【ポッドキャスト #23】そこまでオープンにする!? トヨタ自動車の徹底した情報公開
トヨタは、ニュースルームを活用して、「当たり前のコミュニケーション」を愚直なまでに実践。メールアラート機能を駆使し、一斉に情報公開!
記者発表会、アナリスト説明会、決算説明会などを、視聴制限を設けずにライブ配信&アーカイブで公開しています。
世界で最も先進的な取り組み トヨタ自動車のグローバルニュースルームは本来の広報の在り方を体現
荒木: 皆さん、おはようございます。
濱口: おはようございます。
荒木: 今日は5月29日、木曜日。『広報オタ俱楽部』今日も元気に始めてまいります。
『広報オタ倶楽部』は、本来の広報、企業広報の在り方を広めるべく、28年以上にわたって企業広報活動を支援してきた私、荒木洋二による「オタク」目線で語る広報の哲学ラジオです。聞き手は・・・
濱口: 「まな弟子」の濱口ちあきです。
荒木: 「まな弟子」です。
濱口: やばい! 荒木さんから(直接)言われると(気持ちが)上がりますね。
荒木: 全面的に肯定します。
濱口: ありがとうございます。めちゃくちゃうれしいです。毎回、言ってほしいですね。
荒木: そうだよね。無言だとスルーされたような気持ちになるよね。
前回(#22)の放送は「箸休め」的な回として、時事ネタ(とは言っても1カ月以上前の話になってしまったけれど)で「フジテレビの問題」を取り上げたね。そして、「ステークホルダーを大切にすることの重要性」や、「組織がこれからどう変わっていくか」という点について触れた回だった。
#21(5月15日放送)から本格的に取り上げているテーマが「ニュースルーム」について。簡単に振り返ると、「ニュースルーム」とは、広報DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、組織や企業全体のDXを牽引する重要な役割を担う存在である。そんな内容を伝えたね。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という考え方は、アメリカの名だたる大企業や日本のトヨタを含む大手企業に対して、DXの指導を行ってきたデヴィッド・ロジャース教授(コロンビア・ビジネス・スクール)によって定義されている。彼によると、DXとは「デジタル戦略 × 組織変革」であり、単なるIT化ではない。つまり、デジタル技術を活用するだけでなく、そこに組織自体も変革していくものが加わって初めて「デジタルトランスフォーメーション」になるということ。
ステークホルダー間の垣根、時間と空間の壁を越え、双方向のコミュニケーションを実現
荒木: そう考えると、#22の回で触れたフジテレビの話も、「組織変革に関わること」という視点から捉えると「ニュースルーム」の話に通ずる意味合いを持つよね。
「ニュースルーム」がなぜ重要な役割を担っているのかというと、それはステークホルダーの立場に関係なく、これまで交わることのなかった人たち、例えば、社員と顧客、社員と株主、さらには顧客と株主、サプライヤーと顧客、サプライヤーと株主。そのような直接的な接点を持ちづらかった異なる立場のステークホルダー同士が、双方向に情報をやり取りし、お互いを理解し合う機会が生まれる。
従来は、「社員対誰か」、つまり社員の一部署と特定(相手側)のステークホルダーだけの関係にとどまりがちだったコミュニケーションが、ニュースルームというデジタル媒体を活用することで、顧客と株主、サプライヤーと株主といった新たな動線が生まれ、多様な立場の人たちと直接つながることができるようになった。
それぞれが直接相手のことを知ることによって、社員だけでなく、ステークホルダー全体を巻き込んだ「組織としての一体感」が醸成され、「私たち、全員仲間だよね」というような当事者意識が育まれていく。そうした状態をつくる可能性を秘めているのが「ニュースルーム」なんだよね。
前置きが長くなってしまったけれど#21(「ニュースルーム」についての内容)は、これまでの紙媒体による広報では実現できなかったこと、あるいは実現に時間を要していたことが、ニュースルームの導入によって、時間と空間の壁を越え、直接的に、あるいはニュースルームといった媒体を介して交流やコミュニケーションが深まることで、大きな組織変革を起こす可能性がある。という内容の話をしたね。
濱口: 前置きは大事ですからね。
荒木: 今回は、私が「日本で最も熱心にニュースルームに取り組んでいる」と認識しているトヨタ自動車の「グローバルニュースルーム」を例に挙げて、そこで実際にどのようなことが起きているのか、トヨタさんが何をしているのか、そしてそれが従来の広報とどう違うのか、という点を紹介していきたいと思う。
濱口: 荒木さん、トヨタ自動者さんが大好きですもんね。
荒木: そうなんだよ。トヨタさんを好きになったきっかけは、2019年ごろにトヨタ自動車のニュースルームのメールアラートに登録して、情報を受け取るようになったことだった。「あ、トヨタ自動車ってニュースルームもやっているんだ」と思って、そこからニュースルームをウォッチし始めたんだよね。
すると、トヨタさんの企業としての姿勢や考え方が見えてきて、「これって本来の広報の在り方だよな」と感じた。
海外のニュースルームとはまた違って見えて、もしかしたら(あくまで私の知る範囲内ではあるけれど)トヨタさんは、広報DXを推進していく上で、世界的に見ても模範的な企業なんじゃないかと思っている。
濱口: 「ニュースルーム」という言葉自体はもっと前からあったんですか。
荒木: (#21でも話したように)「ニュースルーム」という言葉は、欧米、特にアメリカから入ってきた言葉(概念)なんだよ。大きく二つの流れがある。
一つはイギリスからのもので、日本でいえば財務省のような立場にある機関が、「情報を一元化し、迅速に公開していくことは、上場企業にとって極めて重要である」また、「インターネット時代においては、企業がステークホルダーに対して必要な情報を全て一元化し、オープンにしていくプラットフォームが必要である」といった指針を打ち出したこと。
もう一つはアメリカからの流れで、2000年代初頭から企業が商品ブランドごとに「ニュースルーム」を立ち上げ始めた。その後、(ブランド単位から)企業全体のニュースルームへと発展した。
アメリカでは、自社の活動や取り組みを発信するためのウェブ上のディレクトリとして、「newsroom(ニュースルーム)」と明示された専用ページを設ける企業が増えた。そこに自社のニュースや情報を掲載する。この流れが日本にもやってきて、「ニュースルーム」という言葉が広がってきたんだよね。
いわゆるGAFA(ガーファ)と呼ばれるような企業も「ニュースルーム」という名称で情報発信をしているところが多い。そういう中で比較してみても、トヨタさんはすごく力を入れているし、本来の広報の在り方にかなり近いんじゃないかなって思っている。
メールアラート機能により、重要な情報をリアルタイムで、瞬時に全てのステークホルダーに届ける
荒木: トヨタさんのすごいところはいくつもある。
ところで、(ニュースルーム以前のことをその前提、前段として説明すると)昔は「ブログ」という名前で、企業が社内報のような内容や広報的な情報を発信していたんだよね。例えば、その会社の日々の日常(出来事や取り組みなど)を「社長ブログ」として(まるで日記のように)等身大で伝えていた。
つまり、ブログというのはツールの名前にすぎなくて、やっていることは広報と変わりない。だから「ブログ」も広報だし、「ニュースルーム」も広報。ただ、ニュースルームはそのブログの進化形ともいえる。より多機能で、動画も使えるし、デジタル技術の発達によってノーコードで扱えるツールも増えている。まさにブログの延長線上で進化したものが「ニュースルーム」だね。
(少し前置きが長くなったが、話を元に戻すと)トヨタさんのすごいところは、ニュースルームに「メールアラート登録」という機能が組み込まれていて、重要な情報をリアルタイムで、瞬時に全てのステークホルダーに届けられる点なんだ。
だから、うちの会社でもトヨタさんを参考にして、メールアラート機能を搭載したニュースルーム用のコンテンツマネジメントシステム(CMS)を提供している。
トヨタ自動車のウェブサイトには、「グローバルニュースルーム」というコーナーがあって、そこに「メールアラート登録」の表示がある。メールアドレスを登録するだけで、その日からトヨタから直接情報が届くようになる。これは「グローバルニュースルーム」で公開された記事と連動していて、記事が公開(掲載)されると同時に、登録者にメールで通知が送られてくる仕組みになっている。
メールには記事のタイトルだけが書かれていて、そこをクリックすると該当の記事にアクセスできるという流れ。ウェブサイトはどうしても「プル型」だから「待ちの姿勢」なんだよね。見る側が自分から見に行こうと思わないかぎり、ウェブサイトにはアクセスしない。だから、どれだけ良い情報を出していても、「待ちの姿勢」では見に来る人は少ない(見てもらえない)。
だからこそ、「プッシュ型」の仕組みと組み合わせることが必要なんだ。
(「プッシュ型」はメール以外にもいろいろあるが)代表的なプッシュ型の機能の一つが「メール配信」。メールが届くことで、「あ、トヨタのグローバルニュースルームで新しい情報が更新されたんだ」って気付ける。それで、メールに書かれているタイトルを見て、「あ、これ面白そう」と思ったらクリックして、企業のウェブサイトに飛べる仕組みになっている。
そして、トヨタ自動車が発信しているさまざまな情報の中の一つとして、「グローバルニュースルーム」の記事がある。この「メールアラート登録」と「メール配信機能」をセットにして運用しているところが、本当にすごいと思うんだよね。
その仕組みによって、リアルタイムで全ての人に等しく、同じタイミングで情報を届けている。
例えば昔は、プレスリリースというと、まず報道関係者や記者クラブに持ち込んで、それがニュースとして取り上げられることで、多くの人たち(ステークホルダーだけでなく、それ以外の人たちにも)がトヨタ自動車の最新情報を知ることができた(最新の情報が伝わっていた)。
当時は、(企業自身が)紙に刷って郵送するのも大変だったから、新聞やテレビのように毎日情報を発信しているマスメディアに取り上げてもらう方が、より早く、そして確実に、大切な情報を多くの人に届ける手段として機能していた。
それは、たとえリスク情報(つまりマイナス面の話)だったとしても、それを必要としている人たちに伝えることで、二次被害や三次被害を防ぐ、という意味合いもあった。だから、影響を与える情報(プラスでもマイナスでも)については、とにかくマスメディアを通じた発信の方が、「早く、広く、確実に」浸透していった。そうした「まずはメディアに」という流れが今までの上場・大手企業の姿勢だったんだよね。
メディアファーストからステークホルダーファーストへの転換
荒木: ただ、インターネットの時代になって、もう昔のように「メディアファースト」である必要はなくなってきた。以前は「ニュースリリース」という名前で企業のウェブサイトに情報を載せてはいたけれど、それを見に行くのは主に記者たちだった。つまり、ニュースリリースは、企業と報道関係者との間だけのコミュニケーション手段だったわけなんだよ。
でも今は、「グローバルニュースルーム」という仕組みがあって、そこに登録すれば誰でも、同じ情報を、同じタイミングで受け取ることができるようになった。これは本当に画期的なこと。「メディアファースト」じゃなくて「ステークホルダーファースト」になった、ということなんだよね。
濱口: 記者であろうと、私のような一消費者であろうと、同じタイミングで、同じ情報が届くということですからね。
荒木: これは画期的なことではあるんだけど、本来は当たり前のことでもあるんだよ。今は、直接コミュニケーションを図る手段や方法が簡単に使える時代なんだから、それを使って自分たちの言葉で直接伝えるべきなんだよ。
もちろん、情報が伝わりにくい人たちに対しては、(これまで通り)報道を通じて伝えるという手段もあっていい。でも、一度でも接点を持ったことがある人たち、すでに知ってくれている人たちに対しては、やっぱり直接伝えた方がいい。
メディアが第三者として(企業の動きを)評価し、それを受けてどう行動するかというのは、それはそれで意味がある。でもまずは、自分たちが「何をやっているのか」「何をやってきたのか」「何が起きたのか」「これから何をしようとしているのか」を正直に、そして直接伝えていきましょう、ということ。
そのための「メールアラート登録」なんだよね。そして、その登録内容は「メールアドレス」のみということで、個人情報にも引っかからない。
濱口: なるほど。
荒木: 確か2020年ごろのこと、「トヨタさんが、記者クラブへのニュースリリースを止めたらしい」という話を耳にした。それはつまり、トヨタさんは「ニュースルームファースト」であるということで、言い換えれば「ステークホルダーファースト」。ニュースルームにメールアラート登録をしている人には、報道関係者と同じタイミングで、情報が届く。
私がトヨタさんのファンになった理由の一つが、そこにある。例えば「トヨタからメールがきたな、こんな新しいこと始めるんだ」と思っていたら、1時間後くらいにYahoo!ニュースのトップにその情報が出ている。私はニュースになるよりも先に、その情報を直接トヨタさんから受け取っているということなんだよね。それで、「同じタイミングで配信しているんだ」と気が付いた。
それが一番はっきり分かったのが、2020年4月に行われた、トヨタ自動車とNTT本体の資本提携に関する記者発表会だった。私はニュースルーム(メールアラート)に登録していたから、「記者発表会を開催します」という案内メールがちゃんと届いた。そして当日には「今からライブ配信をします」という連絡も届いた。
これまでの記者発表会というのは、基本的に都心の会場を借りて行われ、大手企業の場合だと200人~400人もの記者が報道用のカメラを持って集まっていた。それを取材・編集したものが、テレビや新聞を通して伝えられる(それが今までのスタイルだった)。
ところがトヨタさんの取り組みは(トヨタ自動車が最初ではないんだけども)、昔だったら記者しか入れなかった記者発表会を、私たち一般の人でもライブ配信をノーカットで見れてしまう(見られるようになっている)。
私たちメールアラート登録者は見るだけで質問はできないけれど、記者には(オンライン参加でも)質問ができるような特別な仕組みが用意されていたみたいなんだ。コロナ禍の時期だったけれど、会場には椅子の間隔を空けながらも、かなりの人数の記者が実際に入っていたし、オンラインで参加している記者もいた。そういう記者たちによる質疑応答の様子も、全部ノーカットで配信され見ることができた。
これまでだったら、どんなにその企業の発表に関心があっても、会場がどこか分かっていて、時間に余裕があっても、記者でなければその場に入ることはできなかった。でも今は、記者ではない私たちでも、(情報をリアルタイムで)見ることができる。
思い込みや固定観念にとらわれないことが大切
荒木: この記者発表会をきっかけに、「記者発表会は記者だけが集まるもの」という私の中にあった思い込みや固定観念が取っ払われた。「そうか、いずれ報道を通じて世の中に知らせることだから、記者だけに限定する必要はないんだ」と気付かされたんだよね。今までは、「広く伝えるにはまずマスメディアを通すしかない」ということが当たり前で、そうせざるを得なかった。
でも今は、直接伝えることができる技術も手段もあるんだから、自分たちの言葉で、編集されることなく、直接伝えてもいいよね。もちろん、報道機関が第三者の立場でさまざまな意見を述べることは(これからも)大切だし、必要なことだと思う。でも、それと同時に、自分たちの言葉で自分たちの情報をそのまま伝えていくということも、企業にとってすごく重要なこと。
どう受け止めるかは報道関係者としての立場や、ステークホルダーとしての立場など、人それぞれ受け取り方はさまざまだろう。でも、そうした多様な立場の人たちに対して、「自分たちの言葉で、同じタイミングで、ちゃんと情報を届けていく」この姿勢こそが、本当にすごいなと思う。
濱口: 記者のかたに報道してもらえるのは、もちろん意義のあることです。でも、どうしても誰かの解釈が入ってしまいますよね。その時の言葉のニュアンスや空気感でなければ伝わらないこともたくさんありますからね。
荒木: (報道された)言葉は編集されていることも多い。だから、その一部分だけしか見ることできないんだよ。でも、(トヨタさんの取り組みは)情報をリアルタイムで全て見ることができる。
トヨタさんのさらにすごいところは、その内容がニュースルームにアーカイブとしてきちんと残されている。例えば、社長の語った言葉(発言など)は、あらかじめ原稿があって話しているものだから、テキストとして記録されているんだよね。
濱口: そうなんですね。そうしたものも公開しているんですね。
荒木: 映像のアーカイブも後から見返すことができるし、社長が発表した言葉も、きちんと「言葉」として、そして「文字」として残っている。だから私は、「なんてオープンなんだろう。いや、これこそが本来の広報の在り方だよね」と思った。
でも、そのことを勘違いして受け取る人たちもいる(この話は次回以降、改めて詳しく話そうと思っている)。例えば、トヨタさんの取り組みに対して、「とうとうトヨタがメディアを飛ばして、中抜きしようとしている」と言う人たちもいた。まるで「情報はメディアを通じて発信しなければならない」かのような固定観念にとらわれている。
でも実際は違っていて、「直接伝えること」がごく自然で当たり前のこととして、コミュニケーションを図ろうと思っているだけなんだよ。インターネットがここまで普及して、スマホのような端末も一人一人が持つ時代になったからこそ、見たい人が、聞きたい人が、いつでもどこでも見ることができるし、聞くことができる(アクセスできる)。そんな状況にある今だからこそ、私はむしろ、トヨタさんの姿勢はとても誠実だと思った。
この取り組みは、記者発表会にとどまらず、アナリスト説明会や株主向けの決算説明会まで、全てノーカットで公開されている。だから、株主やアナリストでなくても視聴できる。そして、質疑応答のやり取りまで見られるので、どう対応したのかも分かる。
全てのステークホルダーの価値は等しい
だから常に同じタイミングでオープンに配信
荒木: 「トヨタイムズ」を見ていると、トヨタの労働組合と会社側の労使協議の速報や、その中でどんな話し合いがされていたのかという詳細な内容まで伝えられている。従来であれば、そうした情報は「社員にだけ伝えればいい」とされてきた。でも、トヨタさんはそれをグローバルニュースルームと連携し、「トヨタイムズ」やニュースルームの中で、(社内外に対して)発信している。
だから、関心さえあれば、たとえ株主でなくても決算説明会の内容を知ることができるし、全く関係のない立場であっても、例えば、顧客が「労使協議ではどんなことが話し合われているんだろう」と思えば、それも知ることができる。
これは本当に画期的だと思う。ステークホルダーの垣根が、もはやなくなっている。誰に対しても、同じタイミングで、同じ情報を届けている。これは本当にすごいところ。
不祥事や事故が起きた場合でも、トヨタは普段からニュースルームのメールアラート登録者に対して、直接情報を届け、コミュニケーションを図っているよね。だから、リコールのような問題や、ダイハツで不正があったようなケースでも、記者会見の前に最初の「第一報」を必ず届けてくれる。
つまり、まず「何が起こったか」を(関係者)全員に、等しいタイミングで、なるべく早く伝える。そして、その後に記者会見を開き、報道関係者にも説明し、質問もきちんと受ける。もちろん、情報が一部の人たちに届かず漏れてしまうこともあるかもしれない。だからこそ、そうした人たちのためにも、報道機関からも発表してもらう必要がある。
「全てのステークホルダーの価値は等しい」。だから常に同じタイミングでオープンに配信していく。この姿勢が私は本当に素晴らしいと思うんだよね。
私は、トヨタ自動車とNTT本体の資本提携に関する記者発表会(2020年4月開催)をリアルタイムで見ていて、「これはすごい!・・・いや、でも、これが本来あるべき姿なんだろうな」と感じた。そうした出来事が何度か重なるうちに、「トヨタさんのニュースルームこそが、本来の広報の在り方を実現していく、重要な一つのロールモデルになり得るのではないか」と思うようになった。
広報における基本を、まさにトヨタさんが示してくれている。そう実感したのがきっかけで、私はトヨタ自動車の広報の姿勢や在り方のファンになったというわけなんだ。
私は車の免許を持っていませんし、車にも乗りません。だから、「車が好き」というより、トヨタ自動車に対して感じているのは、その「企業姿勢」に対しての共感なんだよね。私は直接的なサプライヤーでもないし、そういう意味ではステークホルダーですらないから、ただの一般人。
それでも、トヨタさんの広報の姿勢には本当にすごいものを感じている。私たちに対して、いろいろなことを教えてくれているんじゃないかと思う。
ニュースルームの可能性って、本当にすごいなと思っているんだよ。こんなに情報がオープンにできるなら、組織が変革できる。そんな重要な役割を担えるのではないか。そんなふうに感じたことが、私の中では大きな気付きだった。
放送終了時間がきてしまったので、この話は次回以降も続けていきたいね。あと3回ぐらい続くかもしれない。
濱口: 車の免許も持っていないし、車を必要としているわけでもない。全く縁もゆかりもない荒木さんのような人でさえ、企業のファンになる。それって、すごいことですよね。
荒木: そうなんだよね。私は「広報」という一つの接点を通じてトヨタ自動車に関心を持っているけれど、実際にトヨタのかたがたと直接やり取りしているわけではない。あくまでもグローバルニュースルームを通じて見える姿しか見えていない、ということは事実としてある。
それでも、私のように広報に携わる立場から見ると、(トヨタ自動車の広報には)多くのヒントが詰まっていて、模範的な取り組みがたくさんある。そういう視点で注目して見ている。
濱口: そうですね。今の荒木さんのお話を聞いていると、もし本当に「メディアを中抜きしよう」と考えれば、いくらでも(企業にとって)都合のいい情報発信ができてしまうと思うんです。でも、トヨタさんの発信の仕方を見ていると、そうではないということがよく分かります。
最初に、そうした固定観念を崩す発想をした人に、まず驚きますし、それを実行に移している企業体制も本当にすごいと思います。株主総会の様子を「そのまま公開していい」という判断一つとっても、本当にすごいことですよね。
荒木: 株主総会は、会場の都合もあって株主だけを集めていた。当然ながら、その会場に来られるのは株主だけだよね。ただ、発表される内容そのものは、隠すべきものではなく、オープンにしても構わないということ。
また、統合報告書についても、株主だけでなく、全てのステークホルダーに向けて発信していこう。財務情報だけでなく、非財務情報も含めて、全ての人に伝わるように発信していこうという方向に、情報発信の在り方そのものが大きく変わってきている。そして、その流れをくんでいる(体現している)のが、やはりトヨタさんのグローバルニュースルームだと私は感じている。
今後の放送でも、トヨタ自動車の取り組みの事例を紹介しながら、広報の在り方や姿勢を引き続き話ししていければと思います。
濱口: 楽しみです。
荒木: 5月も残すところわずかですね。6月に入ったらあっという間に、1年が半分過ぎてしまいます。
皆さん、今日もめげずに頑張って仕事をしていきましょう。いってらっしゃい。
濱口: いってらっしゃい。