Weekly Digest 先週を振り返る

9月6日、消費者庁は、キリンビバレッジ株式会社に対して、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。対象となった商品は果実ミックスジュースの「トロピカーナ100% まるごと果実感 メロンテイスト」です。詳細は公表資料で確認できます。2020年6月9日から2022年4月13日までの約22カ月間にわたり、販売されていました。

容器表面に「厳選マスクメロン」「Tropicana® REAL FRUIT EXPERIENCE まるごと果実感」「100% MELON TASTE」などと表示されていました。あたかも、原材料の大部分がメロンの果汁であるかのように表示されていましたが、実際はわずか2%程度でした。残りの98%程度はぶどう、りんご、バナナなどでした。容器表面のイラストもメロンが全面に打ち出されていました。

商品を手に取った人たちは、明らかにメロンの果汁が100%近いジュースと認識し、購入したに違いありません。キリンビバレッジは、消費者が誤認することを意図的に狙っていたのでしょう。有害な成分を混入したり、成分表示を隠したりしたわけではありません。しかし、消費者軽視の姿勢、不誠実な振る舞いに不快感を抱いた人は少なくないのではないでしょうか。

キリンビバレッジの親会社はキリンホールディングス株式会社です。同社は創業115年、資本金1,020億円、連結売上高1兆8,216億円、従業員数29,515人の日本を代表する大企業です。今回の事態に対して、どのような情報開示を行ったのかを同社ニュースルームで確認しました。キリンビバレッジの名前で「景品表示法に基づく措置命令に関するお詫びと再発防止策について」と題して、消費者庁の公表と同日に開示していました。
その内容は、極めて不十分だと言わざるを得ません。なぜならば、「優良誤認」と判断される表示を最終決定するに至った経緯や背景、その根本的な原因について一切触れていないからです。組織文化なのか、社内のチェック体制なのか、何も記載されていません。
再発防止策として「今回の措置命令を真摯に受け止め、命令の内容を役員および従業員に周知し、景品表示法を含めたコンプライアンスに関する研修を社内で徹底するとともに、表示に関するチェック体制を一層強化」すると記載されています。原因が明らかでないのに、実効力のある再発防止策を立てることができるとは到底思えません。記載内容も具体性に欠けた、おそらくマニュアル通りのものであり、真摯な姿勢も反省の気持ちもまるで伝わってきません。「たかがジュース、されどジュース」です。「細部に神は宿る」ともいわれます。

キリングループのこれからの企業姿勢を注視したいと思います。

先週、NewsRoomに投稿した記事をまとめてご紹介します。


9月5日(月) 荒木洋二のPRコラム
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9月5日(月) 図解と文字で学ぶ! 超解説「広報人 eラーニング」
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9月7日(水) 聴くPRコラム
【過去の人気コラム】聴くコラム ブランディングの鍵は「舞台裏」にあり(5)


9月9日(金) 図解と文字で学ぶ! 超解説「広報人 eラーニング」
初級講座「Ⅲ.実務能力編」 プレスリリースの作り方 プレスリリースを構成する各項目の作り方②


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