初級講座 Ⅰ.理論・基礎知識「経営の基礎体力づくり(1)」
こんにちは。荒木洋二です。
「そもそも広報PRとは」と題して、ここまで解説を進めてきました。残すところあと2回です。最後まで、しっかりと勉強しましょう。
前回までで、利害関係者から選ばれ続けるためには、組織の価値が現れる表舞台と舞台裏を伝え続けることが絶対に必要だ、という話をしました。そうすることで信頼と共感を得られるからです。今回は最後4番目、「経営の基礎体力づくり」です。「そもそも広報PRとは」の結論といえ、2回にわたって解説します。
広報PRとは、利害関係者と良好な関係を築くことである、ということを何度も繰り返し説明してきました。「良好な関係」という言葉を正しく理解するためにもう少し補足します。
·「良好な関係」は、健全な緊張関係の上に成り立ちます。
以前、建設業界などで問題になった「談合」がありました。これはルールを逸脱していますので、健全ではありません。不健全ですし、緊張ではなく馴れ合いの関係です。仲はいいかもしれませんが、不健全かつ馴れ合いの関係です。
·はたして、健全な緊張感がある関係なのか。
このことは組織内も、組織と利害関係者の間でも同様に問いかけるべきことです。健全な緊張関係が崩れた状態では、不正の温床となりかねません。時代も変わって環境も変わってるけれど、今までの慣習だから取引先を変えずに、今までの通りのルールややり方でやればいいじゃないか、という話も少なくないのではないでしょうか。担当者同士が、あるいは経営者同士が仲がいいからといって取引を続けていたとします。これでは、あくまでも個人同士での仲の良さであり、組織として良好な関係とは言いません。健全な緊張関係が必要だということです。
今まで何度も強調してきました。利害関係者は経営にとって、広報にとって重要な存在です。
·利害関係者とは経営資源である。
そして、価値を共に生み出す仲間でもある。共感に基づく信頼関係を利害関係者と築き上げていくことが大事だ、という話もしました。
·広報PRはなぜ必要なのでしょうか。
·企業組織にとってどうして必要なのでしょうか。
·何のために行うのでしょうか。
経営をスポーツ競技に例えながら、解説を進めます。どんな競技でも、どんなスポーツでも、勝つためにはまず何が大切でしょうか。高度な戦略でしょうか。確かにそれも必要でしょう。卓越した技術でしょうか。もちろん、それも必要でしょう。もっと突き詰めていえば、そもそも試合や大会に出場するためには、何が必要でしょうか。
企業の経営に例えると、どんな業界·業種でも、成長していくために、存続するためには、まず何が大切なのか、ということです。高度な経営戦略、それも必要でしょう。卓越した、さまざまな施策、それも必要でしょう。もっと突き詰めていえば、そもそも激変する厳しい競争環境で事業を営むためには何が必要なのか、ということです。
これをスポーツ競技に例えてひもといてみましょう。どんな競技かは関係なく、全てに共通して必要なことは(当たり前の話ですが)基礎体力です。企業の経営において考えた場合には、どんな業界·業種かは関係なく、全てに共通して必要な基礎体力というものが、企業経営にもあるはずです。
·基礎体力とは何なのか。
ネットなどで検索してみると、いろんな説が出てきましたが、私自身が一番しっくりきたのが、この四つ(下図)です。
なるほど、わが意を得たり、と思いましたね。競技によって、この四つのうちのどれを最も重視するかは、多少差はあるかもしれません。しかし、ベースとして、筋力、持久力、柔軟性、バランス能力、という基礎体力が全ての競技に必要なことは間違いありません。この土台があってこそ、さまざまな技術を習得するための練習·訓練を続けたら、身に付いていくわけですね。基礎体力が、まず土台にあるということです。
しかし、基礎体力がなければ、備わってなければ、いくら小手先でさまざまな技術を、本を読んで勉強して模倣してみても身に付きません。身に付いたと自分で思ったとしても、試合では到底生かせません。生かせるはずがありません。身に付いていないのですから。基礎体力が備わってないのに、十分でないのに、試合に出てしまうと当然ミスも多くなります。コントロールして技術を使えないので、ミスも増えるし、けがも多くなるし、けがからの回復も遅くなってしまう、というわけです。
では、スポーツではなく経営で見ていきましょう。
経営における基礎体力とは何かというと、結論は利害関係者との良好な関係です。もっと突っ込んで言いますと、前回から説明しているように、
·利害関係者との共感に基づく信頼関係が、経営における基礎体力です。
つまり、経営における基礎体力とは利害関係者とのつながりの太さ·強さ、長さ、柔らかさ、バランス、これらが重要なんです。つながりの太さや強さ、長さ、柔らかさ、バランスとは何でしょうか。経営でいうと、表舞台と舞台裏の情報です。これらの情報の共有によって、つながりは深くなります。
·太さ
伝える情報の回数が増えるほど、どんどん絆は太くなる。
·強さ
伝える内容が濃ければ、熱量を帯びた内容であれば、結び付きは強くなる。
·長さ
ずっと伝え続けていくことで関係が長く続く。
·柔らかさ
情報の流通のしやすさを指す。
·バランス
利害関係者全体にバランスよく情報がちゃんと共有されている。
今回の講座を最後にもう一度振り返りましょう。
·利害関係者は経営資源だ。
·利害関係者は価値を共に生み出す仲間だ。
·利害関係者との共感に基づく信頼関係こそ、経営における基礎体力だ。
·利害関係者とのつながりの「太さ·強さ」、「長さ」、「柔らかさ」、「バランス」が重要だ。
·「表舞台」と「舞台裏」の情報共有によってつながりが深まる。
次回が「そもそも広報PRとは」の最後の講座となりますので、もらさずに、しっかりと学んでください。