初級講座「Ⅲ.実務能力編」 ファクトブックの作り方 6.最終チェックリスト
こんにちは、荒木洋二です。
「ファクトブックの作り方」講座は今回が最終回です。
「6.最終チェックスト」について解説します。
ファクトブックは毎年度、期初に必ず更新しましょう。前期末の最新情報、データにもれなく更新しましょう。年度で常に最新情報に更新してあることが大切です。古い情報のままでは「今」のありのままの姿とはいえません。正しく、「今」の姿、事実を伝えるのです。
出来上がった時点で、あるいは更新情報が出そろった時点ですぐにウェブサイトで公開したり、印刷媒体として印刷したり、電子データとして配布したりせずに改めて抜けや漏れがないかをチェックする必要があります。その際の留意すべき点をまとめると、次のスライドに記載の通りです。
チェックすべき点を二つに分けて詳しく説明します。
◆チェック①
まず、情報は最新のものに更新されているのか、数字に誤りはないのかということです。
今まで述べてきた第1部、第2部、第3部で扱っている全ての情報、数字をチェックする必要があります。
第1部から第3部まで、各項目で一覧できるようにそれぞれ1枚のスライド、計3枚のスライドでまとめました。ご確認ください。
◆チェック②
二つ目として、文章表現は適切かということです。全部で八つの要点にまとめました。
①敬語(主に謙譲語、尊敬語)が混じっていないか
ファクトブックとは組織の今のありのままの姿を正しく伝える資料です。つまり、あくまでも資料なので敬語は必要ありません。お手紙ではなく資料ですので、あえて謙譲語や尊敬語を使う必要はないと考えています。
②短文になっているか
読点が多く、一つの文章が長くなりすぎると、何を伝えたいのか分かりづらくなります。正確に分かりやすく伝えるために、長文は避け、短い文にしましょう。
③単文になっているか
一つの文章の中で(一つの)主語に対して述語が二つ以上ある文章を複文と言います。一つの主語に一つの述語だけの文章を単文と言います。チェックの要点は複文になってないかどうかです。複文になると、何を言いたいのか、どの単語がどの単語に関わっているのか、分かりづらくなります。分かりやすく伝えるためには極力単文とすることが望ましいのです。
④専門用語を使っていないか
自社を取り巻く関係者の中に専門家はいたとしても、数は少ないに違いありません。そう考えると、専門用語をむやみに使うことは決して勧められません。極力、一般用語で表現するか、専門用語を使う場合は脚注を入れるなどの配慮が必要です。
⑤外来語を使っていないか
企業社会の日常において、大多数のビジネスパーソンはカタカナ表記の外来語を非常に安易に使ってしまっています。最新の潮流に乗り遅れたくない気持ちを抱いていたり、便利に感じたりするなどの理由で使っているのだと予想します。しかし、正しく伝わらない場合がほとんどではないでしょうか。同じ用語でも相互の認識が違えば、対話は成立しないでしょう。もちろん、それで仕事がしっかりと進むわけがありません。そう判断する人も少なくないでしょう。
ですから、極力カタカナ表記の外来語は使わないようにしましょう。共同通信社発行の『記者ハンドブック』を基準とすることを薦めます。別の講座で詳しく説明しますが、同書を参照して、外来語を使うか使わないかを決めてください。
⑥自社が主語の文章として書かれているか
新聞記事などを読んでいる人が陥りやすい、誤った表現があります。自社が発行する広報媒体はプレスリリースもファクトブックも、当然のこととして常に自社が主語であるべきです。にもかかわらず、「〜としています」と記載してある文章を見ることがあります。公的機関や他の組織などの情報を引用したり、他者の発言を掲載していたりするわけではないのにです。これは明らかに誤った表現です。
あるいは自らが開催したセミナーであるにもかかわらず、「開催された」と表現するのも誰を視点としたものなのか、おかしな文章です。記者が第三者目線で取材したわけではありませんから、「開催した」とするのが適切でしょう。
例えば、社内報で広報部スタッフがインタビュアーとして自分の名前を公にして、人事部が開催した新人研修をレポートするとしましょう。その場合、「●月●日、新人研修が開催された」とするのは構いません。
ただ、ファクトブックは法人としての会社が主語となる資料ですから、「開催した」とすべきです。
⑦ふりがなを付けているか
例えば、製品名がローマ字表記の場合、どう読めばいいのか、どう呼べばいいのかが分かりません。この場合、ふりがなをつける必要があります。人の名前の読み方が難しい場合も同様です。
⑧正式名称で表記しているか
団体名などを略称で記載していることがあります。初出の際は必ず正式名称を記載しましょう。
例えば、「厚労省」と略さないで「厚生労働省」と記載するのです。次に「JETRO」の場合はどうでしょうか。初出の際は略称にしないで、「日本貿易振興機構(JETRO)」としましょう。以降は「JETRO」で構いません。
以上、この8個が主な文章表現チェックの要点です。
最後に今回の講座をまとめると、次のスライドの通りです。
これで「ファクトブックの作り方」講座の全13回が終了です。
次回からは「プレスリリースの作り方」講座です。