Weekly Essay なぜ「舞台裏」が重要なのか 〜映画『怪物』で再認識
7月2日(日)、二子玉川(東京・世田谷区)の109シネマズで映画『怪物』(監督:是枝裕和、脚本:坂元裕二)を観賞しました。第76回カンヌ国際映画祭にて、5月27日(土)の授賞式典で「脚本賞」を受賞した作品です。かなり報道されましたし、6月から日本で劇場公開されているので、ご覧になった人もいると思います。
観賞後、再認識したことがあります。何事においても「舞台裏」を知ろうとすることが大切だ、ということです。
私たちは往々にして、今、目の前で起こっている現象の表面だけしか見ません。当事者であれば、表面だけしか見えません。つまり自らの視点からだけで物事を捉えてしまい、それが全てだと思い込みます。そして、性急に判断し、行動しがちです。この思考や姿勢は多くのリスクをはらんでいます。
「舞台裏」、つまり事象の背景、そこに至る過程、個々が抱えた事情、それぞれが置かれた立場、お互いの関わり方に、われわれは関心を持ち、思いを巡らすことがなかなかできない、ということです。関心が持てない、思いを巡らすことすらできなければ、真相は何も見えてきません。人生においても、経営においても必ず「舞台裏」がある、それを知ろうとする心構えを常に持ち続けることが重要だ。そんな感慨にひたりました。
どんな映画なのか。公式サイト「STORY」から引用します(括弧内、原文のママ)。
「大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それはよくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある朝、子供たちは忽然と姿を消したー。」
映画では、まずシングルマザーを主体とした、彼女の視点から描かれます。それはシングルマザーの主観とも言えます。彼女は一人息子(おそらく小学校高学年)との会話から、担任の教師が息子をいじめているのでは、との疑いを持ちます。そう疑いたくなるような言動も目の当たりにし、さらにその思いを強くしていきます。
次に同じ出来事が学校教師の視点から描かれます。するとまるで違う事実が浮かび上がってきます。挙動不審にしか見えなかった行動の背景、理由が見えてきます。映画はここで終わらず、さらに子どもたちの視点へと移ります。そこでは大人たちからは見えなかった事実や、そこに直面した子どもたちの心の動きまでが丁寧に映し出されていました。
現実の生活では、映画のような多角的な視点で、全体を俯瞰して捉えることは困難です。だからこそ、気付きが得られました。皆さんも関心があり、時間が割けるのであれば、ぜひ一度観賞してみてください。
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