【ポッドキャスト #81】社員の声を、採用ページに閉じ込めていないか

採用広報は、企業が広報に取り組む入口になり得ます。
一方、社員の声や経営者の言葉を採用ページだけに置くと、社員や顧客には届きにくくなります。
一つの記事を誰に、どこまで届けるのか。採用に閉じない発信の可能性を考えます。
音声(番組)は以下より聴取できます。
・ポッドキャスト:#81
・Spotify:#81
以下、テキスト版です。ぜひご一読ください。
◆採用記事は、採用候補者だけのものなのか
濱口
最近、「採用広報」という言葉をよく聞くようになりました。
企業にとって採用は大きな課題ですし、これまでとは違う取り組みが必要だという意識が広がったことは、とても良いと思っています。
ただ、採用広報と名乗りながら、やっていることは今までとあまり変わらない会社も多いように感じます。
荒木さんは、どう見ていますか。
荒木
採用広報という言葉自体には、意味があると思います。
広報というと、以前はプレスリリースを出し、マスメディアに取り上げてもらうことだと考えられがちでした。
採用広報は、採用という経営課題に広報を結び付けています。特に、知名度や広告予算が限られる中小・中堅企業にとって、広報に取り組む分かりやすい入口になり得ます。
◆採用専用ページは、本当に必要なのか
濱口
採用広報が広がる中で、採用専用のウェブサイトやランディングページを作る会社も増えました。
きれいに作られていて、社員の声や社長のメッセージも載っています。
でも、それを見るたびに、なぜ会社のウェブサイトと分ける必要があるのだろうと思うんです。
荒木
採用候補者が知りたい情報を一つにまとめる意味はあります。
会社の仕事内容や働く人の声が分からなければ、入社後に「思っていた会社と違った」というミスマッチも起こりやすくなります。
だから、社員の声や経営者の言葉を出すこと自体は、とても大切です。
ただ、それらは採用候補者だけに必要な情報なのか、という問いは残りますね。
濱口
そうなんです。
同じ会社で働いている社員も、ほかの部署の人がどんな思いで働いているのかを知りたいと思います。
それなのに、「採用ページ」と書かれていたら、自分には関係がないと思って見に行かないかもしれません。
◆社員の声は、社員や顧客にも届く
荒木
社員インタビューは、既存社員にとっても価値があります。
普段一緒に働いていても、その人がなぜ入社したのか、どんな失敗を経験し、どんな思いで仕事に向き合っているのかまでは分からないことがあります。
社員の声を知ることは、互いの理解を深め、会社への帰属意識を育てることにもつながります。
濱口
顧客や取引先が読んでも、意味がありますよね。
荒木
そうですね。
「この商品やサービスの裏側に、こんな社員がいるのか」と分かれば、会社への安心や信頼が生まれることがあります。
社員の家族にとっても、自分の家族がどんな人たちと働いているのかを知る機会になります。
せっかく複数のステークホルダーに届く内容なのに、「採用」と名付けたことで、読む人を狭めてしまうのはもったいないと思います。
◆一つの記事は、複数の相手に届く
荒木
任天堂には、さまざまな職種の社員が仕事について語る「仕事を読み解くキーワード」というコンテンツがあります。
もともとは採用に関わる情報ですが、ゲームの利用者が読んでも、開発者の考え方や制作の背景を知ることができます。
自分が好きなゲームを、どんな人が、どんな思いで作っているのか。顧客にとっても魅力的な内容なんです。
濱口
逆もありますよね。
顧客事例や導入事例を、採用候補者が読むこともあります。
荒木
あります。
顧客が会社をどう評価しているのか。どのような課題を任されているのか。それを知れば、採用候補者は仕事の価値や会社の実力を理解できます。
既存顧客が読めば、「自社だけでなく、ほかの会社にも評価されている」と安心するかもしれません。
一つの記事が、一つの相手だけに届くとは限らないんです。
◆目的は定めても、届け先を閉じない
濱口
採用広報という言葉は良いのに、採用のためだけに内容を閉じてしまうと、かえって空回りすることがあるのかもしれませんね。
荒木
誰に届けたいのかを明確にすることは大切です。
ただ、最初に想定した人以外にも、その内容がどのような意味を持つのかを考えた方がいい。
社員の声や経営者のメッセージは、採用候補者だけのものではありません。社員、顧客、取引先、家族など、多くの人に会社の姿勢を伝えます。
採用ページを作って一度載せたら終わりではなく、会社の大切な発信資産として、広く、継続的に届けていく。
採用広報を本当に生かすには、その視点が必要なのだと思います。

