中級講座 Ⅰ.理論・基礎知識 経営と広報 CSRの基礎 〜CSRとは(1)〜

こんにちは、荒木洋二です。

前回から「経営と広報」の「2.CSRの基礎」の解説を始めました。

今回は4回にわたる解説の2回目です。「CSRの基礎」は次のスライドのとおり、三つに分けて解説します。

前回は「①企業・組織と社会」について解説しました。今回から2回にわたり、「②CSRとは」を解説します。

②CSRとは

次のスライドのとおり、三つに分けて解説します。

まず、「近江商人の三方よし」を確認しましょう。よくご存じの人も多いのではないでしょうか。

売り手よし 買い手よし 世間よし

これを「三方よし」といいます。近江という地域は、ほぼ現在の滋賀県に当たります。近江商人の流れをくむ大企業はいくつもあります。少し挙げてみましょう。

伊藤忠商事、丸紅、大丸、高島屋、西川産業、凸版印刷、ワコールなどです。

江戸時代に入り、全国規模の市場開拓、流通が広がってきました。北海道では水産物、東北では紅花・生糸、関東では醸造業でした。そして、近江では蚊帳や衣料品・小間物・薬を製造していました。

このような状況で全国規模の市場を開拓していくなかで、近江商人の原点が築かれたのです。その原点は次のスライドに記載した二つです。

説明します。まず、「他国者意識」です。つまり近江から全国に出掛けて販売するわけですから、近江以外の土地では事実として自分たちは常に第三者です。よそ者なんです。そのため「他国者意識」が根付きました。

次に「家の永続」です。常に長期的視点を持っていたのが近江商人です。

このような意識を持った、原点を持っている近江商人は、売り手にもいいこと、買い手にもいいこと、そして世間にもいいこと、つまり社会全体にとってもいいことを常に意識して商売していたのです。そうしなければ、商売が成り立たなかったのです。

「売り手」とは企業のことです。「買い手」はお客さまです。「世間」は地域社会であり、社会全体です。現代的表現では、ウィン・ウィン・ウィンの関係です。これが「近江商人の三方よし」です。

常に長期的視点で、常に他国者意識があったのです。取り巻く関係者と健全な緊張関係、信頼関係を築いたのです。その商売人としての精神がいまだに多くの企業に受け継がれている、ということです。

ここ十数年、日本国内でも「三方よし」をもう一度見直そうじゃないか、という動きが現れています。いくつか紹介しましょう。

2008年2月29日、日本取締役協会が発表した「六方よし」があります。天地東西南北で六法よしです。次のスライドのとおりです。

そのほかにも当社ニュースルームのコラムでも紹介したとおり、藻谷ゆかり氏が提唱する「六方よし」、新井和宏氏が提唱する「八方よし」があります。以下に記載しておきます。

・六方よし:売り手 作り手 買い手 世間 地球 未来

・八方よし:社員 取引先・債権者 株主 顧客 地域 社会 国 経営者

全ては「三方よし」が始まりなのです。

今回は日本におけるCSRの源流ともいえる「近江商人の三方よし」について紹介をしました。次回は「CSRとは」を解説します。

前の記事へ 次の記事へ