話を重ねました。互いの性格も経験も考え方も異なります。
私と相棒には、それぞれに積み重ねてきた経験がありました。その経験を背景に、営業の場で広報について語り、相手の反応を体感しながら、広報の本質を確かめようとしていました。
広報を情報発信の技術として捉えるだけでは、そこで得ていた手応えを説明し切れなかったのです。
対話を重ねる中で、企業も一つの人格として社会から見られているのではないか、という考えが立ち上がりました。
企業の人格は、どう育ち、どう理解されるのか
人は、言葉だけで信頼されるわけではありません。何を大切にし、どのように判断し、周囲の人にどう向き合い、どのような行動を積み重ねてきたのか。その全体を通して、一人の人間として受け止められます。
企業も同じです。製品やサービス、広告や報道だけで評価されるのではありません。社員への向き合い方、顧客への応答、取引先との関係、問題が起きた際の判断、社会に対する姿勢。そうした一つ一つの積み重ねが、企業への理解を形づくります。
私たちは、その全体を「企業の人格」と呼びました。
企業の人格には、二つの視点があります。
企業自身の側から見れば、良心を基準に判断し、価値を生み出し、関係する人々に応答する中で育てていくものです。
関係する人々の側から見れば、その判断と行動の積み重ねに触れ、その企業が何を大切にする存在なのかを理解していくものです。
企業の人格は、企業が自ら名乗れば成立するものではありません。企業が育てようとするものと、関係する人々が理解するもの。その両方が関係の中で重なることで、企業の人格は社会的に形成されていきます。
「みる、きく、かんがえる、はなす」
「企業の人格」という言葉と同じ頃に、「みる、きく、かんがえる、はなす」という表現も生まれました。
四つの言葉を平仮名にしたのは、広報を専門家だけのものにせず、子どもにも分かる、人としての基本的な営みとして伝えたかったからです。
企業を一人の人間に置き換えて考えれば、社会との関係を築く営みは分かりやすくなります。相手をみる。声をきく。自らかんがえる。そして、自分の言葉ではなす。
ただ発信するだけでは、関係は育ちません。相手の状況や状態を知ろうとし、自ら考え、必要な応答を返す。その循環があって初めて、企業は社会の中で人格ある主体として立つことができます。
この考えは、当社の広報支援の土台になりました。報道関係者への情報提供から、ニュースレター、社内報、顧客事例、ニュースルームへと実践の領域が広がっても、中心にある問いは変わっていません。
原点を、次の20年へ
創業20周年を機に、当社は企業理念を「良心を基準に、企業の人格を育て、信頼ある社会をつくる」と再構築しました。
新しい理念にも、「企業の人格」という言葉を残しました。それは、過去の言葉を守るためではありません。20年の実践を通じて、その意味がより深く、より広くなったからです。
企業の人格は、発信によって飾られるイメージではありません。価値を生み出す力を磨き、良心を基準に判断し、関係する人々に誠実に応答する。その履歴によって育つものです。
「それは、『企業の人格』」という原点から、次の20年へ。私たちは、この問いをこれからも実践の中で深めていきます。
| 次回は、なぜ「良心」を判断と行動の基準に置くのかを考えます。 |
