#13 広報と広告って何が違うの? (3)

こんにちは、荒木洋二です。

次に同じく現場での実務に焦点を当てますが、本来の広報の観点から見てみましょう。ここでも四つの違いがあります。

「広報と広告って何が違うの? (2)」の記事はこちらから

(2)情報の特性

本来の広報の場合、発信する主体である企業・組織にとっては、発信される情報は常に客観的です。社員や顧客を取材した場合、彼らの発言はもちろん事実に基づきながらも、表現には主観が多く含まれます。利害関係者である彼らにとっての主観は、企業・組織にとっては客観的といえるでしょう。プレスリリースでは事実のみを記載し、主観的な表現は使いません。パブリシティからの流れでいうと、報道は原則として常に客観的です。

広告は印象中心ですから、主観的な表現が主流です。

(3)相手へのメッセージ

当項目も広報関連の書籍でよく言及されることです。広報は「LOVE ME」であり、広告は「BUY ME」です。

広告は「商品を買って」「わが社を選んで」と連呼します。近年、インターネット広告の手法の一つとして、注目を浴びている「リターゲティング広告」をご存じの人も多いでしょう。一度でも広告主のウェブサイトを訪れると、何度も利用者の画面に広告を表示し続けます。商品を買って、わが社を選んで、と同じ顔(同一の広告表現)で主張し続けます。

広報はさまざまなメッセージの中に、常に相手を大切に思う気持ちが込められています。相手から長く選ばれ続ける存在で在り続けるために、自らの思いを込めて伝え続けるのが広報です。

(4)相手との関係

相手へのメッセージに違いが現れるのは、なぜでしょうか。相手との関係の違いからみるとよく分かります。広告は商品を介しての付き合いです。商品ありきです。商品を買い続けてくれるかもしれないからという、条件付き関係なのです。

広報では相手との関係は平等で無条件です。全ての利害関係者は価値を共に創造する仲間といえます。喜怒哀楽を共有する仲間です。共感という感情でつながっています。心理学では共感には二つの側面があるといいます。相手の感情を理解する「認知」という側面と、自分も同じように感じる「感情」面です。

私が長年にわたり、広報PRの世界で生きてきて、確信していることがあります。ずっと実務の視点からの違いばかり論じてきましたが、広報と広告には共通点もあります。何か分かりますか。丁寧に作る(表現する)こと、丁寧に伝えることです。この基本姿勢は変わりません。

そして、広報を土台とし、広告を実行することで効果は最大化し、成長につながる成果が上がるのです。

◆参考文献:『デジタル時代の基礎知識「PR思考」』(翔泳社刊、伊達佑美・根本陽平著)

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