Weekly Essay 自ら伝える『トヨタイムズニュース』

先週1月26日、トヨタ自動車がトップ交代を発表しました。50代の佐藤恒治執行役員が次期社長に就任、13年トップを務めた豊田章男社長は会長に就きます。「さすがトヨタの広報は違う」と思わされた発表でしたし、未来の広報におけるスタンダードになるだろうと確信めいた思いを抱きました。

大企業のトップ交代となれば、大きな会場や社内のホールなどで記者発表会を開催するのが当たり前でした。しかし、今回は公式ユーチューブチャンネル『トヨタイムズニュース』の緊急生放送という形での発表でした。『トヨタイムズニュース』は「“本当のこと”を伝えるためのオウンドメディア」と称して、昨年12月30日に開設されました。元テレビ朝日のアナウンサー・富川悠太氏がMCを務めたことでも話題になりました。

今回の発表は、報道関係者だけでなく全てのステークホルダーに向け、自ら伝えたのです。私の記憶では、トヨタは2010年代後半に広報専用サイトとして「ニュースルーム」を開設しました。ニュースルームからメールアドレスさえ登録すれば、誰でもトヨタから直接ニュースを受け取れます。これは企業広報において画期的な出来事でした。まず、報道関係者に伝えるのが今までの広報の常識でした。すなわちメディア・ファースト、プレス・ファーストだったのです。インターネットがここまで普及した環境が整えば、当たり前なのかもしれませんが、トヨタはステークホルダーに自ら直接伝えるというステークホルダー・ファーストへと転換したといえます。広報の本質は、ありのままの姿を自ら伝えることです。トヨタはニュースルーム、『トヨタイムズ』、『トヨタイムズニュース』により広報の本質を貫いています。

今回の緊急生放送は、前述のトヨタ広報の一連の取り組みをたどれば、当然のことだったのでしょう。ヤフーニュースに掲載された『JCASTニュース』(2023年1月27日17時11分配信)では、「マスコミ中抜き」と表現していましたが、少々的外れだといえます。

近未来における企業広報の主流は、ニュースルームを開設し、全てのステークホルダーに自ら伝えることになると確信できた出来事でした。


1月23日(月) 荒木洋二のPRコラム
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