【過去の人気コラム】#9 広報とPRって何が違うの?(1)
2019年年末から始めた「荒木洋二のPRコラム」と「聴くコラム」ですが、おかげさまで85回の配信を重ねて参りました。
2022年7月から2022年9月までは、筆者が出版に向けた執筆活動に集中させていただきたく、新規のコラムはお休みとさせていただきます。そこで再開するまでの間、過去の配信の中から人気のあったコラムを再送させていただきます。
2021年1月12日配信
こんにちは、荒木洋二です。
日本社会では「広報」と「PR」、どちらの言葉もある程度浸透しています。「自己PR」や「観光PR」のように、PRの方がより普及し市民権を得ているのではないでしょうか。企業社会でもPRの方に軍配が上がるでしょう。
◆PRとは何の略?
では、PRとはそもそも何を略したものであり、どんな意味なのか。皆さん、ご存じでしょうか。当社が属する業界ではよく知られたことですが、一般的にはあまり知られていません。
PRとは、「Public Relations(パブリック・リレーションズ)」の略です。企業・組織などを主語とする用語です。直訳すると、「公共関係」あるいは「公衆関係」となります。企業・組織にとって、パブリックを構成するのは誰なのか。それは自らを取り巻く関係者たちです。企業であれば、最も身近な存在として、経営者や社員・スタッフが挙げられます。顧客や取引先、株主・金融機関もそうです。本社や事務所、工場・店舗などを構える地域社会も関係先に当たります。まとめて「利害関係者(ステークホルダー)」といいます。PRを意訳すると、企業・組織などが利害関係者と良好な関係を築くことといえます。
少々脱線しますが、ステークホルダーについて説明します。米国では株主を「ストックホルダー」といい、リーマン・ショック前までは、会社は株主のものである、とする「株主至上主義」が市場を席巻していました。世界金融危機以降、極端な行き過ぎた株主重視を反省し、株主以外の関係者を重視する考え方が広がりました。そこでステークホルダーという言葉が生まれ、注目され、日本の企業社会にも訳語として「利害関係者」という用語が広がっていったのです。
◆アピールとプロモーション
PRとは、企業・組織などが利害関係者と良好な関係を築くことです。
そう理解したところで疑問が生まれます。ふだん当たり前のように使い、報道もされる「自己PR」と「観光PR」とは、そもそもどんな意味なのか。自己PRは主に就職の際に、観光PRは観光客を誘致する際に頻繁に使われます。使われ方からすぐ気付くのが、これらはPRではなく、アピール(=訴求)の意味合いで使われており、そう考えると納得できます。
私の高校時代の倫理・社会の担当教師は「PRとはプロモーションの頭2文字をとったもので、宣伝ということだ」と説明されたのを今も覚えています。「プロモーション」もよく使われるビジネス用語です。日本語では「促進」の意味なので、販売促進で「セールス・プロモーション」となるわけです。
報道機関にまで、自己PRや観光PRと使ってしまわれている「PR」の置かれた現状を私自身が憂えていますし、業界の社会的影響の非力さを反省してもいます。