#17 広報PRの機能をインストールする
こんにちは、荒木洋二です。
◆経営の機能とは
企業はさまざまな部署が関わり合って、初めて成り立っています。事業を営み、成長し、存続するために欠かせない役割を各部署が担っています。各部署の仕事は、どれもが経営における重要な機能です。
「機能」という言葉を『広辞苑』で引くと、次のように説明しています。
【機能】(function)物のはたらき。相互に連関し合って全体を構成している各要素や部分が有する固有な役割。また、その役割を果たすこと。作用。
広辞苑より
機能といえば、有名な経営学者であるピーター・F・ドラッカー氏が述べる「四つの経営機能」を思い浮かべる人もいるでしょう。ただ、本コラムでは、そこには触れず、前述の意味合いで「機能」を捉え、単純に各部署の役割として話を進めます。
◆中小企業の経営機能
中小企業はどんな部署で構成されているのか、どんな機能があるのかを確認しましょう。インターネットで「業種 + 組織図」で検索してみました。規模によって差異があるので、中小企業に焦点を当てて分かりやすく整理し、上段にコスト部門、下段にプロフィット部門を配置しました。
製造業
・人事/総務/財務(経理)
・研究開発/製造/営業/品質管理
小売業
・人事/総務/財務(経理)/物流
・商品/販売
不動産業
・人事/総務/財務(経理)/物件管理
・開発/営業/
運輸業
・人事/総務/財務(経理)/整備/運行管理
・営業/輸送
IT系
・人事/総務/財務(経理)/品質管理
・システム開発/営業
規模が大きくなるにつれ、(内製化するか、外部委託するかの違いはあるものの)経営企画や情報システム、広告・宣伝などが加わっていく傾向があるようです。
◆抜け落ちている広報PRの機能
ところで、今回、あえてコスト部門とプロフィット部門という分類をしました。著者の経験上、この分類は、企業社会の中で大小問わず、通念として定着しているのではないでしょうか。組織内での対立やあつれきを生む、非生産的な分類です。プロフィット部門の社員がいわゆる「上から目線」でコスト部門を見下し、コスト部門の社員が肩身が狭かったり自分を卑下したりすることにつながります。同じ会社で働き、共に価値を生み出す一翼を担っているはずなのに、残念なことです。
どんな部署であったとしても、会社という組織全体を経営していくために必要な仕事をしています。一つ一つの仕事はどれも経営にとって意味のある機能です。
繰り返しますと、機能とは「相互に連関し合って全体を構成している各要素や部分が有する固有な役割」です。ほかにはできない「固有な役割」をお互いが果たし、企業全体が存在できるのです。
本題に入ります。
今まで見てきて明らかなように小規模事業者はもちろん中小企業、いや中堅企業にも広報PRに関する部署はほとんど存在しません。皆さんの経験からも理解できることではないでしょうか。つまり、広報PRの機能が備わっていないのです。ごっそり抜け落ちているのです。
パソコンなどの情報端末に例えると、企業理念やビジョンがOS(基本ソフト)です。各部署の仕事はアプリケーションに当たります。広報PRというアプリケーションがインストールされていないのが大多数の中小・中堅企業の実態です。
どうすればいいのか。
広報PRの機能をインストールすればいいのです。インストールが完了したら、企業経営という実践の場でアプリケーションを起動させ、使い始めるのです。
◆本来の広報PRとは
広報を行っていたとしても「一人広報担当者」という状況が多く見受けられます。
その場合、広報活動のほぼ全てはパブリシティに限定されています。パブリシティとは、「メディア露出」です。もう少し詳しく正しく説明すると、企業・組織がプレスリリースなどを通して報道関係者に情報を提供した結果、ニュースや記事として報道されることを指します。大企業が行っている広報活動の中でパブリシティは分かりやすく、目立ちます。(少々失礼な言い方ですが)派手なことだけに意識を奪われ、表面的にまねてみても成長につながる成果は生まれません。
結論から言うと、パブリシティの機能だけインストールしても望む成果は上げられません。「本来」の広報PRの機能をインストールしなければ、意味がありません。
なぜか。広報PR=パブリシティではないからです。
PRとはパブリック・リレーションの略で、広報とPRは同意語、同義語です。意訳すると「利害関係者と良好な関係を築く」ことです。利害関係者とは組織を取り巻く関係者のことですから、経営者・社員(スタッフ)に始まり、顧客、取引先、株主・金融機関、地域社会などが挙げられます。報道機関も利害関係者に当たります。
良好な関係を築くためにはコミュニケーションが欠かせません。
大企業が大企業になるために行ってきたコミュニケーション活動とは何でしょうか。情報発信に焦点を当ててみると、社員に対しては社内報、顧客に対しては顧客向け情報誌を発信してきました。いずれも100年を超える歴史があります。パブリシティが日本の企業社会に普及したのは戦後です。大量生産・大量消費の時代と連動して、テレビ局の開局、雑誌の創刊ラッシュが重なり、マスメディアが生成されていく過程で、パブリシティは大企業の中で定着していきました。
真に成長につながる活動とは、何なのか。大事なことは、目立つことだけでなく本質に目を向け、意識を向けることではないでしょうか。
◆広報PRの機能をインストールしよう
では、何から始めればいいのでしょうか。
広報PRに関するノウハウ(知識)を学ぶことです。そのノウハウに基づいて実務を着実に真摯に行い続け、スキル(能力)を身に付けることです。
実は広報PRというアプケーションは、経営の基礎体力を強化します。ほかのアプケーションによる施策の効能を最大化させることができます。
広報PRの本質とは、自らを取り巻く関係者たちに、自らの価値を、自ら伝えることです。
まだ、広報PRを始めていない企業・組織は広報PRの機能をインストールしましょう。パブリシティで悩んできる企業・組織も、「本来」の広報PRの機能をインストールしましょう。
取り巻く関係者たちから選ばれ続けることで企業は存続できます。選ばれ続けるためには、自ら伝え続けなればなりません。
その第一歩として、広報PRの機能をインストールしてみませんか。