広報PRコラム#101 「情報発信」をひもとく(16)

こんにちは、荒木洋二です。

今回は前回に続き、伝達手段について解説します。

おさらいとして確認しておきましょう。情報発信を構成する4要素の一つである「手段」は、表現と伝達の二つに分かれます。

・表現手段:どうやって「見える化」するのか=どうやってコンテンツを作るのか
・伝達手段:どうやって伝えるのか=どうやって(コンテンツを)デリバリーするのか

伝達手段の印刷媒体と電子媒体に関して、前回の内容を整理すると次のとおりです。

ここまで解説してきた伝達手段は、あくまでも企業自らが発行・運営する媒体に限っていました。企業が受け手に情報を直接伝えられる、届けられる媒体に絞っていました。すでに住所・所在、メールアドレス、SNSアカウントなど、受け手の情報を取得し、つながっているからこそ直接伝えることができるのです。

◾️報道と広告による伝達

すでにお気付きの読者も多いように、情報を伝達する方法はまだ他にもあります。それは直接ではなく、受け手に間接的に伝える方法です。まだ何も情報を取得できていない、つながっていない相手に情報を届けたい場合、どうすればいいのか。直接はもちろん無理ですので、何かを介して間接的に伝えるしかありません。それは何でしょうか。

その最たるものが「マスコミ4媒体」を介した情報発信です。つまり報道と広告です。4媒体とは、テレビ、新聞、雑誌、ラジオのことです。これら4媒体はいずれもデジタル(インターネット)でも情報を発信しています。それぞれの媒体が一定規模の視聴者、読者を持っています。情報を取得し、(関わりの深さには違いがあるものの)つながっています。その視聴者、読者の中にはすでに自社で情報を取得したり、つながったりしている者たちも当然含まれます。しかし、その数はごくわずかに過ぎません。

◾️記者クラブと一斉配信サービス

広告による発信は、時間やスペースを購入することで実現できます。もちろん予算の範囲内に限られますから、情報が伝達される範囲も限られます。大手企業でない限り、そんなにあれもこれも使い、繰り返し発信できるわけではありません。

では報道されるにはどうしたらいいのか。プレスリリースを記者クラブに投函したり、一斉配信サービス事業を利用して配信したりすることで報道される可能性が生まれるし、高まります。日本の場合、報道関係者は少なくない人数が記者クラブに所属しています。所属する個々の記者たちとの面識やつながりがなかったとしても、記者クラブに投函することで報道の機会に恵まれることがあります。
一斉配信事業者は媒体名を公開していますが、個々の記者たちの情報は非公開です。ただ、同事業者は当然リストを持っていますので、配信システムを利用することで個々の記者たちに情報を届けることができます。

◾️再注目されるアウトドアメディア

ところで、インターネット上の媒体の中にはマスコミには分類されないサイトもあります。これらサイトに始まり、SNS、動画サービスにも広告が表示がされます。つまり広告による発信が可能です。広告料金もマスコミ4媒体に比べて安価ですので、実行しやすい身近で手軽な伝達手段といえます。

一方、報道機能はありませんが、アウトドアメディア(看板、交通広告、施設広告など)も総合すれば、十分「マス」に分類できる媒体といえます。
看板は最も古い広告といわれ、徒歩圏内の電柱に始まり、街中のビル、ロードサイドなど地味に浸透していて、いまだに健在です。デジタルサイネージ(電子看板)も大都市圏を中心に広がっています。
交通広告は、電車やバスなどの利用者に通勤時間や移動時間で接触できます。アウトドアメディア自体が日常に溶け込んでいるメディアであり、その筆頭が交通広告といえるかもしれません。首都圏の電車ではデジタルサイネージの導入が進んでいます。
施設広告とは、スポーツ関連施設、商業施設、文化施設などで展開されている広告のことです。壁面、通路、店舗内に始まり、最近ではトイレ個室内にも広告が表示されています。

近年、浸透してきたのがアウトドアメディアと連動した広告展開です。スマートフォン搭載のカメラはQRコードの読み取り機能として活用されています。そのため、交通広告や施設広告で展開されているポスターやチラシなど、さまざまな印刷媒体にQRコードを掲載する事例が急増しています。常に持ち歩くスマホを、情報に接触する最初の端末、あるいは日常的に接触を図る端末として利用することが当たり前になっています。

インターネットが普及することで息を吹き返したというか、改めて注目されているのが(地味だと思われていた)アウトドアメディアの広告なのです。

次回は、間接的な伝達手段の続きでダイレクトメールに触れながら、マーケティングの視点から印刷媒体の伝達手段を整理します。

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