【ポッドキャスト #83】組織の成長は、対話と仕組みから始まる

今回は、合同会社社外人事部長代表の長谷川満さんをゲストに迎えました。
長谷川さんは、ベンチャー企業の人事責任者として、社員52人から513人へと組織が成長する過程を経験しました。採用だけでなく、育成や評価制度、組織づくりにも携わり、現在は複数の企業を支援する「社外人事部長」として活動しています。
音声(番組)は以下より聴取できます。
・ポッドキャスト:#83
・Spotify:#83
以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。
◆社員を増やすだけでは、組織は成長しない
濱口
社員が50人ほどの会社から、500人を超える組織になるというのは、かなり珍しい経験ですよね。
何をきっかけに、そこまで社員を増やすことになったのでしょうか。
長谷川
私が入社した時から、社長は上場を目指すと明言していました。
人事の仕事を任された時も、人を増やすことが大きな役割の一つだと認識していました。
ただ、人数を増やせばよいわけではありません。
入社した人が定着し、仕事を身に付け、戦力にならなければ、採用しても人が辞め続けることになります。そのため、採用と同時に育成の体制もつくる必要がありました。
濱口
最初から順調に増えたわけではなかったのですか。
長谷川
前半の3年間ほどは、人が増えても辞めるという状態が続きました。
社員数が150人ほどになるまでは、少しずつ増えては減ることを繰り返していました。
そこから先に、一気に増えていったという感覚です。
◆反発する社員と、一人ずつ向き合う
荒木
3年目以降に組織が伸び始めたのは、何が変わったからでしょうか。
長谷川
当初は、社長が上場を目指すと言っていても、社員の多くは会社の成長や組織づくりに関心を持っていませんでした。
私が最初に取り組んだ大きな仕事の一つが、人事評価制度の導入です。
外部のコンサルタントと制度をつくり、社員への説明会を開きましたが、強い反発が起こりました。説明会が紛糾し、制度を受け入れられない社員も多くいました。
そこで、社員一人一人と話すようになりました。
会社が目指していることを伝えるだけでなく、社員が何を考え、何に不安を感じているのかを聞きました。そうした対話を、泥臭く3年ほど続けました。
少しずつ協力者が増え、自分も会社の成長を担う一人だと考える社員が現れるようになりました。
荒木
そこは、広報にも通じますね。
遠くにいる誰かへ発信する前に、まず目の前にいる人と向き合う。
会社のビジョンや経営者の思いを一方的に伝えるだけではなく、社員の考えや感情を受け止め、対話する。その積み重ねが、信頼関係の土台になったのだと思います。
◆対話を、仕組みとして残す
荒木
対話に加えて、社内の仕組みも整えていったのですね。
長谷川
採用では、学生に会社をどう見せるのか、選考を通じてどう会社を理解してもらうのかを設計しました。
育成では、入社後の研修だけでなく、現場に配属された後のOJTまで仕組みにしました。
現場へ任せるだけでは、教える人によって内容や質が変わります。教える側の育成も含めて、会社全体で人を育てる仕組みが必要でした。
また、新人に業務マニュアルを作ってもらう取り組みもしました。
新人が先輩の仕事を見て、記録し、言葉にすることで、経験者には当たり前になっていた仕事を可視化できました。
会社には、特定の人だけが持っている知識や技術がたくさんあります。それを言葉や文書に残すことで、組織の財産に変えることができます。
荒木
人に依存していた仕事を記録し、誰かが引き継げる状態にする。
対話だけでも、制度だけでもなく、その両方が組織の成長には必要なのですね。
◆経営者の頭の中を、言葉にする
長谷川
私が在籍していた会社は、リーマン・ショックの影響で一度は上場を断念しました。
私はその後退職しましたが、会社は数年後に上場を果たしました。
後日、社長に「なぜ再び上場できたのですか」と聞いたところ、早い段階で経営方針書をつくっていたからだと言われました。
会社が大切にすること、目指す方向、経営者の考えを言葉にし、それを人材育成や組織運営の基礎にしていたのです。
荒木
経営者の頭の中にあるだけでは、社員には共有できません。
見えない思いや価値観を言葉にし、記録し、繰り返し伝える。その言葉を土台に、評価や採用、育成の仕組みが動いていく。
社員52人から513人への成長は、採用人数だけで生まれたのではありません。
社員と向き合う対話があり、組織を支える仕組みがあり、経営者の考えを言葉にした経営方針があった。
その三つが結び付いたことで、会社の成長を支える土台ができたのだと思います。

