セミナーレポート 3月18日開催、RMCAシンポジウム2021 「ウィズコロナ時代における企業と個人のリスクマネジメント」
2021年3月18日(木)19時00分。NPO法人日本リスクマネジジャー&コンサルタント協会(略称:RMCA)主催のRMCAシンポジウム2021「ウィズコロナ時代における企業と個人のリスクマネジメント」がオンラインで開催された。RMCAとは設立から28年目となる、リスクマネジメントの専門人材を育成する団体だ。現在、当社代表・荒木洋二が理事長(9期目)を務めている。同シンポジウムはRMCAとしては初めての試みとして、理事全員がパネラーとして登壇し、3部構成で行われた。
第1部では、司会を務めた相馬清隆理事・事務局長以外の8人の理事が各5分、自己紹介と新型コロナウイルスに対する認識や向き合い方、雑感などを述べた。第2部では、司会の相馬事務局長がモデレーターとなり、各理事で意見を交換し、最後に第3部で参加者からの質疑に応答するという流れだった。
荒木 洋二 | 理事長 | 株式会社AGENCY ONE 代表取締役 |
松本 一成 | 副理事長 | ARICEホールディングス株式会社 代表取締役 |
石川 慶子 | 副理事長 | 有限会社シン 取締役社長 |
木村 栄宏 | 理 事 | 千葉科学大学 危機管理学部 教授 |
相馬 清隆 | 理事/事務局長 | 株式会社YDコンサルティング 代表取締役 |
石浦 一喜 | 理 事 | 創新グループ 株式会社とんがりコラボ 代表取締役 |
前田 泉 | 理 事 | |
奥田 雅也 | 理 事 | 株式会社FPイノベーション 代表取締役 |
田丸 誠 | 理 事 | 株式会社 誠・シークレット・サービス・コンサルティング 代表取締役 |
◆リスクリテラシーを備え、新たな一歩を
第1部、トップバッターのスピーカーとして、理事長である当社代表・荒木が次のとおり、語った。(以下、全文掲載。)
こんばんは。RMCA理事長の荒木洋二です。
RMCAに事務局長として関わるようになってから、17年、理事長としては今年の1月から9年目を迎えています。ふだんはPR会社、株式会社AGENCY ONEを経営しており、現在15期目になります。
広報という仕事は「情報」を扱っています。現地・現場・現物を取材する、一次情報を取材する、そのほかさまざまな情報源から情報を収集する、そして分析整理して、相手に伝わるように表現・編集を工夫する。その上で情報を共有し、広く発信もする。正確に、しかも分かりやすく誤解されないように伝える。そんな仕事をしています。
コロナ禍にあって、何を考え、感じていたのかというと、私たち一人一人が、どうリテラシーを向上させるのか、そのことを何度も熟考を重ねざるを得ませんでした。リテラシーとは読み書きする能力です。どんなリテラシーを身に付けるべきなのか。それはメディアリテラシーであり、情報リテラシーでもあります。視点を変えれば、リスクリテラシーともいえます。言い換えると、情報の真贋を見分ける力、行動変容を促す言語力、伝達力ということです。
「メディア=マスコミ」と捉えますと、メディアリテラシーとは、マスコミ報道の真贋を見分ける力が備わっているのか、ということです。世代を超え社会全体に強い影響を及ぼすメディア、特にテレビと新聞が、コロナ報道を機に本来の使命を自ら放棄しました。公正・中立の立場を離れ、正確さに欠ける報道で、恐怖を煽り続け、高齢者や母親たちを中心に少なくない人々に恐怖心を植え付けました。その恐怖心が、日本特有の同調圧力と共鳴し合い、社会のつながりを分断させるエネルギーとなり、猛威を奮っています。このエネルギーは、こんなにも科学が発達した現代であるにもかかわらず、科学的根拠を求める気持ちを削ぎ、論理的思考を停止させてしまうほどの力を持っているようです。
次に情報リテラシーとは、マスコミ報道だけでなく、「ネット空間」で発せられる膨大な情報を含め、真贋を見分ける力といえます。マスコミに登場しない、医学のさまざまな分野の専門家たちが、主に動画チャンネルを核にほとんどマスコミでは報道されない事実を発信し続け、ネットを中心に物議を醸しています。目から鱗が落ちるような情報に接し、言い知れぬ不安や違和感から解放された人たちも存在します。
ただ、情報の真贋を見分ける力だけでは、リテラシーを備えたことにはなりません。もっと重要なのが行動変容を促す言語力、伝達力ではないでしょうか。
マスコミ報道を鵜呑みにしている人たちに対して、「情弱」や「コロナ脳」という言葉とともにやゆしたり、軽蔑したりする傾向が顕著になっています。このような言葉は、恐怖心と同調圧力によるエネルギーと同様に社会全体に分断を生じさせ、怒りや恨みなどの負の感情を生むばかりです。
社会全体をより良い方向へと導く、行動変容を促すことにはつながりません。どんな表現、どんな言葉で何をどうやって伝えるのか。厳しくも暖かいまなざしと心を忘れずに創意工夫を繰り返し、言語力、伝達力を磨いていくべきではないか、自戒の意味も込めてそう感じています。
私たちはコロナ禍による混乱を社会全体で奇貨として捉え、事実と正面から向き合い、それぞれが新たな一歩を踏み出していく時を迎えています。
リスクマネジメントの国際規格「ISO31000」では、リスクを「目的に対する不確かさの影響」と定義しています。何を目指し、どこに向かうのかが定まってこそのリスクマネジメントであり、リスクリテラシーです。
何がリスクなのか、社会全体でリスクを特定し、リスク情報を共有しなければなりません。ゼロリスクはあり得ません。その上でどう対応するのか。科学や論理的思考を土台に社会全体で合意を見つける努力が問われています。