#12 広報と広告って何が違うの? (2)

こんにちは、荒木洋二です。

広報関連の書籍では「広報と広告の違い」について、よく言及しています。そこでは狭義の意味での「広報=パブリシティ」と広告を比較しています。狭義というより、パブリック・リレーションズの対象の一つである、メディアに限定したという方が正しいでしょう。メディア・リレーションズの現場での実務の観点から、四つの違いがあります。

「広報と広告って何が違うの? (1)」の記事はこちらから

(3)情報の選択・決定権

ニュースや記事をいつ、どこに載せるのか、あるいは載せないのか。企業・組織側は決められません。どう報道するのかという編集権はメディア側にあります。広報の場合はメディア側、報道機関側に情報の選択権、決定権があります。広告は広告主(企業・組織)側にあります。公序良俗に反しない限り、いつ、どの媒体に何回載せるのかを広告主が決めます。(空き状況に左右されますが)予算の範囲内で決められたスペースや時間を確保し、何度も出稿できます。

(4)情報発信の主体

ニュースや記事の著作権はメディア側にあります。ニュースの情報源は企業・組織なのですが、情報発信の主体はあくまでも報道機関なのです。広告は広告主(企業・組織)側にあります。デザインを含めて自らの組織で制作しているのであれば、同じコンテンツはいつでもどこでも何度でも自由に使用できます。

◆本来の広報における実務

対象をメディアに限定し、しかも現場での実務に焦点を当てた場合、四つの違いがあることをここまでで明らかにしました。次に同じく現場での実務に焦点を当てますが、本来の広報の観点から見てみましょう。ここでも四つの違いがあります。

(1)情報内容の基準

広報は事実のみを扱います。ありのままの姿を等身大で伝えるのが広報です。舞台裏の情報までも積極的に明かします。広告で伝えるのは、原則として事実に立脚した印象、イメージです。自らの主張を伝えます。商品広告であれば、広報と比べ視覚表現が重視されたり、イメージ重視ですからタレントを使ったりします。ただ、事実とかけ離れると誇大広告となりますし、虚偽の広告であれば、生活者を惑わすことにつながります。そのような行動は厳に慎まなければなりません。

最近、広告でも事実を全面に打ち出す事例が見受けられます。例えば、冷凍食品で有名なマルハ二チロのテレビCMがそうです。同社は2018年にブランドリニューアルをしました。その際にCMも一新しました。ベーリング海峡でスケトウダラ漁を操業する、同社の加工船上で実際に働いている甲板員を撮影し、その映像がCMで流れました。サプライチェーン(供給網)の舞台裏を撮影した映像を広告で使ったのです。時代は変化しています。動いています。

(「広報と広告って何が違うの? (3)」に続く)

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