初級講座 Ⅰ.理論・基礎知識 広報PRって何をするの? 広報担当者の立場と役割

こんにちは、荒木洋二です。

「初級講座 Ⅰ.理論・基礎知識編」は、今回が最後の講義です。ぜひ最後までしっかりと学んでいただきたいと思います。「広報PRって何をするの?」を四つに分けて、今まで説明してきました。最後4番目は、「広報担当者の立場と役割」についてです。

「理論・基礎知識編」の一番最初、「そもそも企業・組織とは?」で解説したように、社会が存続して初めて企業・組織も存在できます。あらゆる企業・組織は社会を構成する主体であり、一員ですから社会と無関係ではいられません。社会の存続が前提でその存在が成り立っています。そして、企業・組織と社会は関心と課題を接点に関係を築いているんです。どうやって企業・組織が価値を生み出すのか。価値を生み出し続けないと、存在できません。

企業・組織は、社会が抱えている関心をより強めたり、満たしたりする事業を営んでいます。あるいは社会が抱えている課題を解決する事業を営んでいます。関心を満たし、課題を解決することで社会の役に立っている、つまり価値を生み出しているのです。価値を生み出している、その営みの「表舞台」と「舞台裏」を伝えていくこと、それこそが広報です。

ですから、広報担当者は、自らの組織と、社会、社会の一員でもある自らの利害関係者たちを結んでいく、つなげていく接点となる立場なのです。企業・組織とさまざまな利害関係者の関係とは、組織内の窓口となる各部署やその部署の個人との関係だけ、個人同士の関係に陥りがちです。そうではなくて、直接関わっている利害関係者を組織としてつながらせていく、組織として利害関係者としっかりとつながっていく、その役割を広報担当者は担っています。

「伝わるをひもとく」の講座で示した図をもう一度提示いたします。広報担当者は利害関係者と「みる」「きく」「考える」「伝える」、つまり組織におけるコミュニケーションの中枢を担っています。

ですから、広報担当者は経営戦略に基づく広報戦略を立案する立場にあります。「考える」とは、すなわち戦略を立案する、その能力が必要だということです。

さらに広報担当者は専門人材として必要な知識を身に付けなければなりません。初級講座と中級講座の「理論・基礎知識編」で学べますので、ぜひ身に付けてください。知識(ノウハウ)だけでなく、能力(スキル)も身に付けなければなりません。能力とは組織が持つ能力と、広報担当者個々人が身に付ける実務能力、その双方が組織としては必要です。もちろん組織においてコミュニケーションの中枢を担うのは広報担当者です。組織として身に付けなければならない、「みる」能力、「きく」能力、これはしっかりとシステムとして備えていかなければなりません。詳しくは「組織能力編」で説明します。広報担当者は一人かもしれませんし、複数いるかもしれません。いずれにしても一人一人が実務能力を身に付ける必要があります。そうすることで組織全体に「広報文化」が定着していきます。

「広報人」に必要な能力があります。次の三つに大別できます。

①プランナー
②ライター
③プロモーター

①プランナー
まずは戦略・戦術を考える、立案する能力が必要です。プランナーです。自らを取り巻く環境や社会情勢など全体を俯瞰できる能力ですから、「鳥の目」といえます。

②ライター・エディター
次に広報媒体を作成するために、取材する、編集する、文章を書く能力が必要です。現場に足を運ぶ、現地・現物・現場を取材するということですから、ライター・エディターですね。レポーターという立場でもありますね。これは細部を、複眼で多面的に見つめる「虫の目」といえます。

③プロモーター
3番目は、世の中の流れ、潮流を読む能力が必要です。つまり「魚の目」といえます。これはプロモーターの立場です。さまざまな企画を立て交渉していくという役割です。

詳しくは「実務能力編」で今後一つ一つ解説していきます。

広報担当者は組織のコミュニケーションの中枢を担う存在です。企業・組織の理念や価値観を中心に、ビジョン、目指す姿を実現するために、利害関係者を価値を共に生み出す仲間として、信頼関係を築き上げていくのです。

ここで忘れてはいけない言葉があります。

「魔法の杖」はない

ということです。

何ごとも短期・単発で判断しないということです。長期・全体の視点が重要です。もちろん一定期間で反省も改善もします。1年後、2年後、3年後、5年後、10年後とビジョンの実現を目指しながら進んでいく。そのために一番大事なことは、その期間走り切ることができる基礎体力を維持・強化することです。経営の基礎体力とは、広報PRによってもたらされる信頼関係、利害関係者との共感に基づく信頼関係なのです。ですので、これは地道にやり続けるしかありません。中小・中堅企業、スタートアップの経営者と話すと、「魔法の杖」を探しているのではないかと思うことがあります。何かのきっかけでニュースで報道されたり、SNSで「バズ」ったりするなど、目立つことで劇的に環境が変化する、劇的に組織が成長する、売上高が増える。そういう「魔法の杖」を探して、パブリシティやSNSに取り組む経営者が多い気がしてなりません。

しかし、「魔法の杖」はありません。あるとしたら、「組み合わせの妙」と「積み重ねによる弾み車」しかありません。これをやり続けることで、周りからみれば驚くような成長が実現できるということです。

今回の、「理論・基礎知識編」の最後の講座をもう一度振り返り、まとめます。
広報担当者の役割をしっかりと理解したうえで、次の「組織能力編」「実務能力編」をぜひ学んでいただきたいです。

・広報担当者とは自らの組織と社会そして利害関係者を結ぶ接点である
・組織内の各部署と直接関わっている利害関係者を、組織としてつながらせる役割がある

ゆえに
・広報担当者は組織におけるコミュニケーションの中枢を担っている

そして具体的には
・経営戦略に基づく広報戦略を立案する

それを実行するために
・必要な知識と能力を身に付ける

そうすることで
・組織全体に「広報文化」を定着させる

・必要な三つの能力(鳥の目、虫の目、魚の目)を身に付ける
・「魔法の杖」はないから地道に続ける

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