初級講座「Ⅲ.実務能力編」 プレスリリースの作り方 最終チェックリスト②

こんにちは。荒木洋二です。

今回は「プレスリリースの作り方」第14回、最終回です。

前回に続き、「最終チェックリスト」について解説します。前回の講座では、「①タイミング」と「②テーマ」を解説しました。今回は次のスライドに記載のとおり、「③構成要素」と「④文章表現」を解説します。

毎回振り返り、確認しましょう。プレスリリースとは何でしょうか。プレスリリースとは、組織の新たな取り組みを報道関係者に発表する資料のことでした。

③構成要素

プレスリリースの構成要素、構造の視点からのチェックです。主に次のスライドに記載の五つについて、もう一度最終的にチェックしましょう。

大企業のプレスリリースを見ても時折、「WHO=対象が誰なのか」「WHEN=いつから始めるのか」など、5Wに関する漏れがあったり、「HOW MUCH=料金体系」が抜けていたりします。最終確認の際に、漏れや抜けがないのかを再度確認しましょう。

④文章表現

最後に文章表現です。
ここでは表現における留意点として、次のスライドに記載の代表的な11個を挙げています。

詳しくは「中級講座 Ⅲ 実務能力編」の「文章の書き方」(講座番号23012〜30)で19回にわたり、解説しています。

では一つ一つ解説します。

1、謙譲語・尊敬語が混じっていないか?

プレスリリースとは報道関係者に発表する「資料」です。お手紙ではありません。ですので、謙譲語や尊敬語は使いません。資料における表現として、これら敬語は不適切です。記者にとっても違和感があるでしょう。いたずらに文字数を増やすことにもつながります。

例えば、「いたします」「ございます」ではなく、「します」で構いません。「お客さま」ではなく、「顧客」や「来店客」です。「ご利用」ではなく「利用」です。

2、短文になっているか?

短文、つまり短い文になっているかということです。
一つの文章が(読点をいくつか打つなどして)長くなると、一体何が言いたいのか、何を一番伝えたいのか、何が重要なのかが分かりづらくなります。どの用語がどれと関わりがあるのか、判別も難しくなり、誤解されることにもつながります。

最近、プレスリリース一斉配信事業者で配信されているプレスリリースを確認してみると、リード文の出だしの文章が100文字近いことが散見されます。最初の文章で全てを詰め込もうとし過ぎているのです。読みやすいのは60〜80字程度をいわれています。倍近く長いのです。
短い文章にしましょう。

3、単文になっているか?

単文、つまり単一のと文章になっているかということです。
一つの文章の中に主語と述語が一つだけの文章が、単文です。述語が二つ以上ある文章が「複文」です。複文になると、当然文章が長くなります。これも同じように何を伝えたいのか、よく分からないし、どの言葉がどれにかかっているのかが分かりづらくなってしまいます。誤解されることにもつながります。
一つの文章が複雑ならないように、複文でなく単文にすることです。

4、形容詞を使っていないか?

形容詞、つまり大小、長短、濃淡などを使っていないかということです。
これらは抽象的な表現なので、プレスリリースには適しません。しっかりと「数字」を使って具体的な表現に変えていきましょう。
ある製品の特徴として価格が「安い」、納期が「早い」、性能が「高い」が挙げられたとします。例えば、「競合製品の多くが2万円前後なのに対して、1万円と従来の半額」と表現すれば、誰が読んでも「安い」と理解できます。「競合製品の納期はほとんど1カ月かかるのに、10日で可能」と表現すれば、従来の3分の1ですから、確かに「早い」と理解できます。

このように「数字」を使って具体的な表現に変えていきましょう。

5、主観的な表現を使っていないか?

根拠の(エビデンス)がはっきりしてないことを書いてはいけません。経営者の思い込みに近い主観だったり、単なる現場感覚だったりすることはプレスリリースには適しません。人に何かを伝えたい、理解させたいなら使うべきではありません。小説や詩ではないのですから。
どうすればいいかというと、公表データなど活用して客観的な事実に置き換えましょう。手元に情報がないのであれば、しっかり調べて明記しましょう。

6、情緒的な表現を使っていないか?

プレスリリースは報道関係者に向けて発表する「資料」です。
詩でも小説でもありません。感想文でもありません。ですから情緒的な表現は適していません。
しかし、経営者や開発者などの事業や開発に対する熱い思いを、どうしても伝えたいということもあるでしょう。その場合は、引用符「  」を用いて、本人に語らせましょう。
例えば、次の点線で囲んだ部分のとおりです。

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今回の事業開始に当たって、代表取締役の荒木洋二は次のように述べています。
「私が25年間かけて、失敗を繰り返しながらも諦めずにこだわりを持って取り組んできた内容が凝縮されています。他社には決して真似できない製品だと自信を持ってお薦めできます」。
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ただ、ここが長くなり過ぎると本末転倒になりかねません。プレスリリースは2ページで収めるのが基本です。肝心な内容が手薄になっては意味がありません。

7、専門用語を使っていないか?

プレスリリースで、業界内の人や専門家にしか分からない、専門用語を頻繁に使っていることがあります。そんなプレスリリースを割とよく見受けます。

しかし、これは極力避けるべきです。専門用語は使わずに、一般用語で表現しましょう。IT(情報通信技術)業界でよくありがちで、外来語(カタカナビジネス用語)を使い過ぎています。インターネットが普及する中で、今やプレスリリースはニュースリリース(=新しい取り組み・打ち手を発表する資料)とも言われるように、報道関係者以外の人も目にする機会が増えています。それらステークホルダー(利害関係者)は専門用語を分かる人はごく少数です。伝なければ意味がありません。

どうしても専門用語を使う場合は、脚注などを入れて補足説明する必要があります。読む人がどんな人なのかを理解し、伝わるように伝える努力を惜しんではなりません。

8、外来語を使っていないか?

カタカナ表記の外来語は極力使わないようにましょう。

残念ながら日本の企業社会では、このカタカナ表記の外来語、つまりカタカナ・ビジネス用語が経営やマーケティングの現場で氾濫しています。お互いの解釈や認識が異なるまま、対話をしても意思疎通ができると到底思えません。大きなズレが生じるだけです。そこに何かの成果を期待することはできないでしょう。
表記の基準は『記者ハンドブック』(共同通信社)に準じることを強く薦めます。同書の「外来語表記」に載っている単語であれば、使っても構いません。ただ、載っていない単語は使わない、という表記のルールを社内で決めておくといいでしょう。

9、自社が主語の文章として書かれているか?

よく新聞などの記事を読んでいる人が陥りやすい表現があります。

文末における表現です。
記事では「〜としています」と結ぶ文章がよく見受けられます。これは報道関係者・記者が、取材した会社などに関して第三者の立場で書いているから、そう表現しているのです。
プレスリリースは企業自らが発信する、自社の媒体です。主語は自社なのです。ですから、こういう表現を適していません。

10、ふりがなを付けているか?

製品名がローマ字表記の場合、必ずふりがなを付けましょう。何と呼んでいいのか、分からないので製品名を覚えられませんし、間違った理解のままになってしまいます。フランス語やイタリア語などで表記してある場合、さっぱり分かりません。

人の名前の読み方が難しい場合、ふりがなを付けましょう。会社概要に記載する代表者の氏名の場合、読みやすい単語がある場合、ふりがなを付けるようにしましょう。

11、正式名称で表記しているか?

団体名や施設の名称などを正式名称で表記しているか、ということです。初出の際には略称では記載しません。必ずフルで名称を記載するのが基本です。

プレスリリースでは、背景を述べる部分で公共機関が発表しているデータを使う場合があります。その場合は、必ず正式名称で記しましょう。
例えば、次のとおりです。

・厚労省 → 厚生労働省(2回目からは略称でも問題なし)
・JETRO → 日本貿易振興機構(JETRO)

最後にもう一度、文章表現における留意点として、次のスライドに記載の11個を確認してください。

今回の講座で「プレスリリースの作り方」講座は全て終了です。

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