#35 経営者は、なぜ集まるのか|第1回

このノートの考え方については、こちらにまとめています。
ーなぜ私は「社会設計ノート」を書いているのかー
経営者は、なぜ集まるのか|第1回
― 経営者団体・コミュニティから考える関係と制度 ―
私自身、これまで幾つもの経営者団体や交流の場に参加してきました。
仕事につながる出会いを求めて利用した場もあります。経営塾で学んだ人たちが集まる団体や、同じ分野の仕事をする人たちとの交流の場もあります。
1年で離れた場もあれば、十数年にわたり所属を続けている団体もあります。
ただ、振り返ってみると、所属していた期間だけでは、その場の意味は測れないように思います。
長く所属していても、参加する機会が少なくなった団体があります。一方、すでに退会したコミュニティで出会った経営者の紹介が、今も続く顧客との関係につながっていることもあります。
続けているから、価値がある。
やめたから、価値がなかった。
そう単純には分けられません。
退会したという事実だけでは、そこで生まれた関係の、その後までは分からないのです。
経営者が集まる場は、なぜこれほど多いのでしょうか。
最初は、団体の多さが気になっていました。しかし、自分の経験を振り返るうちに、問いが少し変わってきました。
私たちは、何を求めて集まるのでしょうか。
そして、そこで生まれたものは、その場を離れた後、どこに残るのでしょうか。
会社の外に、何を求めるのか
そもそも、経営者が集まる場は、一種類ではありません。
企業や業界の声を政策に届ける団体もあれば、地域の事業者を支える団体もあります。経営について学ぶことを中心とする場、仕事の紹介や商談を目的とする場、奉仕や社会貢献を掲げる場もあります。
「経営者団体」「経営者コミュニティ」と一括りにしても、成立した理由や、誰のために何をするのかは異なります。
参加する側の理由も、一つではないはずです。
仕事を増やしたい。経営について学びたい。相談できる相手が欲しい。地域との関わりを持ちたい。
同じ場にいても、求めているものは人によって違うでしょう。
その動機に、最初から優劣を付ける必要はないと思います。仕事につながる出会いを求めることも、経営者にとって切実な理由です。私自身、そうした目的で会費を払い、時間を使ってきました。
ただ、人が集まっていれば、求めていた出会いが生まれるとは限りません。
多くの人と名刺を交換できたとしても、それが自分にとって、あるいは相手にとって、どのような意味を持ったのかは別の問題です。
参加した人数や、交換した名刺の枚数だけでは分からないものが、そこにはあるように思います。
出会う理由と、関わり続ける理由
もう一つ、気になることがあります。
参加したときに求めていたものと、関わり続けるうちに大切になるものは、同じなのでしょうか。
仕事のために参加した場が、いつしか相談できる相手のいる場所になることもあるのかもしれません。学びに行ったつもりが、自分の経験を誰かに伝える側になることもあるのでしょう。
そう考えると、「何のために入ったのか」だけでは、その場の意味を十分には捉えられません。
何を得たのか。
どのように関わるようになったのか。
その関わりの中で、何が変わったのか。
時間を置いて初めて分かることもあるはずです。
私の場合も、ある場での出会いが、紹介を通じて別の企業との関係につながり、今も続いています。それだけで参加全体の評価が決まるわけではありませんが、その場で過ごした時間と、そこから生まれた関係の時間は、同じではありませんでした。
一方、所属を続けていても、以前と同じ関わり方をしているとは限りません。参加する頻度が変われば、自分にとっての意味も変わっているのかもしれません。
所属していることと、関係が続いていることは、重なりながらも違うものです。
経営者の集まりを「人脈をつくる場所」と説明するだけでは、こうした変化を見落としてしまう気がします。
出会ったかどうかだけでなく、出会った後に何が残ったのか。
私が考えたいのは、そこです。
その場の外に、何が残るのか
ここまでは、主に参加する経営者の側から考えてきました。
しかし、その場で生まれたものは、参加者の中だけで完結するのでしょうか。
例えば、経営者が学んだことを会社に持ち帰り、社員との関わり方を変えたとしたら。その学びの意味は、会合に参加していない社員にも及びます。
ある出会いが企業同士の協力につながり、顧客への提供価値を変えたとしたら、その関係も、最初に出会った二人だけのものではなくなります。
私が経験した紹介も、一つのコミュニティの中にとどまらず、別の企業との関係につながっていきました。
こうして考えると、経営者が集まる場には、参加者へのサービスという見方だけでは捉えきれない働きがあるのかもしれません。
ただし、会員にとって役に立つことと、社会にとって役に立つことが、いつも一致するとは限りません。
会員を支えることは、団体の大切な役割です。そのこと自体を問題にするつもりはありません。
問いたいのは、会員を支える仕組みが、会員以外の人や企業に、どのような影響を与えているのかということです。
内側の人には頼りになる場が、外側の人には入りにくい場になっていることはないのか。仲間同士で共有される考え方が、外からの問いを受け止めにくくすることはないのか。
反対に、その場があるからこそ、これまで出会わなかった人同士がつながり、新しい協力が生まれることもあるのではないか。
いずれも、団体の名前や掲げる理念だけでは判断できません。実際の関わりと、その先に生じていることを見ていく必要があります。
私がこの連載で考えたいのは、どの団体が優れているか、どのコミュニティに入るべきかということではありません。
経営者が集まり、関わり続けることで、何が生まれ、それが誰を支えているのか。
自分自身も参加してきた一人として、その意味を捉え直してみたいのです。
経営者が集まる場は、参加する人のためにあります。けれど、そこで生まれた学びや関係、その場で共有される考え方は、会社の外へ、さらに社会へと広がっていくのかもしれません。
その働きを考える前に、確かめておきたいことがあります。
そもそも、こうした団体やコミュニティが多数存在することは、日本に特徴的なことなのでしょうか。
まずは、日本の外にも目を向けてみたいと思います。
