Weekly Essay 「ビジネスと人権」と人権ビジネス(2)

先週の当コーナーで述べたとおり、RMCA主催で、5月30日(火)夜、東京・銀座一丁目の会場でLGBTをテーマにしたセミナーが行われました。講師を務めたのは、大手芸能プロダクションの構成作家であり、LGBT+アドバイザーでもある武田英樹さん。
ここでLGBTとは何かを改めて確認してみましょう。Lはレズ(女性同性愛者)、Gはゲイ(男性同性愛者)のことです。Bがバイセクシャル(両性愛者)で、Tがトランスジェンダー(性同一性障がい者)です。「性的少数者の総称」として用いられることもあるといいます。武田さんは、自分自身がGであることを公言しています。
セミナー概要は、以下のセミナータイトルをクリックすると確認できます。

第124回東京オープンセミナー「知らないと損をする、リスクマネジメントとしてのLGBT+対策~ポストLGBT+としての『SOGI』の役割~」

セミナーはリアルとオンラインのハイブリッド開催で、30人弱の人たちが参加しました。タイトルにある「SOGI(ソジ)」とは、何でしょうか。日本労働組合総連合会によると、「性的指向(好きになる性)、性自認(心の性)、それぞれの英訳のアルファベットの頭文字を取った、『人の属性を表す略称』」のことで、「異性愛の人なども含めすべての人が持っている属性のこと」を言うそうです(同連合会ウェブサイトより)。

セミナーを受講してみて、非常に驚き、感心したことがあります。一言で表現すると、武田さんの語る内容が実にバランスが取れていた、ということです。偏っていませんでした。特に印象深かったのが、「当事者が有識者であるとは限らない」という言葉でした。当事者が語る場合、感情的な(かつ偏った)内容が多く発せられがちだ、とは武田さんの弁です。そのことが返って、LGBTに関する誤解や社会の不寛容を助長することを憂慮しての発言だ、と私は捉えました。実に冷静に現状を捉えており、LGBTに関して、どうにも快く受け止めきれない人たちが一定数いることにも理解を示す言葉もありました。

改めて人権とは何か。『広辞苑』によれば、「人間が生来持っている生命・自由・平等などに関する権利」です。法務省では、「人々が生存と自由を確保し,それぞれの幸福を追求する権利」としています。性加害や、LGBTに対する差別はこの人権を犯し、脅かすものです。このような実態を見過ごしてはならない、と強く思います。
一方で、被害を受けたり、疎んじられたりしている「弱者」に表面上は寄り添う姿勢を示しながら、実のところ、自らの経済的な利益のために動く人たちも少なくないと聞きます。これが「人権ビジネス」です。

「ビジネスと人権」の問題に真摯に向き合い取り組んでいるのか。単なる「人権ビジネス」なのか。しっかりと見極める目を養いたいと思います。


5月29日(月) 荒木洋二のPRコラム
【過去の人気コラム】#67 パブリシティの未来(1)


前の記事へ 次の記事へ