広報PRコラム#63 企業の魅力を考察する(3)

こんにちは、荒木洋二です。

前回のコラムでは、魅力度ブランディング調査の第6回調査結果をもとに企業の魅力とは何かを探りました。

調査対象で挙げられた企業は、外資系も含めて大手・有名企業ばかりです。ですから、調査結果には当然バイアス(偏り)がかかっています。一般的に認知度も低い中小・中堅企業やスタートアップには当てはまらない点があります。
そのことを踏まえたうえで、前回の考察をもとにこれら企業が自社の魅力を伝えるためにはどうすればいいのかをひもときます。

■目の前の関係者たちに伝えているのか

企業ブランディングとは、わが社の魅力をみんなの心に焼き印することです。

大企業にとってみれば、「みんな」とは紛れもなく生活者です。しかし、中小・中堅企業やスタートアップにとっては生活者としてしまうと、余りにも抽象的で範囲が広すぎます。そもそも認知度が低いのですから、範囲は限られます。もっと具体的に踏み込みましょう。
では、「みんな」とは誰なのか。それは目の前にいる利害関係者です。経営者・社員に始まり、顧客、取引先・パートナー、株主、地域社会(住民・行政)のことです。広報体制が十分ではないかもしれませんが、報道機関も加えましょう。
さらにマーケティング活動などで何らかの接点を持った者も「みんな」に当たるでしょう。個人・法人を問わず、「未来」の利害関係者といえる者たちです。メールアドレスや住所・所在地などの情報を取得していれば、自らの魅力を直接伝えることができます。

あなたの会社はどんな情報を「みんな」に発信していますか。皆さんの会社が実施している情報発信活動を棚卸ししてみましょう。誰に何を発信していますか。おそらくメールマガジンを定期的に配信している企業も多いでしょう。その配信対象は誰ですか。多くの中小・中堅企業やスタートアップは、前述の「未来」の利害関係者たちが配信対象の大半です。新規顧客候補であれば、新製品・サービスの案内、キャンペーン情報、イベント情報などです。社員採用の視点からいえば、採用説明会、イベント案内、新卒社員や中途社員の(着飾った)声などです。

では、皆さんに問います。

①皆さんの会社はわが社の魅力を目の前にいる関係者たちに伝えているでしょうか。

「釣った魚に餌はやらない」ではありませんが、目の前にいる関係者たちにしっかりと魅力を伝えているのか。果たして魅力が伝わっているのか。今一度、問い直す必要があります。

■四つの人的魅力を伝えているのか

ここで前回の内容を振り返ります。要点は次の二つです。

1)企業のどんな事実・活動に魅力を感じるのか

2)どんな情報源から企業の魅力を感じるのか

1)企業のどんな事実・活動に魅力を感じるのか
まず、生活者は企業のどんな事実・活動に魅力を感じるのでしょうか。同調査では企業の魅力を人的魅力、財務的魅力、商品的魅力の三つの魅力に分類しています。各魅力12項目ずつ合計36項目を挙げています。上位五つのうち四つは人的魅力でした。

1位「ビジョンを掲げ、業界を牽引している」の項目は、そのままでは中小・中堅企業、スタートアップには当てはまりません。業界を牽引しているとは言えないからです。言い換えると、「ビジョンを掲げ、常に挑戦している」となるでしょう。その上で四つの魅力を再掲します。

1位:ビジョンを掲げ、常に挑戦している

2位:チャレンジスピリットにあふれたリーダー・経営者がいる

3位:こだわりをもった社員が品質向上にチャレンジしている

5位:イノベーションにこだわる経営をしている

では、改めて皆さんに問います。

②皆さんの会社は四つの人的魅力を「みんな」に伝えていますか。

目の前にいる利害関係者たち、「未来」の利害関係者たちにこれら魅力を伝えているでしょうか。

■ニュースルームで伝えているのか

2)どんな情報源から企業の魅力を感じるのか
次に生活者が魅力を感じる情報源は何でしょうか。情報源のカテゴリーはリアル、メディアの番組・記事、ソーシャルメディア、オウンドメディア、メディアの広告の五つです。約7割が「リアル」でした。リアルな体験は、中小・中堅企業、スタートアップにも当てはまります。しかし、約3割の「メディアの番組・記事」と、約2割の「メディアの広告」はほぼ実施できていません。中小・中堅企業、スタートアップにとっては、魅力の情報源としてメディアは何の影響も与えていないといえます。

そこで重要なのが「オウンドメディア」です。オウンドメディアとは「自らが所有する媒体」です。具体的には企業主催の説明会、印刷媒体、公式ウェブサイト、公式ソーシャルメディアのことです。合計で約2割を占めています。

近年、先進的な企業は「ニュースルーム」を開設し、あらゆる公式情報をここに集約させています。「ニュースルーム」は広報専用ウェブサイトといえます。インターネットがここまで普及した現在、オウンドメディアの主流はニュースルームといえます。

では、さらに皆さんに問います。

③皆さんの会社は四つの人的魅力をニュースルームで伝えているでしょうか。

あなたの会社が社員50人程度の会社だとします。社員は経営者と近い距離で接し、経営者の情熱や思いを常に肌で感じられるに違いありません。これもリアルな体験です。社員同士、お互いの顔も振る舞いも見えるし、お互いの体験を見聞きし、共有することもできます。経営者自らが顧客や取引先、株主などを積極的に訪ねたり、交流する場を設けたりできます。これらもリアルな体験です。

こういう状況の場合、ニュースルームなど必要ないと感じられるかもしれません。リアルな体験だけで十分だと。

■ニュースルームを開設し、自ら魅力を伝えよう

ただ、会社が成長し、利害関係者がどんどん増えるにつれ、様相が変化していくことは余りにも自明なことです。社員たちは経営トップとの交流が減り、心理的にも物理的にも距離が離れます。社員同士においても人間関係が徐々に希薄になり、他部署のことが見えなくなります。体験を共有することもままなりません。顧客や取引先の企業規模が大きければ、皆さんの会社に魅力を感じていたとしても担当者個人のレベルにとどまることになりかねません。

つまり、リアルな体験だけでは魅力を十分には伝えられなくなります。特に四つの人的魅力は経営者や経営陣によるところが大きいので、なおさらです。たとえ、経営陣がビジョンを掲げ、チャレンジスピリットにあふれ、イノベーションにこだわる経営をしていたとしても、できることは限られています。かと言って、これらの人的魅力がマスメディアで報道されることは期待できません。相当に難しいでしょう。

だからこそ、自らのコントロールのもと運営できるオウンドメディアが欠かせないのです。それがニュースルームです。動画、音声、テキストを駆使して、わが社の魅力を伝えましょう。

前述した三つの問い掛けを整理すると、次のとおりです。

・わが社の魅力(四つの人的魅力など)を目の前にいる関係者たちに自らが運営するニュースルームで伝える

次回は「地域魅力創造サイクル」を紹介しつつ、企業の魅力に関する考察を続けます。

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