【過去の人気コラム】#13 広報と広告って何が違うの?(3)
2019年年末から始めた「荒木洋二のPRコラム」と「聴くコラム」ですが、おかげさまで85回の配信を重ねて参りました。
2022年7月から2022年9月までは、筆者が出版に向けた執筆活動に集中させていただきたく、新規のコラムはお休みとさせていただきます。そこで再開するまでの間、過去の配信の中から人気のあったコラムを再送させていただきます。
2021年1月25日配信
こんにちは、荒木洋二です。
次に同じく現場での実務に焦点を当てますが、本来の広報の観点から見てみましょう。ここでも四つの違いがあります。
(「広報と広告って何が違うの? (2)」の記事はこちらから)
(2)情報の特性
本来の広報の場合、発信する主体である企業・組織にとっては、発信される情報は常に客観的です。社員や顧客を取材した場合、彼らの発言はもちろん事実に基づきながらも、表現には主観が多く含まれます。利害関係者である彼らにとっての主観は、企業・組織にとっては客観的といえるでしょう。プレスリリースでは事実のみを記載し、主観的な表現は使いません。パブリシティからの流れでいうと、報道は原則として常に客観的です。
広告は印象中心ですから、主観的な表現が主流です。
(3)相手へのメッセージ
当項目も広報関連の書籍でよく言及されることです。広報は「LOVE ME」であり、広告は「BUY ME」です。
広告は「商品を買って」「わが社を選んで」と連呼します。近年、インターネット広告の手法の一つとして、注目を浴びている「リターゲティング広告」をご存じの人も多いでしょう。一度でも広告主のウェブサイトを訪れると、何度も利用者の画面に広告を表示し続けます。商品を買って、わが社を選んで、と同じ顔(同一の広告表現)で主張し続けます。
広報はさまざまなメッセージの中に、常に相手を大切に思う気持ちが込められています。相手から長く選ばれ続ける存在で在り続けるために、自らの思いを込めて伝え続けるのが広報です。
(4)相手との関係
相手へのメッセージに違いが現れるのは、なぜでしょうか。相手との関係の違いからみるとよく分かります。広告は商品を介しての付き合いです。商品ありきです。商品を買い続けてくれるかもしれないからという、条件付き関係なのです。
広報では相手との関係は平等で無条件です。全ての利害関係者は価値を共に創造する仲間といえます。喜怒哀楽を共有する仲間です。共感という感情でつながっています。心理学では共感には二つの側面があるといいます。相手の感情を理解する「認知」という側面と、自分も同じように感じる「感情」面です。
私が長年にわたり、広報PRの世界で生きてきて、確信していることがあります。ずっと実務の視点からの違いばかり論じてきましたが、広報と広告には共通点もあります。何か分かりますか。丁寧に作る(表現する)こと、丁寧に伝えることです。この基本姿勢は変わりません。
そして、広報を土台とし、広告を実行することで効果は最大化し、成長につながる成果が上がるのです。
◆参考文献:『デジタル時代の基礎知識「PR思考」』(翔泳社刊、伊達佑美・根本陽平著)