広報PRコラム#66 企業の魅力を考察する(6)

こんにちは、荒木洋二です。

企業の魅力を生み出す、引き出す源泉とは何でしょうか。筆者はそれは「情熱」だという仮説を立てています。創業者、経営者の「情熱」です。企業を取り巻く関係者たちがその熱量に感化され、心の状態が変化していきます。取り巻く関係者とは社員、顧客、取引先・パートナー、株主、地域社会(役所・住民)のことです。それぞれの関係者たちが同様の「情熱」をまとった状態へと成長し、「当事者」になるのです。

■主体性と自発性

前回のコラムでは、東海大学・河井孝仁教授が提唱する「mGAP(エムギャップ・修正地域参画総量指数)」と、NPS(ネット・プロモーター・スコア)を解説しました。ここで注目すべきことは、「意欲」です。推奨、継続、参加、感謝というそれぞれの意欲です。

意欲とは積極的に行おうとする心、自発的に行動しようとする心です。
当事者とは、誰かから促されたから、その企業や製品・サービスを推奨するわけではありません。誰かから頼まれたから継続して利用したり取引したり、働いたりするわけでもありません。企業の活動に参加するのも、そして感謝するのも強制されたわけではありません。全て主体的、自発的に行動するのが当事者です。

ここで、「魅力度ブランディングモデル」」と魅力度ブランディング調査の第6回調査結果を再度振り返ります。上位を占めた人的魅力の四つは次のとおりです。1位は中小・中堅企業、スタートアップ向けに表現を変えています。詳しくは「企業の魅力を考察する(3)」をご覧いただきたい。

1位:ビジョンを掲げ、常に挑戦している

2位:チャレンジスピリットにあふれたリーダー・経営者がいる

3位:こだわりをもった社員が品質向上にチャレンジしている

5位:イノベーションにこだわる経営をしている

ここで明らかなことは、こだわりと挑戦がキーワードだということです。こだわるのも、挑戦するのもいずれも主体的、自発的な心の働きが根底になければ、できないことです。多くの人の心を惹きつけ、夢中にさせる力が魅力です。周囲が魅力と感じるかどうかは、関わる人たちが主体性と自発性を備えているかに影響されることが分かります。

共創エンジンにより魅力創造サイクルを回せるのは、当事者たちだけなのです。

■成長の5段階

ここで4位は何だったのか、確認しましょう。4位は商品的魅力の「熱心なファンが多い商品・サービスを提供している」です。「熱心なファンが多い」で想起するのが、当コラムで何度も紹介している佐藤尚之氏が著書で示した顧客分類です。顧客の企業への関わり方や思いをもとに四つに分類しました。上位から示すと、次の4段階です。

・エバンジェリスト(伝道者)

・ロイヤルカスタマー(支援者/優良顧客)

・ファン(応援者)

・パーティシパント(参加者)

熱心なファンは、当然その企業や製品・サービスのことを熱心に推奨します。継続して購入・利用します。当コラム「企業経営の成長5段階」で3回にわたり、顧客だけでなく、企業そのものに始まり、経営者、社員、取引先、株主などの成長を示しました。改めて、再掲します。

第5段階は、利害関係者が「当事者」になった状態です。まさしく価値を共に創造する仲間、ビジョンや理念を共有する仲間になったといえます。彼らは推奨、継続、参加、感謝する意欲にあふれています。この5段階はNPSと相通ずるものがあることが分かります。

■わが社の魅力を心に焼き印する

広報の本質、すなわちPR(パブリック・リレーションズ)の本質とは、企業ブランディングです。

企業ブランディングとは、わが社の魅力をみんなの心に焼き印することです。「みんな」とは企業を取り巻く関係者たち、目の前にいる関係者たちのことです。心に「焼き印」するのですから、「情熱」という「熱」が欠かせません。熱がなければ、焼き印できないのですから。

情熱の出発点、源泉はどこにあるのでしょうか。情熱は創業者からしか生まれません。それが原点、起点となる以外には始まらないし、広がっていかないのではないでしょうか。

「情熱経営」を実践する経営者が増えることで、「情熱経済」が巻き起こるのではないでしょうか。閉塞感に押し潰れそうな日本経済を元気にできるのは、情熱を持った経営者たち、ビジネスパーソンたちだと信じています。

6回にわたる連載の最後を、著名な経営者たちの言葉で締めくくりたいと思います。

偉大な製品は、情熱的な人々からしか生まれない。
スティーブ・ジョブズ氏

世の中の多くの人は、少々うまいこと、いかなくなると途中で諦めてしまう。本当に物事を成し遂げるためには、成功するまで諦めないことである。やっていくうちに、世の中の情熱が有利に展開していくことだってあるのだから。
松下 幸之助氏

強い思い、情熱とは、寝ても覚めても、24時間、そのことを考えている状態。自分自身の成功への情熱と呼べるほどの強い思いが、成功への鍵。
稲盛 和夫氏

★参考文献

『「失敗」からひも解くシティプロモーション ー何が「成否」をわけたのか』(河井孝仁著、第一法規刊)

『明日のコミュニケーション 「関与する生活者」に愛される方法』(アスキー新書刊、著者:佐藤尚之)

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