【ポッドキャスト #86】想定外が起きた時、会社は何を変えるべきか

災害時のマニュアルがあっても、想定外は起こります。熊本の地震後に起きた商業施設での事故や、水害時の軽貨物配送を例に、誰か一人の責任を問うだけでなく、現場で迷わず行動できるルールや仕組みをどう更新するかを考えます。
音声(番組)は以下より聴取できます。
・ポッドキャスト:#86
・Spotify:#86
以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。
◆災害マニュアルは、「その後」まで考えているか
濱口
今年は地震や集中豪雨など、災害について考える機会が多くありました。
その中で気になったのが、熊本の地震後に商業施設で起きたガス爆発事故です。
災害時には、まず建物から避難するというルールがあります。
でも、いったん避難した後、揺れが収まったらどうするのか。
いつなら戻っていいのか。
そこまでマニュアルで決められているのだろうかと思ったんです。
◆避難した「その後」に、判断が生まれる
荒木
そこは非常に難しい問題ですね。
避難するところまではルール化できます。
ただ、その後に「スマートフォンが建物の中にある」「家の鍵や車の鍵がない」「家族へ連絡できない」となれば、私物を取りに戻りたいという人が出るのは自然です。
特に店舗で働く人は、勤務中に私物を持っていない場合があります。
建物が倒壊していて明らかに戻れないなら別ですが、外から見て大きく崩れていなければ、「戻ってはいけない」と言われても、現場では迷いが生まれます。
濱口
「命が一番大切です」と言うことは簡単です。
でも、では一週間絶対に入らないのかと言われると、現実には難しい。
その間をどう判断するのかが問題なんですよね。
◆誰か一人の責任だけで終わらせない
濱口
事故が起きると、「誰の責任だったのか」という話になります。
もちろん被害が起きた以上、原因や責任を明らかにする必要はあります。
ただ、現場の誰か一人にすべての責任を負わせるだけでいいのだろうか、とも感じます。
荒木
まず事故そのものの直接的な原因を明らかにする必要があります。
設備や管理に問題があったのか、それとも事前には防ぎようのなかったことだったのか。
そこは事実を確認しなければ分かりません。
そのうえで重要なのは、今回の経験から、これまでの防災対策やルールにどんな穴があったのかを見つけることだと思います。
誰かを責めて終わるのではなく、次に同じ状況が起きた時にどうするのか。
そこまで進めなければ、教訓にはなりません。
◆現場の行動を変える仕組みへ
荒木
今回の事故後、一部の小売企業では、災害時の連絡や避難を考え、勤務中のスマートフォンなどの携帯ルールを見直す動きがありました。
私は、こうした対応は一つの考え方になると思います。
普段は仕事中に使用しない。
しかし、災害時にも自分の身に付けていれば、避難後に連絡手段や鍵を取りに戻る必要が減ります。
避難するというルールだけではなく、「避難した後、人は何を必要とするのか」まで想像して制度をつくる。
そこが重要なのではないでしょうか。
濱口
事故が起きた後の人の行動まで想像するということですね。
◆「命を守れ」だけでは、判断できないことがある
濱口
軽貨物のドライバーについても似た問題があります。
大雨でアンダーパスに水がたまり、車が動かなくなったら、当然まず命を守るべきです。
でも、業務委託のドライバーなら、積んでいる顧客の荷物を駄目にした場合の負担が頭をよぎることがあります。
水位が上がる中で、「荷物を残してすぐ逃げよう」と冷静に判断できるのか。
荒木
そういう時こそ、本人の判断だけに任せない仕組みが必要ですね。
「命を大切にしてください」と言うだけでは、現場では迷います。
どの状態になったら進まないのか。
どの時点で車を捨てて避難するのか。
損害が発生した時、誰がどこまで負担するのか。
事前に会社や業界として整理しておくことで、緊急時の判断は変わります。
災害は、完全に想定することはできません。
だからこそ、事故が起きるたびに、「想定外だった」で終わらせない。
実際に人がどんな判断をし、どこで迷ったのかを見る。
そして、その経験を次のルールや制度へ反映する。
災害対応とは、マニュアルを一度作って終わることではなく、起きた事実から学び続け、仕組みを更新していくことなのだと思います。

