中級講座 Ⅰ.理論・基礎知識 戦略設計と活動計画 戦略とは?/そもそも戦略とは?
こんにちは、荒木洋二です。
中級講座「I.理論・基礎知識編」は、今回から「戦略設計と活動計画」について8回にわたり、解説します。
「戦略設計と活動計画」は、三つの項目で構成されています(※下図参照)。
1.戦略とは?
「戦略とは?」では、次の三つに分けて解説します。
①そもそも戦略とは?
②経営理念
③企業価値
では、早速、最初の「①そもそも戦略とは?」について見ていきましょう。
⑴経営戦略
経営戦略とは、そもそも何でしょうか。
初級講座の「I.理論・基礎知識編」でも、何度も「そもそも企業とは何か」、「そもそも広報・PRとは何か」と問い掛けてきました。広報戦略を設計するためには「そもそも戦略とは何か」いうことから、整理していく必要があります。
経営戦略とは、経営の意思であり、利害関係者との約束です。利害関係者との約束こそが経営戦略であるということです。もう少し詳しく見ていきましょう。
企業・組織が利害関係者に約束します。何を約束するのかというと、どんな価値、つまりどんな便益や体験などを提供するのか。われわれはあなたに対してこんな価値を、こんな便益体験を提供しますという約束をすること、これが経営戦略です。社員、顧客、取引先、株主など、それぞれの利害関係者と約束します、約束するということは、期待を醸成します。その期待に応えることが(企業・組織の)責任です。「応える」は英語では「レスポンス」です。では、英語で「レスポンシビリティ」といえば何でしょうか。「責任」ですよね。期待を醸成し、その期待に応えるのが責任なのです。
つまり、企業・組織は利害関係者との約束を守ることによって、責任を果たすことができます。そして、その結果、利害関係者から信頼と共感を得ることができます。
⑵戦略の3段階
経営戦略とは何かが明らかになりました。次に戦略には3段階あります。
経営戦略とは、利害関係者に対してどんな価値をどのように提供するのかを示したものです。そのもとでコミュニケーション戦略は立てられます。コミュニケーション戦略とは、それぞれの利害関係者たちとどう関わり、どうつながっていくのかを示したものです。
企業が行うコミュニケーション活動には「守備範囲」があります。広告やマーケティングもコミュニケーションの一環で行っています。対象となるのは、市場です。まだ直接的な関係を築けていない、「未来」の、「明日」の利害関係者候補が主な対象です。
では広報戦略とは何でしょうか。対象はどうなのでしょうか。広報とはパブリック・リレーションズであり、利害関係者との良好な関係を築くという概念です。企業・組織にとってのパブリックとは、利害関係者たちのことです。すでに利益も損害も共有する、相互に影響を及ぼし合う関係を築いている者たちです。広報の守備範囲は「現在」の利害関係者たちです。それぞれの利害関係者に向けて、どんな広報媒体を作り、どのように伝えていくのか。これを示したものが広報戦略です。もう少し深掘りしますと、広報媒体で何かを伝える前に、利害関係者たちとしっかり向き合い、その行動を観察したり、その声に耳を傾けたりする、そのような活動があってこそ、広報媒体の内容は決まっていきます。
経営戦略のもとにコミュニケーション戦略が描かれ、その一環で、その一部を構成するのが広報戦略です。このように3段階の戦略があるということを理解しましょう。
⑶戦略の「前」と「後」
最後に戦略の前後を考えましょう。戦略以前に何が必要かということです。
そもそも企業には経営理念があります。これは企業・組織の在り方を示すものです。その経営理念に基づいて経営戦略は立てられます。経営戦略とは利害関係者との約束です。利害関係者とどう関わって、どうつながっていくのか。その結果として、利害関係者から信頼と共感を得ていく。その信頼や共感こそが企業価値といえます。
つまり、経営理念という在り方のもと、経営戦略という関わり方、つながり方があります。その結果が企業価値として表れます。「在り方・関わり方(つながり方)・表れ方」という三つがあるのです。経営戦略には前と後ろがあります。
「ゴールデン・サークル」理論をご存じでしょうか。
「WHY(なぜ)」、「HOW(どうやって)」、「WHAT(何を)」で構成される三つの円です。
「WHY」は企業理念、経営理念です。どのようにつながっていくのか。どうやって価値を生み出すのか。これが「HOW」です。そして、企業価値が「WHAT」です。
このように経営戦略の前と後ろも一つ一つ丁寧に整理していくとこのような形になるわけです。
今回の講座では、「戦略設計と活動計画」の「1.戦略とは?」、その中の「①そもそも戦略とは?」について解説しました。
次回から2回にわたり、「②経営理念」について解説します。